12月の皇后杯で17大会ぷりにチャンピオンの座についた富士通レッドウェーブ。ここではその皇后杯や「大樹生命 Wリーグ 2024…

12月の皇后杯で17大会ぷりにチャンピオンの座についた富士通レッドウェーブ。ここではその皇后杯や「大樹生命 Wリーグ 2024−25」の後半戦に向けた思いを絶対的司令塔の町田瑠唯とポイントゲッターとしてチームを引っ張る宮澤夕貴の2人に語ってもらった。

取材・文=田島早苗

中堅選手の活躍で林咲希不在をカバーする序盤戦


Wリーグの後半戦が始まりますが、まず前半戦でのチームと個人の課題と手応えを教えてください。

宮澤 今シーズンはディフェンスで我慢できていると思っていて、リバウンドも含めトータルでディフェンスがいいという印象です。個人としてはターンオーバーの多さが課題です。でも、今までのキャリアを考えても今シーズンは得点、アシスト、ディフェンスとバランスよくやれていると感じています。

町田 チームとしては波があると感じていて、試合の中での波もあるし、日によって違う波もある。その波が今シーズンは大きいと思っているので、ディフェンスで我慢できて勝ち切れてはいるけれど、後半戦は波を小さくしていかないといけないと思っています。個人的にはコンディションは悪くないので、そこは継続して。あとは、アース(宮澤)と同じでターンオーバーが(笑)。結構ここの2人でターンオーバーをしてるのが…。

宮澤 今シーズンはチームとしても多いんですよ。で、(原因は)ここの2人なんで…。

今シーズンの富士通は接戦をものにしている印象です。

宮澤 チームとして少し自信がついて、勝ち癖もついているのかなと感じます。大事な場面やディフェンスで我慢できれば勝てることを全員が分かっているのもありますね。

町田 あとは中堅の選手たちが昨シーズンより自信を持ってコートに立っていますね。大事なところでの3ポイントシュートをアースやキキ(林咲希)が決めるのはある意味いつも通りといえばいつも通りですが、皇后杯の決勝のようにウル(江良萌香)やキラ(内尾聡菜)が決めたというのは、個人としてもチームとしても大きなものを得た感じです。

林咲希選手のケガによる離脱は痛手ですが、それでも富士通の評価が変わらないのは中堅選手の活躍もあると思います。

宮澤 ヨウ(赤木里帆)とウルは、たとえどっちかが調子が上がらないときがあっても、どっちかが良いといったような感じで、助けてもらっています。

町田 そう。そこにキホ(宮下希保)が入ってくるので、(同じポジションの)アースも休めるし、アースとキホの組み合わせで面白いバスケもできるし。

ジョシュア ンフォンノボン テミトペ選手もよりフィットしていますね。

宮澤 安定してきた気がしますね。だけど、まだまだできるかな、ポテンシャルは高いし。

町田選手からのパスに対する合わせも理解度が増し、精度も高くなったような。

宮澤 多分、こっちも分かってきたと思います(町田選手を見る)。

町田 そうだね。それにこれまでと比べると自分のやりたいことを言うだけでなく、「何をしたかったですか?」とか「こうした方がよかったですか?」という聞き方に変わった気がする。

宮澤 前は「あれしたい、これしたい」、「テミが空いていたよ」と、自分が中心になる話が多かったけど、今シーズンは周りの意見を聞くことが増えてきたよね。「リバウンド取るからアースさん、もっとシュート打っていいよ」と言ってくれるし。それに、「アースさんシュートがこうなってるよ」ってアドバイスを受けるときもある(笑)。

町田 アース、シューターなのに(笑)。

宮澤 手がこうなってるからちゃんと伸ばしてって(笑)。

町田 でも、よく見てるよね。

コミュニケーションは大事ですよね。

宮澤 ミーティングでも絶対発言してくれるんです。以前、それについて聞いたら、「言わないで試合でやられたら後悔するからチームのために言う」と言っていて。そんなにもチームのこと考えてくれてるんだと思ってうれしかったですね。

2冠達成の第一関門、皇后杯での戦いを振り返る


さて、昨年12月に皇后杯優勝。準決勝のデンソーアイリス戦では、宮澤選手は相手エースの髙田真希選手をマークし、「止める」という気迫がプレーに表れていました。

宮澤 だってリツさん(髙田)止めなきゃ負けますもん。だからリツさんとマッチアップするデンソー戦が一番責任を感じますね。私がやられたら負けると思ってコートに立っているので。ほかの試合がそうではないというわけではないのですが、デンソー戦は少し気持ちが違いますね。

