【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】◆フレッシュマンサイアーランキングも紹介 2024年の米国における競馬の回顧、今週は種牡馬部門をお届けしたい。 24年の全米リーディングサイアーは、産駒が2580万2676ドルを収得した…

【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】

◆フレッシュマンサイアーランキングも紹介

 2024年の米国における競馬の回顧、今週は種牡馬部門をお届けしたい。

 24年の全米リーディングサイアーは、産駒が2580万2676ドルを収得したイントゥミスチーフだった(ブラッドホースによる集計、数字は北米における収得賞金)。

 同馬の首位は、これで6年連続となり、1963年から69年までその地位を占めた20世紀における伝説の種牡馬ボールドルーラーの記録まで、あと1年と迫っている(全米最長記録は、19世紀後半にレキシントンが樹立した14年連続)。

 イントゥミスチーフは、出走頭数の427頭、勝ち馬頭数の227頭、ステークス勝ち馬数の35頭、重賞勝ち馬数の16頭と、いずれの部門でも首位に立っており、G1勝ち馬数の4頭も首位タイと、ほぼ完全制圧と言って過言ではない圧倒的な勝利だった。

 2024年は北米以外でも、産駒のローレルリバーがG1・ドバイワールドC(d2000m)に優勝。こうした国外の賞金も加算した収得賞金は3455万3885ドルに達し、自身が持っていた従来の記録を大幅に更新する、種牡馬による1シーズンの最多賞金収得記録を樹立している。

 イントゥミスチーフは、今年の3歳世代にも、G1・BCジュベナイル(d8.5F)勝ち馬シティズンブル(牡3)、5.1/2馬身差で制したG2・サンヴィセンテS(d7F)を含めてここまで2戦2勝のバーンズ(牡3)といった手駒がおり、7年連続リーディングへ向けて盤石の態勢を整えている。

 第2位には、収得賞金2158万8521ドルでガンランナーが入った。18年に種牡馬入りし、21年に初年度産駒がデビューした同馬。初年度産駒が3歳だった22年に、早くもリーディング3位に大躍進し、次のリーディングサイアー候補と認知されることになった。23年は3位と1つ順位を落としたものの、24年は自身最高位となる2位まで上がってきた。大きな貢献を果たしたのが、G1・BCクラシック(d10F)、G1・ブルーグラスS(d9F)という2つのG1を含む3重賞を制し、591万1250ドルの賞金を獲得したシエラレオーネだ。ただし、同馬1頭に依存した2位躍進ではなく、出走馬1頭あたりの収得賞金9万2259ドルは、イントゥミスチーフの6万0428ドルを大きく上回っており、「次のリーディングサイアー候補」との評価は揺るぎないものとなっている。

 ガンランナーと同じく21年に初年度産駒がデビューし、23年が7位、24年が8位と2年連続トップ10入りしたプラクティカルジョーク、20年に初年度産駒がデビューし、22年が7位、23年が8位、24年が10位と3年連続でトップ10入りしたノットディスタイムらが、米国生産界の新たな屋台骨となる種牡馬たちだろう。

 24年の全米2歳リーディングサイアーも、産駒が328万1844ドルを収得したイントゥミスチーフだった。総合との2部門制覇は、19年、20年、22年に次ぐ、4度目のことだった。

 注目のフレッシュマンサイアーランキングは、初年度産駒が270万6019ドルを収得したマッキンジーが首位に立った。実はこの部門は、2位のティズザロウの収得賞金が269万2749ドルで、その差はわずか1万3270ドルという大接戦だった。さらに、3位ヴェコマの収得賞金も264万6906ドルと、2位との差は4万5843ドルで、つまりは三つ巴の争いを僅差で制したのが、マッケンジーだったわけだ。

 G1・BCジュベナイル、G1・ケンタッキーダービー(d10F)、G1・トラヴァーズS(d10F)を制したストリートセンスの7世代目の産駒として2015年に生まれたのがマッキンジーだ。母ランウェイモデルは、G2・アルシビアデスS(d8.5F)、G2・ゴールデンロッドS(d8.5F)という2重賞を制した他、G1・アッシュランドS(d8.5F)2着、G1・BCジュベナイルフィリーズ(d8.5f)3着などの成績を残した活躍馬だったが、マッキンジーは1歳秋に上場されたキーンランド9月1歳市場にて、17万ドル(当時のレートで約1751万円)というお値打ち価格で購入されている。

 ボブ・バファート厩舎からデビューしたマッキンジーは、2歳時にG1・キャッシュコールフューチュリティ(d8.5F)、3歳時にG1・ペンシルベニアダービー(d9F)とG1・マリブS(d7F)、4歳時にG1・ホイットニーS(d9F)と、3年連続で4つのG1を制覇。21年にゲインズウェイファームで種牡馬入りし、初年度の種付け料は3万ドルだった。

 24年に競走馬年齢に達したマッキンジー産駒は、60頭がデビュー。このうち20頭が勝ちあがり、その中から、G1・ホープフルS(d7F)、G1・シャンパンS(d8F)を制したチャンサーマクパトリック、G1・フリゼットS(d8F)を制したスコティッシュラッシーが出現。さらに、G1・アルシビアデスS2着馬クイックキック、G1・デルマーフューチュリティ(d7F)2着馬マッキンジーストリートらも登場し、「マッキンジー産駒は走る」との定評を得ることになった。

 さらに年が明けると、サイクロンステートがケンタッキーダービーポイント指定競走のジェロームS(d8F)に優勝。3歳クラシック戦線に複数の手駒を送りこむマッケンジーの、25年の種付け料は、7万5千ドルに急騰している。

(文=合田直弘)