2月14日のガンバ大阪対セレッソ大阪の「大阪ダービー」で幕を開ける2025年Jリーグ。今季J1に目を向けると、全20チ…

 2月14日のガンバ大阪セレッソ大阪の「大阪ダービー」で幕を開ける2025年Jリーグ。今季J1に目を向けると、全20チーム中、8チームで監督交代が行われている。2023年は2チーム、2024年は3チームだったのだったから、今回の変更がどれだけ大がかりなものが分かるだろう。それだけ今季は読めない部分が多いのだ。

 改めて、新指揮官の顔ぶれを見ると、鹿島アントラーズ鬼木達監督、柏レイソルリカルド・ロドリゲス監督、FC東京の松橋力蔵監督、川崎フロンターレ長谷部茂利監督、横浜F・マリノスのスティーブ・ホーランド監督、アルビレックス新潟の樹森大介監督、セレッソ大阪のアーサー・パパス監督、アビスパ福岡金明輝監督の8人。Jリーグ未経験なのはマリノスのホーランド監督だけで、それ以外は他チームで采配を振るったり指導経験のある人物ばかりだ。
 やはり「Jリーグのことをよく理解している」というのは、各クラブにとって重要な選考ポイント。ゆえに、スライドが数多く起きるのだ。

■鹿島アントラーズがで期待の選手は

 このうち、前向きな印象があるのは、鹿島、柏、福岡だろう。鹿島の鬼木監督はご存じの通り、川崎時代の8年間で国内7冠を獲得した名将だ。もちろん川崎時代の中村憲剛(川崎FRO)、大島僚太守田英正スポルティング・リスボン)、田中碧(リーズ)のような足元の技術やパスの出し入れに長けた選手が今の鹿島には少ないため、指揮官が志向するサッカーを具現化するには多少の時間はかかるだろう。
 それでも、キャプテン・柴崎岳は鬼木サッカーの体現者としてチーム全体を統率していくだろう。樋口雄太三竿健斗はある程度、ボールをつなぐことができるし、新戦力の小池龍太やキム・テヒョンは要求をこなせるだけのスタンダードを備えている。
 加えて言うと、鈴木優磨、レオ・セアラ、荒木遼太郎という得点源になり得るFWが複数いる。長期離脱中のチャヴリッチが戻ってくればより前線の厚みは増してくるだろうし、そこに推進力のある師岡柊生、松村優太らを絡めていけば、川崎とは微妙な違いはあるものの、まずまずいいハーモニーのチームができそうだ。2016年以来のJ1制覇が叶うかどうかは未知数ではあるが、7冠監督が優勝のできるチームを作り上げるのは間違いないと見ていいのではないか。

■教え子とともに進める柏のチーム作り

 2023・24年ともに17位と最後の最後まで残留争いに巻き込まれた柏は、2021・22年に浦和レッズを指揮し、6位・9位と1ケタ順位をキープしたロドリゲス監督を招聘。リカルドサッカーのベースをよく知る徳島ヴォルティス時代の教え子・渡井理己、浦和時代の教え子・小泉佳穂らを補強。彼らが戦術浸透の助けになってくれるという期待は大きい。
 実際、指揮官は浦和時代も2022年に岩尾憲(徳島)と馬渡和彰(松本山雅)を手元に呼び、自身のサッカーの体現者として積極起用した。そうすればチーム作りのスピードアップできることを知っていたからだろう。それが必ずしも優勝という結果にはつながらなかったが、試合内容は着実に前進していった。
 今季の柏は上記2人のみならず、日本代表招集経験のある原川力や橋岡大暉、小島亨介、昨季鹿島で実績を積み上げた仲間隼斗ら能力ある選手を数多く集めており、それも前向きな効果をもたらしそうだ。少なくとも過去2年間のような残留争いを繰り返す事態にはならないはず。「今季はタイトルを獲る」と指揮官も17日の新体制発表会で宣言していたが、うまくいけば優勝争いも期待できそうだ。

■福岡は戦力も十分

 福岡に関しては、クラブ初の2023年YBCルヴァンカップ制覇へと導いた長谷部監督が離れたことは一抹の不安もあるだろう。しかしながら、金明輝監督というのはかなりの手腕がある指揮官だ。
 サガン鳥栖を率いた2020年と21年は13位と7位。特に21年は代表経験のある高橋秀人金崎夢生(ヴェルスパ大分)、原輝綺(名古屋)、原川力らが一気に移籍。ユース上がりの若手を数多く引き上げた陣容で戦い、前半戦は黄金期の川崎を追走するほどのサプライズを見せたのだ。
 その後、町田ゼルビアへ赴いてからも黒田剛監督の腹心としてチームを支え、J1昇格1年目でタイトルまであと一歩というところまで押し上げた。この躍進も彼が背後からうまく戦術浸透を図ったことが大きかったと言われている。
 戦力を見ても、名古新太郎見木友哉秋野央樹上島拓巳といった実績ある面々が加入。むしろベースアップした印象もある。金監督の鳥栖時代のパワハラ問題がいまだに尾を引いているようだが、指導者としての能力は確か。福岡は最終的に「いい判断をした」と言われる展開になるのではないか。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

いま一番読まれている記事を読む