勝みなみが米女子ツアー3年目を迎える。国内ツアーで「15歳293日」の最年少優勝(当時)を飾った2014年「KKT杯バンテリンレディス」から通算8勝を挙げながら、米ツアーでは優勝がない。そんな現状と思いを前・後編の2回でお伝えする。前編は…

勝みなみと祖父の市来龍作さん

勝みなみが米女子ツアー3年目を迎える。国内ツアーで「15歳293日」の最年少優勝(当時)を飾った2014年「KKT杯バンテリンレディス」から通算8勝を挙げながら、米ツアーでは優勝がない。そんな現状と思いを前・後編の2回でお伝えする。前編は、84歳の今も“現役”でエージシュート(年齢以下のスコアでプレー)を繰り返す祖父・市来龍作さんの存在。(取材・構成/加藤裕一)

◇◇◇

2024年12月28日。帰郷していた勝は鹿児島高牧CCで龍作さんと一緒にゴルフをした。前年オフから約1年ぶり。雨のため3ホールだけだったが、あらためて祖父の偉大さを痛感した。

龍作さんは1、3ホール目で7m、5mのパーパットを沈めた。てくてく平然と歩いてボールを取りに行く龍作さんに、勝は「もう勘弁して」と言わんばかりに苦笑いし、3ホール目で1mを外した。

「ああいうことするんですよ、おじいちゃんって。パット、アプローチがほんとにうまいから」。ティイングエリアは勝がバックティで、84歳の龍作さんはさすがに50yd以上前のゴールドティ。とはいえ2ホールは同じパー。勝は愚痴をこぼしながらも、うれしそうだった。

勝はゴルフを始めて間もなく、1度やめたことがある。理由は単純、「楽しくなかったから」。しかし、龍作さんが「みなみと一緒にゴルフがしたい」と言ったため、ジュニアスクールに入って再開。するとゴルフの友だちができ、仲良くなり、楽しくなって、米ツアーに挑戦するまで上達した。

龍作さんはいつもそばにいた。ジュニアの試合はもちろん、鹿児島高入学直後の2014年春に国内ツアーを当時最年少で制した「KKT杯バンテリンレディス」も、17年夏のプロテスト合格後もずっとロープの外を歩きながら、見守ってくれていた。

勝みなみのジュニアレッスンを見守る市来龍作さん

勝が米ツアーに参戦した23年から事情が変わった。海外までついて行けない龍作さんは一番の楽しみだった孫の観戦ができなくなって、ゴルフを本格的に再開。ホームコースの鹿児島高牧CCで14年8月、74歳にして「74」で初達成したエージシュートはどんどん増え、24年は「4、5回はやったかな」(龍作さん)。通算でおそらく2桁前後を数え、今も腕前をキープしている。

龍作さんのクラブは昔のままだ。「もう飛ばんようになってね。ドライバーは180ydぐらいしか行かん。ごまかしばっかりやねえ」と言うが、84歳で180ydがスゴイ。アイアンは約30年前からカーボンシャフトの地クラブを使い続け、今も5番まで入れている。5番ウッドは、勝が小学生の時に使っていた“お古”だ。

「みなみのプレーはなかなか見れんからね」と寂しそうにこぼしながら、いまだ健康でゴルフを続ける龍作さんが、勝の原動力の一つだ。「いつまで元気でいられるか、わかりませんから」。シーズン第2戦のファウンダーズカップ(2月6日開幕/フロリダ州ブラデントンCC)から始まる米ツアー3年目。祖父のためにも初優勝を手にしたい。