過去の経験から『鉄は熱いうちに打て』を実行急転直下で決まったカーメロ・アンソニーのトレード劇。まだニックスとサンダーから正式発表はないが、ともかくニックスはトレーニングキャンプ開始前に若手主体の新チームに移行することができ、サンダーは昨シー…
過去の経験から『鉄は熱いうちに打て』を実行
急転直下で決まったカーメロ・アンソニーのトレード劇。まだニックスとサンダーから正式発表はないが、ともかくニックスはトレーニングキャンプ開始前に若手主体の新チームに移行することができ、サンダーは昨シーズンのMVPラッセル・ウェストブルック、ポール・ジョージに加えてアンソニーというオールスタープレーヤーを加えることに成功した。
アンソニーは、ロケッツとのトレードが成立する場合に限り、ニックスとの契約に含まれていたトレード拒否条項を破棄すると言われていたのだが、サンダーへの移籍を容認した背景には、ウェストブルックとジョージの影響があった。
『ESPN』記者のエイドリアン・ウォジナロウスキーによれば、アンソニーにサンダー移籍を決断させたのはウェストブルックとジョージの2人だったという。アンソニーがサンダーへの移籍を容認した後、ニックスはエネス・カンター、ダグ・マクダーモット、2018年ドラフト指名権というサンダーの提案を了承し、ついに球団間合意に至った。
ジョージは、合意発表が報道された後、ウェストブルックとアンソニーの2ショット画像をInstagramに投稿し、「俺の新しい仲間さ」とメッセージ欄に書き込んで歓迎の意を示している。ジョージとアンソニーはポジションが重なるが、NBA優勝という目標を達成するための戦力アップになるとジョージはトレードの成立を歓迎した。
気になるのは3人の起用法だが、ポイントガードにウェストブルック、スモールフォワードにジョージ、パワーフォワードにアンソニーという並びが考えられる。シューティングガードには昨シーズンのオールディフェンシブ・セカンドチームに選出されたアンドレ・ロバーソン、先発ビッグマンにはスティーブン・アダムズが起用されるだろう。
最も懸念されるのは、3選手とも近い将来フリーエージェントになるということ。ジョージとウェストブルックは今シーズン終了後、アンソニーは2019年にフリーエージェント権を取得する。ウェストブルックはトレーニングキャンプ開始後に2億ドル(約225億円)超のスーパーマックス契約でサンダーとの契約を延長するとも言われている。このままでは来シーズンのチーム総年俸額は1億5700万ドル(約176億円)を上回り、サンダーは3000万ドル(約34億円)近くのラグジュアリータックス(贅沢税)をリーグに支払うことになるが、それだけサンダーが本気で優勝を目指していることの表れと考えていい。
MVPを受賞した『ミスター・トリプル・ダブル』ことウェストブルック、オールスターのジョージは今がキャリア全盛期で、アンソニーはキャリア終盤の時期に差し掛かっているが、実力はまだトップクラスだ。
2012年のNBAファイナルでヒートに敗退した後、サンダーはジェームズ・ハーデンとの延長契約を目指したが、当時ハーデンがチームからの提示に納得せず、泣く泣くロケッツにトレードするしかなかった。それから健全経営を続け、ケビン・デュラントとウェストブルックのツインエース体制で再び頂点を目指したものの、常々『最後のピース』に欠けたことで西カンファレンスを突破できず、2016年夏にはデュラントにも出て行かれた。もしデュラントがフリーエージェントになる前に本気で優勝を目指せるだけの大型補強を実行していたら、生え抜きのエースは退団を決意しなかったかもしれない。
ジョージをペイサーズとのトレードで獲得できたことは幸運だった。だが、今シーズン終了後、ジョージからプレーオフ1回戦、あるいはカンファレンス準決勝レベルと思われ、優勝できないチームと判断されれば、デュラントのケースと同様に退団されてしまう。過去の経験から『鉄は熱いうちに打て』を実感したサンダーは、今オフにリスクを負う大勝負に打って出たのだ。
あとは、新チームの顔になる3人のスーパースターが互いの長所を生かし、短所を補い合えるか次第で、王者ウォリアーズと対等に戦えるかが決まる。
アンソニーの獲得は、サンダーが本気で優勝を目指すという意思表示の表れとも言える。