開幕に向けて、各クラブが活動を開始したJリーグ。監督交代や新戦力など、各チームに動きがある中、サッカージャーナリスト後…
開幕に向けて、各クラブが活動を開始したJリーグ。監督交代や新戦力など、各チームに動きがある中、サッカージャーナリスト後藤健生が注目するのは、J2のRB大宮アルディージャだ。日本のクラブ史上初となる「試み」がなされた大宮は今後、どのような「進化」を遂げるのか? 日本サッカー界、ひいては日本スポーツ界の「黒船」となりうる話題チームの「動向」!
■「世界最高のリーグ」としての地位を確立
アメリカでは、プロ・スポーツというのはもともと投資の対象であり、そうしたファンドがヨーロッパのサッカー・クラブに目をつけはじめたのだ。
その最たるものが、1992年にプレミアリーグを発足させたイングランドだった。
1980年代まで、スタジアムが老朽化し、フーリガンが暴れまわっていたイングランド。サッカー場は危険で汚い、とても家族連れが訪れたいと思えないような世界だった。だが、スタジアムの多くが改築され、テレビマネーの導入でクラブ経営は改善されていった。そこに、多額の資金が流入することによって、プレミアリーグはすぐに世界最高のリーグとしての地位を確立した。
あるいは、やはりスタジアムの近代化をすませたドイツ・ブンデスリーガも、観客動員数を急増させる。
一方、こうした流れに乗り遅れたのがイタリア・セリエAで、かつてはヨーロッパのカップ戦でタイトルを独占することもあったイタリアのクラブの競技力は急速に落ちていった。
そして、ヨーロッパのクラブとJリーグ・クラブの経営規模は、大きく離れてしまったのだ。
こうして、Jリーグ発足後の30年間でヨーロッパとの間の競技力の差は縮まったものの、財政力の格差は逆に大きく開いてしまったのだ。
■その「資金」をどこから調達するのか?
Jリーグ・クラブが「5大リーグ」並みの財政力を持てれば、ヨーロッパや南米の代表クラスの選手がJリーグに加わったり、若手の有望選手が経験を積むためにJリーグに参戦するといったことが起きるだろう。そうすれば、日本人選手は必ずしも海外移籍をせずとも、Jリーグで世界レベルのプレーを経験できるようになる。そうなれば、Jリーグの観客動員数はさらに拡大し、海外からのテレビマネーが流入するかもしれない。
だが、その資金をどこから調達するのか?
日本の経済には1990年代までのような勢いはない。製鉄などの重工業は中国企業に押され、これまで世界をリードしてきた自動車産業も安泰ではない。
これからも人口減少と急速な高齢化が予想され、日本の経済はさらに縮小していってしまうかもしれない。そうなったら、日本国内の資金だけでは、とてもヨーロッパのトップクラブに伍していくことは難しいのだ。
これはサッカー界だけの話ではない。これからの日本は外国資本や外国人労働者の導入を避けて通れないはずだ。
その意味で、RB大宮アルディージャが成功するか否かが大いに注目されるのだ。
■基本的には歓迎すべき「黒船の襲来」
大宮が成功し、レッドブル・グループが「日本のクラブへの投資は利益を生む」ということを証明してくれれば、中東マネーやアメリカの投資ファンドなどもJリーグに価値を見出だしてくれるかもしれない。サッカーだけでない。プロ野球(NPB)やバスケットボール(Bリーグ)など他の競技に目が向けられるかもしれない(NPBもBリーグも、Jリーグと違って規約で外資を規制しているようだが)。
経済面で「失われた30年」といわれるが、この30年間に日本のスポーツは急速な発展を遂げた。サッカーでは、かつては「夢」だったワールドカップ出場は当たり前となり、近い将来には日本代表が上位進出する姿が見られることだろう。ヨーロッパのトップクラブで活躍する日本人選手もさらに増えていくはずだ。
野球界でも、30年前といえば野茂英雄が大リーグ(MLB)に挑戦した頃だ。「バッターは無理だ」とも言われたが、その後、イチローが大活躍し、そして今では、大谷翔平という選手が世界最高のベースボール・プレーヤーとなって、誰もが想像できなかったような活躍をしている。バスケットボールでも、次々とNBAでプレーする選手が現われている。
今後は、日本国内のクラブが財政力を高めて、クラブやリーグの価値を高めていくべきなのだ。
もちろん、外資に牛耳られてはいけないから、Jリーグや日本サッカー協会によるコントロールは必要だが、レッドブル・グループという“黒船”の襲来は基本的には歓迎すべきことなのではないだろうか?