町田 私は安心してアースのことは見ています。頭を使って守るタイプの選手だと思っていて、相手の特長をしっかり頭に入れてディフェンスをしているイメージ。それにリツさんを苦手にしているようには見えないから、私は「デンソーの得点源ではあるけれど、できるなら1対1で守ってくれ」と、思っています。

宮澤 責任重大だ(笑)。

続いて皇后杯の決勝はアイシンウィングスと対戦。序盤からリードを許す展開でした。

宮澤 アイシンはタクさん(渡嘉敷来夢)がすごかったし、Wリーグで対戦したときとは全く別のチーム。それを分かっていたけれど予想以上に外のシュートを決められましたね。自分たちのオフェンスもうまくいかなかったので、やばいぞという感じはありました。何が起こるか分からないのが皇后杯ですし。

町田 勝ちたいという気持ちが強かったし、「負けるかも」とは考えてなかったけれど、これ以上離されたら苦しくなるというのはありましたね。そもそも前半は私がボールをコントロールしていなくて。(相手ディフェンスが)ディナイやフェスガード気味だったので、みんなに任せすぎてしまったところがありました。そこが前半の反省だったので、後半はディナイされてもボールに絡む回数を増やすことを頭に入れて。私がそういう動きをするとチームのリズムになるし、そこで流れが変わるかなと思っていました。結果的にいい方向にいって良かったです。

アイシンは町田選手に対して対策を施してきました。

町田 いろいろな選手が守ってきましたが、どこかで緩むときがあるとは思っていました。そのタイミング、チャンスを逃さなければいけるという、何故か分からないのですが自信があって。それで粘って粘って、待って待って、そうしたら残り3分だったんですけど(笑)。だいぶ粘りすぎたなという感じではありましたね。

 アイシンがこれまで以上に高いインテンシティだったので、逆に「これが40分間ずっと続くのかな?」とは考えていました。だから私たちが我慢しながらいつも通りにやれば、どこかで落ちる。そのときを待っていましたね。

宮澤 その落ちるタイミングが私的には第3クォーターの頭にあるのかなとは思っていたんですよ。でも落ちない、逆にリュウさん(吉田亜沙美)の3ポイントシュートが入るし。だから第3クォーターで点差が縮まらず、一時また2ケタの点差に開いたときは「まずい」と思っていました。あのときは、とりあえず点を少しずつでも入れ返していこうと考えていました。

宮澤選手がコツコツと得点してつないでいましたよね。

町田 テミがファウルをもらってね。

宮澤 そう! インサイドで頑張ってくれて、フリースローでつなげたことも大きかった。あとキホのフリースローも。誰も焦ったようなプレーをすることはなかったので、落ち着いて、淡々と富士通のバスケットはできていたよね。

町田選手は個人では皇后杯初優勝。決勝の相手が渡嘉敷選手や吉田選手、岡本彩也花選手で、かつて3人が在籍していたENEOSには何度も決勝で敗れていた分、ここでの対戦に思うところもあったのでは。

町田 Wリーグのレギュラーシーズンでアイシンとの4戦目が終わったときに、タクさんが「皇后杯の決勝で会おう」と言っていたんです。私たちも決勝に進むことができて、アイシンも有言実行で勝ち上がってきたので、(渡嘉敷たちがいたときの)ENEOSの強さというのを感じましたね。それにあのメンバーのいるアイシンと戦えたことはうれしかったです。

皇后杯初優勝の感想は?

町田 うーん、そうですね。うれしい気持ちというか。

宮澤 あまりうれしそうじゃなかったよね?

町田 いや、うれしかったよ。でもなんて言うんだろう。うれしかったけどホッとした方が強かったのかも。

宮澤 確かに。私もホッとした感じだった。

町田 涙も出なかったし。

宮澤 あ、キラの(ベスト5の)受賞!

町田 そうだ、あれが一番うれしかった!

宮澤 絶対選ばれると思ってたから、(発表の瞬間)「キラ来るよ」って本人にも言ってたし。でも、まさかキラが泣くとは思わなかったな。

町田 ベスト5については、「キラに取ってほしいよね」という話はアースたちともしていたから、なおさらうれしかったかな。

(後編に続く)