箱根駅伝総括・シード権争い(優勝争い編:優勝争いは「山」だけの差じゃなかった 青学大が4区までに作った連覇への流れ>>)【4校による熾烈なデッドヒート】 独走した青山学院大が大会新で連覇を達成した今年の箱根駅伝。10位以内に与えられる「シー…
箱根駅伝総括・シード権争い
(優勝争い編:優勝争いは「山」だけの差じゃなかった 青学大が4区までに作った連覇への流れ>>)
【4校による熾烈なデッドヒート】
独走した青山学院大が大会新で連覇を達成した今年の箱根駅伝。10位以内に与えられる「シード権」をめぐる争いは例年以上に熾烈だった。
最終10区までシード権を争った4校
photo by アフロ
往路を終えた時点で、8位から14位までが2分01秒差。立教大、東洋大、日本体育大、東京国際大、中央学院大、順天堂大、帝京大の7校が復路でシード権争いを繰り広げた。
8区で中央学大、9区で立大が脱落し、復路の鶴見中継所(9区→10区)のタスキリレーは8位が東洋大、9位が帝京大、10位が順大。この3校の差はわずか11秒だった。さらに、11位の東京国際大がシード権まで21秒差、12位の日体大が26秒差につけていた。
20年連続シードを目指す東洋大の酒井俊幸監督は、アンカー薄根大河(2年)に「最初の1㎞を速く入るように」という指示を出す。薄根は2分50秒を切るペースで突っ込むも、後続チームが猛追してきた。
2.4㎞付近で東京国際大・大村良紀(3年)が順大に追いつくと、5.6㎞付近で東洋大と帝京大にも並び、4チームが集団となる。このうち1校だけがシード権を逃す"サバイバルレース"になった。
4校の集団は崩れることなく進んでいく。集団に動きがあったのは22㎞付近。東京国際大・大村がスパートすると、東洋大・薄根と帝京大・小林咲冴(1年)が競り合い、順大・古川達也(2年)が少し遅れる。
大手町のゴールは8位が東京国際大、1秒遅れの9位に東洋大、さらに2秒遅れで10位が帝京大。順大は217.1㎞を走って、シード権に7秒届かなかった。
東京国際大は「最強留学生」の呼び声が高かったリチャード・エティーリ(2年)が2区で区間新記録。14位から2位に急上昇すると、その後もシード権争いに食らいつく。8区終了時はシード圏内まで53秒差の12位も、9区の菅野裕二郎(3年)が区間3位、10区大村が区間6位と猛追して、3年ぶりのシード権を獲得した。
【11位の順大は「未来につながる駅伝になった」】
9位を確保した東洋大だが、今回は窮地に立たされていた。12月末、2区に登録していた梅崎蓮(4年)に突発性のアキレス腱痛が発生。酒井監督は「途中でリタイアもあり得るかもしれない」と、前回2区で8人抜きを演じた主将を外す決断を下したのだ。
急遽、1~3区の選手を入れ替える苦しいオーダーになり、2区終了時で19位と苦しんだ。それでも3区の迎暖人(1年)が区間8位、4区の岸本遼太郎(3年)が区間3位と好走して9位まで順位を押し上げる。5区の宮崎優(1年)も踏ん張り、9位を死守して往路を折り返した。
復路は8区の網本佳悟(3年)が区間2位と快走し、9区の吉田周(4年)で8位に浮上した。最後は、「ラストが苦手」(酒井監督)なアンカー薄根の渾身のスパートが炸裂。総合9位でゴールに駆け込んだ。
前回9位の帝京大は復路を14位でスタートするも、6区・廣田陸(2年)が区間4位で勢いをつける。9区・小林大晟(4年)も区間4位と好走してシード圏内に入った。最後はルーキー小林が、総合10位でフィニッシュ。中野孝行監督が、「4人は最高のレースをしましたよ」と絶賛するほどの"アンカー決戦"で競り勝った。
一方で順大は、歴代4位タイとなる僅差でシード権を逃した。昨年10月の予選会ではわずか1秒差で出場権を死守したが、本戦では7秒差に涙した。ただ、6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会で17位と惨敗したチームが、よくここまで上がってきたと言っていいだろう。
往路13位から、7区の吉岡大翔(2年)が区間2位タイの力走で3人抜きで8位まで順位を押し上げた。アンカーの古川は、「スピード負け。覚悟を持っていけなかった」と最後は力尽きたが、長門俊介駅伝監督は「未来につながる駅伝になったと思いますよ。1秒で救われたこと、7秒の悔しさを感じながら励みたい」と前を向いた。今回は2区に玉目陸、5区に川原琉人と主要区間にルーキーを抜擢。復路は2年生4人というオーダーで復路6位という結果を残した。
また、史上最長ブランクとなる63年ぶりシード権獲得が期待されていた立大は、総合13位に終わった。今季は箱根予選会をトップ通過して、初出場した全日本大学駅伝で7位。往路は2区の馬場賢人(3年)が区間7位、5区の山本羅生(4年)が区間5位と活躍して、8位で折り返した。
しかし復路は、「他大学の選手のすごい力を見せつけられましたね」と髙林祐介駅伝監督。7区と10区が区間17位と大苦戦するなど、ボーダーラインに3分23秒届かなかった。
【「シード権のラインが非常に高くなっている」】
決戦を終えた後、"20年連続シード"を確保した東洋大の酒井俊幸監督はこんなことを話していた。
「シード権のラインが非常に高くなっています。誰かが区間賞の走りをしないと、順位を上げることができません。シードを確保する大変さを感じましたね。どのチームも成長しているので(自分たちも)進化しなければいけないと感じるシード権争いになりました」
実際、どれぐらいハイレベルだったのか。11位の順大の10時間55分05秒というタイムは、過去3大会でいえば5位相当になる。高速化が進む箱根駅伝。優勝争いだけでなく、シード権争いを制するためにも、指揮官と選手たちは"さらに上"を見つめながら戦っていく覚悟が必要になりそうだ。