乙坂智はDeNA3年目の2014年に初打席で本塁打を放った DeNAに10年間所属し、2024年シーズンはメキシカンリーグ「レオネス・デ・ユカタン」(米名称ユカタン・ライオンズ)でプレーした乙坂智外野手はプロ3年目の2014年5月31日、ロ…

乙坂智はDeNA3年目の2014年に初打席で本塁打を放った

 DeNAに10年間所属し、2024年シーズンはメキシカンリーグ「レオネス・デ・ユカタン」(米名称ユカタン・ライオンズ)でプレーした乙坂智外野手はプロ3年目の2014年5月31日、ロッテ戦でのプロ初打席で本塁打を放った。プロ野球史上57人目の初打席本塁打となったが、その2日前にはまったく同じ「予知夢」を見ていたという。

 横浜高から2011年ドラフト5位で横浜(現DeNA)に入団。「当時の僕は自分が下手くそだと気づけないくらいに下手くそでした(笑)。ある程度の下手くそなら『あ、俺下手なんだ』と気づけるんだけど、それもまったく分からない。『俺いける。頑張ればいける』みたいな根拠のない自信がありました」と苦笑した。

 当時の中畑清監督との思い出は2年目秋の奄美大島での秋季キャンプ。宿舎内で鉢合わせた際に「おう、どこ行くんだ?」「素振りにいきます」「それなら、見てやるから俺の部屋に来い」。1時間ほど指導を受けたという。「やることを常に肯定してくださる方で、自分のスタイルで持ち味をだしていけばいいぞ」とのアドバイスが印象的だったという。

 翌2014年5月31日、QVCマリンフィールド(ZOZOマリンスタジアム)でのロッテ戦。2-1で迎えた9回、プロ初打席を代打で迎えた。ベンチ裏で素振りをし、大きなクーラーボックスに腰掛け目を閉じて深呼吸。「緊張すると呼吸が浅くなるので、気持ちを落ち着かせました」。中畑監督からの「行ってみろ」の声でベンチから飛び出した。

「バッターボックスに入って、これがテレビで見ていたところか。今、映ってんだな、とか思っていました。デーゲームでめっちゃまぶしかったのを覚えています」

 マウンドの益田直也に対し初球、2球目と空振り。「めっちゃ力んでいると思った」。気を取り直し「リラックスしようと思ったらいい感じで、バットを振ったところにボールがきてくれた感じでした」。3球目のボールのあと、カウント1ボール2ストライクからの4球目、内角高めの139キロを振り抜いた

快挙の夜、同僚の国吉佑樹との鉄板焼きが「めっちゃ美味しかった

 スピンがかかり、高く上がった打球は右翼ポール際のスタンドに飛び込んだ。プロ野球史上57人目の初打席本塁打だった。「少し詰まった感じでしたが、その分切れることなく入ってくれました。その2日前に初安打がホームランの夢をみたんです。カウント1-2で。打球の角度は少し違ったけど、同じようなポール際へ。一塁を回ったときに『デジャブですげぇ』と思いました。家族や親戚がずっと応援してくれたので嬉しかったですね」。

 その夜、勝利投手となった国吉佑樹から声をかけられ「宿舎のホテルの下にある鉄板焼きをご馳走していただいたんです。めっちゃ美味しかったのを覚えています」。予知夢から実現した快挙。プロの世界に飛び込んだ「下手くそ」が描いた、忘れることのできない“軌跡”だった。(湯浅大 / Dai Yuasa)