2016年以来のJ1タイトル奪還に向け、1月14日から宮崎キャンプに入っている鹿島アントラーズ。21日には今季3度目の…

 2016年以来のJ1タイトル奪還に向け、1月14日から宮崎キャンプに入っている鹿島アントラーズ。21日には今季3度目の実戦となるツエーゲン金沢との練習試合(45分×2本、30分×1本)にのぞんだ。

 2トップに鈴木優磨やレオ・セアラ、左右のワイドに田川享介、舩橋佑、ボランチに柴崎岳三竿健斗といった形で主力メンバーが数多く出場した1本目は予想外の苦戦。開始早々の7分に田川が右もも裏に違和感を訴えて早々に離脱し、さらに17分にはレオ・セアラにもアクシデントが発生。ベンチに下がる苦境の中、鬼木達新監督が求める連動した攻撃のビルドアップ、高い位置からのプレスがなかなか具現化できず、0-0で引き分けるのが精いっぱいだった。
「相手にやられないように後ろで構えるのか、やらせない意識をもって前から行くのか。もっと強気の姿勢が重要だ。ボールを大事にするところもどんどんやってみよう」
 指揮官に檄を飛ばされた2本目は内容が大きく改善。左ワイドに入った師岡柊生が開始早々に先制点をゲット。鈴木優磨と2トップを組んだ17歳の徳田誉も2ゴールをマーク。ようやく勢いが出てきた印象だった。
 若手中心で挑んだ3本目はスコアレスドローという結果で、終わってみれば3-0。「トライしている中で成功例が多く出てきている」と鬼木監督も前向きにコメントしていた。鈴木優磨とレオ・セアラの連携確立などやりたかったことができなかった部分はあったものの、ケガ人の状態などを見ながら今後のアプローチを考えていくことになるだろう。

荒木遼太郎の起用法は

 こうした中、1つ見えたのが、FC東京からレンタルバックした荒木遼太郎の起用法だ。「鈴木優磨、レオ・セアラ、荒木の”王様タイプ”3人をどう共存させるのかが難しい」という指摘が複数の関係者からあったように、鬼木監督も最適解を探っているに違いない。
 この日、荒木は2・3本目に出場。2本目は右サイドからスタートし、右サイドバック(SB)に入った安西幸輝と良好なタテ関係を形成。時には中に絞りながら安西の攻め上がりを引き出し、自らもゴール前へ飛び出していく鋭さを前面に押し出した。
 鈴木優磨ら主力が下がった17分以降はトップ下へ移動。最前線の徳田といい距離感を保ちつつ、師岡、溝口修平という左右のワイドとも連動しながらチャンスを演出した。
 3本目は再び右サイドへ移動。右SBに入った小池龍太とのタテ関係で金沢を何度か脅かした。左右のCKも蹴っており、リスタートという武器も改めてアピールしたと言っていい。結果的に自身の得点こそなかったものの、「トップ下でしか輝けない」というかつての印象は払拭できたのではないだろうか。

家長昭博と重なる動き方

 彼の一挙手一投足を見ていると、川崎フロンターレの家長昭博を重なるところが少なからずあった。鬼木体制の家長は右サイドからスタートしつつも、トップ下やゴール前、左サイドへと臨機応変にポジションを変えながらボールを触り、中盤と絡みながら厚みのある攻撃を組み立てていた。さらにフィニッシュの部分でも存在感を発揮していた。
 指揮官に「荒木は家長選手のようにつなぎに参加して、2トップとの関係性も深めていくイメージなのか」と尋ねると「もうそのまんまでいいと思いますよ」と笑顔で回答。「ボールに多く触ることが重要ですね。(17日のロアッソ)熊本戦の時は距離感が少し遠かったけど、徐々にこちらの求めていることをやれるようになってきている。上手な選手がいっぱいボールに触るに越したことはないですしね。最終的にはゴールに絡むことが重要なので、立ち位置も前回よりよくなっているし、非常にいいプレーも増えてきていると思います」と荒木の動きを前向きに評価していた。
 今後、レオ・セアラの状態にもよるが、近いうちには鈴木優磨を含めた2トップと右サイドの荒木をともにプレーさせ、攻撃の連動性向上、守備強度のアップを図っていくことになるのだろう。それが1月25日のファジアーノ岡山戦なのか、2月1日の水戸ホーリーホック戦なのか、もしくはそれ以降になるのかは分からないが、多くの人々が3人の共存を早く見たいと願っているに違いない。
 昨季21点のレオ・セアラ、15点の鈴木優磨、7点の荒木が最強のコンビネーションを確立し、持てる力の全てを発揮できるようになれば、常勝軍団復活に大きく近づく。その日が待ち遠しい限りだ。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

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