勝みなみが米女子ツアー3年目を迎える。国内ツアーで「15歳293日」の最年少優勝(当時)を飾った2014年「KKT杯バンテリンレディス」から通算8勝を挙げながら、米ツアーでは初優勝が遠い。そんな勝の現状と思いを2回に分けてお伝えするインタ…

3年目の飛躍を期す勝みなみ

勝みなみが米女子ツアー3年目を迎える。国内ツアーで「15歳293日」の最年少優勝(当時)を飾った2014年「KKT杯バンテリンレディス」から通算8勝を挙げながら、米ツアーでは初優勝が遠い。そんな勝の現状と思いを2回に分けてお伝えするインタビューの後編。(取材・構成/加藤裕一)

エージシュート10回以上? 84歳の祖父に米ツアー初優勝を/勝みなみの挑戦(前編)

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―米ツアーで勝てていない理由を自己分析すると?

「調子もよくなかったけど、自信がない。気持ちの部分だと思います。1年目は予選落ちが多かった(出場23戦で8回)。2年目も最初は良かった(序盤5戦でトップ10が2回)けど、途中から連続予選落ちとかもあって『来週も予選落ちかも』みたいに考えて、自分で自分をおとしめちゃったり…。私、実力は全然あると思うし、優勝もできると思うんです。だけど、気持ちが優勝ってところまでいけなかったのかなって。それが正直なところです」

4月「シェブロン選手権」ではメジャー初トップ10の9位になったが…

―この2年で感じた日本との違いは?

「日本はレイアウトも芝も似ている感じのコースが多いし、最近はグリーンもやわらかくなって、攻めればバーディがとれる。調子が良くない時期が続いても、なんとかなるんです。賞金ランキングもトップ10(18年9位、19年10位、20―21年7位、22年4位)でやってこられた。『日本では絶対大丈夫』って自信があります。

でも、アメリカは(コースや芝などが日本以上に)毎週変わるから、大丈夫じゃない。いろんな知識を持ってなきゃいけない。そこで『まだ自分って全然ゴルフのことを知らないな』とか『全然だめだ』とか気持ちが落ちちゃう」

―1年目は初めてのコースばかり、2年目は経験したコースが増えて、今年はさらに…とプラス要素が多い。期待感は大きい?

「(食い気味に)めちゃくちゃあります。24年の最後の方、結果(順位、スコア)にはつながらなかったけど、自分の中では『今までで一番いいゴルフ』『優勝に一番近いゴルフ』『世界一なれるんじゃないかな?』ってぐらいのプレーができていたので」

―そう感じたのは、いつぐらいから?

「母(久美さん)がバッグを担いでくれた試合(27位だった8月ポートランドクラシック)からですね。その前までショットが悪くて、パットでカバーする試合が続いていて『いったん初心に戻って』と切り替えたんです」

きっかけになった8月「ポートランドクラシック」(Alika Jenner/Getty Images)

―初心に?

「小学生でたくさんやっていた基本練習を中心に。両足を完全に閉じて、ハーフスイングを繰り返したりして『切り返しのタイミング』をやり直した。ほかに、スタンスを広げて下半身を使えないようにして打つとか、足を閉じて単純にクラブを下に降ろす、とか。いろんな基礎をイチから繰り返して、上向くきっかけになりました」

―確かに、そこから12試合は予選落ちが1回だけだけど、最高位はラストゲーム「アニカ driven by ゲインブリッジ」の14位止まりだった

「(半笑いで)パットが全然入らなかった。ショットはほとんど5m以内とかにつくのに入らない。1ラウンドでバーディ2個とか。ボギーを打つけど、バーディもとる。それが元々のスタイルだけど、バーディが来ない。バーディパットで入るのはこれぐらい(両手を70cmぐらいに広げて)だけのような感じで」

―パットはミスなく打てていた?

「ミスパットは全然ありました。だから嫌だったんです。ちゃんと打てて入ってないなら悩むことは一つもない。『打ててないこと』が多かった。緩んじゃう。元が強く打つ方だから、打ちすぎると2mとかオーバーしちゃう。だから下りにつくと緩んじゃう。特に下りのスライス。カップ右から全部抜けていくから、イメージがわかない。何で? 何で? の繰り返し。すごく苦しみました」

―3年目に向けたパットの改善点は?

「私は(両ひじを曲げて)少し手元を浮かして構えるんですけど、それをすると(腕などに)力が入る原因になるかもって最近気づいて。ストロークミスにつながるんじゃないか、と思って、最終戦(アニカ driven by ゲインブリッジ)でフラットにというか、吊らずに構えるようにしたら、打ちたいところに打てるようになった。それを意識してやっていきたい。あと、悪くなると右側にボールを置く癖があるから、気を付けて」

2024年の後半はパットにとことん苦しんだ

―ボギーは打ってもバーディを、がスタイルとはいえダブルボギーが多すぎない? 24年の32個は全体で4番目に悪いデータ

「そうなんですよねえ。32個、めっちゃ多いですね。4位? そうなんですか? すごく多かった。原因はショットもなんですが、パットが入んないから。短いのを外す。そこがショットにも影響する。ボギーでおさまらない。『今日はダボ打たないように』と思っても2つぐらい打つ。1週間に1個とかならいいけど、4日やったら8個じゃん!」

―印象としては、バーディが続き出したら打つ、みたいな?

「そう。いいところで打つ。本当にもっと上位に行けそうな試合はたっくさんあったんですけど、ダボで流れを止めちゃう」

―ところで、プロはずっと独学。コーチを雇う気はない?

「ないですね。基本的にうーん…私、見て盗むタイプ。それに基本的に人の話を聞いてないんですよ。それが一番大きいかも。あと自分でやるのがおもしろいんです。悩んで、考えるのが好きなんです」

―どんなことを盗んだ?

「アマチュアの時にアン・ソンジュ(韓国)さんのバンカーを見て、めちゃ練習しました。(同組のときは)アンさんがバンカーに入れたら、わざわざ近くに見に行って『ああやって手首使うんだ』『あごの高い時はこういう打ち方するんだ』とか確認して。それが今のバンカーショットのベースになってます。

コーチは絶対につけないって感じじゃなく、どうしても必要な時は、そういう人が現れると思ってて、その時はお願いしたいです。タイミングじゃないだけ」

1つ勝ちさえすれば…

―あらためて米ツアー3年目に向けて

「トレーニングのやり方を少し考え直します。器具を使ったデッドリフト、スクワットとかというより、自重系のメニューを中心に。それでとにかく1勝。そうなれば、勝ち方もわかって、自信もついて、すぐ2、3勝できる気がする。そうやってメジャーでも上位に行きたいと思っています」