NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25ディビジョン2 第3節2025年1月11日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)NECグリーンロケッツ東葛 56-19 日野レッドドルフ…
NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第3節
2025年1月11日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 56-19 日野レッドドルフィンズ
10,646人の拍手が物語る大活躍。即興の技に表れたリース・パッチェルの魅力
NECグリーンロケッツ東葛のリース・パッチェル選手。キッカーも務めており、DIVISION 2の得点ランキングではこの3節終了時点で2位タイにつけている
今季新加入のリース・パッチェルは、ウェールズ代表22キャップを誇り、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップにも出場した実力者である。1月11日に柏の葉公園総合競技場で行われたNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)との試合では、パッチェルがワールドクラスの実力をいかんなく発揮した。
開始2分の、マリティノ・ネマニの先制トライに象徴されるとおり、GR東葛の強みは強靭なフィジカルを備えるランナーのアタックにある。そして、そのアタックにパッチェルがパスとキックで変化を加えることで、破壊力が何倍にも増幅される。
圧巻だったのは、後半22分のプレーだ。ニック・フィップスからパスを受けたパッチェルは、日野RDのディフェンスラインの背後に広がるスペースを見つけると、繊細かつ精度の高いキックパスで、そのスペースにボールを落とした。バウンドしたボールを拾ったネマニはそのまま突進。ネマニのこの試合2トライ目で、GR東葛は点差を広げた。
さらに驚愕だったのが、あの一連のプレーは練習で準備してきたものではなく、即興だったというのだ。それをパッチェルが解説する。
「今週の初めにチーム全員で初詣に行ったときに、タケシさん(松尾健コーチ)との会話の中で出てきた案だったんです。練習はまったくやっていなかったんですけど、やってみた……というプレーでした。ただ、チームの全員が敵陣の深いエリアでプレーする重要性を理解していたので、チャンスがあることは分かっていました」
スカーレッツやウェールズ代表のころからパッチェルを知るウェイン・ピヴァック ヘッドコーチは、彼を「賢く、経験を持つ選手」と評する。後半22分のプレーは即興だったとはいえ、高い技術と優れた戦術眼に加え、局面を冷静に見極めるだけの経験値と状況判断の良さがなければなし得ないプレーであり、まさにパッチェルの魅力が凝縮されたシーンだった。
試合は56対19でGR東葛が勝利を収めた。この試合には10,646人の観客が詰めかけたが、後半34分にパッチェルが交代で退く際に送られた大観客から拍手が、彼の活躍を物語っていた。
(鈴木潤)
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(右)、ニック・フィップス キャプテン
NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「1万人(公式記録は10,646人)の観衆が入った試合に勝ってうれしく思います。しかしパフォーマンス的には満足ではなく、5回、6回とセットピースのチャンスを生かせなかったところは課題があったと思います。ただ、ボーナスポイントを獲得して勝利ができましたし、課題があることは今後に向けて良いことなので、来週の豊田自動織機シャトルズ愛知戦に向けて良い準備をして、次節も良い試合をしたいと思います。
前半はアタックの形が良くなかったのですが、ハーフタイムに修正したことを後半に遂行できたのは満足しています。日野レッドドルフィンズはスクラムが強く、そこにもフォーカスしなければいけなかったのですが、われわれはそこに対しても遂行できたので、そこで相手のペナルティを誘発できたと思います」
──リース・パッチェル選手がパスやキックで多彩なアタックを見せていました。パッチェル選手はチームにどのようなプラスアルファをもたらしてくれましたか?
「ゲームマネジメントがとても大事なのですが、パッチ(パッチェルの愛称)は経験を持った選手です。ニック(フィップス)とパッチのコンビネーションは、今季を戦う上で非常に重要になると思います。後半は二人のコンビネーションでゲームをコントロールでき、それが勝利につながりました。パッチは相手にプレッシャーを掛け続け、後半にはパッチのチップキックが(マリティノ)ネマニのトライにつながりました。彼は賢く、経験を持つ選手です。パッチとニックは今季初めて(ともに)プレーをしていますが、世界を知る二人のコンビネーションを使うことで、チームの良いプレーにつながると思います」
NECグリーンロケッツ東葛
ニック・フィップス キャプテン
「今季初めてのホストゲームだったので、多くのファンが来てくれましたし、良いパフォーマンスをしなければいけないと思っていました。ウェイン(ピヴァック ヘッドコーチ)は毎週厳しくフィードバックしてくれるので、ここから成長していきたいと思います。試合に勝ちはしましたが、もちろん課題もたくさんありました。ここからは強いチームとの対戦が続きますから、われわれもここから成長しなければいけません。ただ、フォワード陣のパフォーマンスは非常に良かったと思います」
日野レッドドルフィンズ
日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、髙野恭二バイスキャプテン
日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は1万人を超える観客が入った素晴らしい環境の中で試合ができたことはうれしく思います。準備していただいた皆さまに感謝申し上げます。
試合内容に関しては、今日はNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんが素晴らしいパフォーマンスだったと思うので、勝利したことにおめでとうございますと言いたいです。われわれは規律の部分で少し崩れる場面があり、次の試合は3連戦目にあたるので準備する時間が少ないですけど、われわれには再生する力があると思っています。しっかり準備をして、今季の初勝利を得られるように全員でやっていきたいと思います」
──次節に向けての改善ポイントはどの部分になりますか?
「みなさんご承知のとおり、GR東葛には強いランナーがたくさんいて、その選手たちを勢いに乗せる場面を多く作ったことは、われわれは改善しなければいけないと思います。われわれが80分をとおしてプレッシャーを掛けて、われわれの時間になるシチュエーションを多く作っていくことで、われわれのエキサイトなラグビーが遂行できると思うので、そのあたりは準備の時間が少ないですが、何が悪かったのかをしっかり明確にして、みんなの力が最大限発揮できるようにやっていきたいと思います」
日野レッドドルフィンズ
髙野恭二バイスキャプテン
「今日のGR東葛戦に向けて、今週は全員でGR東葛さんに勝つことをターゲットにして試合に臨みました。しかし自分たちはペナルティを多く重ねてしまい、準備してきたラグビーができずに結果につながってしまったと思います。また、今日の1万人を超える観客の方々が訪れた中でのビジターでの試合ということで、その方々のプレッシャーに少し負けてしまった部分はあると思います。来週は3連戦で九州電力キューデンヴォルテクスさんとの試合になりますので、もう一度しっかりとチームで土台を固めて、準備をして勝利できるようにしていきたいと思います」
──何度か流れを引き寄せるチャンスがありましたが、ペナルティが続いてそのチャンスを逃してしまったようにも感じました。ペナルティが増えてしまった原因をどのように捉えていますか?
「(GR東葛の)力強く、大きいフォワードのキャリーに対して自分たちも太刀打ちしていたんですけど、ブレイクダウンのところで受けに回ってしまい、そこでラインオフサイドが多くなってしまいました。そこでペナルティを重ねてしまったことが敗因だと思います」