日本代表・苦闘の記憶(2)【日本代表・苦闘の記憶(1)】『代表の固定メンバーに嫌な既視感 史上最強の「黄金世代」はW杯本大会で散った』はこちら>> 2026年ワールドカップへの出場権をかけたアジア最終予選で、日本が圧倒的な強さを見せている。…
日本代表・苦闘の記憶(2)
【日本代表・苦闘の記憶(1)】『代表の固定メンバーに嫌な既視感 史上最強の「黄金世代」はW杯本大会で散った』はこちら>>
2026年ワールドカップへの出場権をかけたアジア最終予選で、日本が圧倒的な強さを見せている。
今回の最終予選では6カ国がホームアンドアウェーの総当たりで対戦するため、全10試合を戦うことになるが、日本は6試合を終えた段階で5勝1分けと、早くも2位以下に勝ち点10以上の差をつけて首位独走。3月20に行なわれるバーレーン戦に勝てば、早くも本大会出場が決まる。
だが、あまりの強さにも一抹の不安を覚えるのは、試合に出場するメンバーがほぼ固定されてしまっていること。そして、これまでの流れが、過去の苦闘と敗戦の記憶と重なることにある。
2010年、アフリカ大陸で初めて開催された歴史的なワールドカップで、日本はグループステージを突破した。それは、日本が自国開催(2002年)以外のワールドカップで初めて成し遂げる快挙でもあった。
本田圭佑をはじめとする20代前半の若手、いわゆる"北京世代"の選手が活躍した日本代表にとっては、次回2014年ワールドカップへの楽しみが膨らむ大会になったことも確かだった。
事実、ワールドカップ後に立ち上げられた新生・日本代表は、順調に船出したと言っていい。
新たに指揮官となったアルベルト・ザッケローニ監督の就任初戦では、いきなりアルゼンチンを撃破。2011年1月に行なわれたアジアカップでは、優勝を果たしている。
ザッケローニ監督が就任当初から、攻守において秩序と効率性を追求した約束事をチームに落とし込んだ結果だった。
また、すでに南アフリカを経験した北京世代に加え、吉田麻也、香川真司といった、さらなる若手が台頭していたことも、明るい未来を予感させる材料となっていた。
ブラジルW杯でコロンビアに1-4で敗れて、グループステージ敗退が決まった日本代表 photo by JMPA
しかし、今となってみれば、最初の1、2年がうまくいきすぎていたのかもしれない。
南アフリカでのワールドカップ、さらにはカタールでのアジアカップの成功体験に引きずられるように、メンバーは固定化。2012年から2013年にかけて行なわれた2014年ワールドカップのアジア最終予選では、ほぼ同じメンバーで戦い続ける状況が続いた。
【本大会の1年前に潮目が変わった】
日本がワールドカップ出場を決めるまでの最終予選7試合の主力メンバーを見れば、そのことは明らかだ(カッコ内の数字は、最終予選7試合のうち先発出場した試合数)。
GK:川島永嗣(7)
DF:今野泰幸(6)、長友佑都(6)、内田篤人(6)、吉田麻也(6)
MF:遠藤保仁(7)、長谷部誠(7)、本田圭佑(6)、香川真司(5)
FW:前田遼一(7)、岡崎慎司(7)
5試合以上に先発出場した選手だけで11人。つまり、最終予選を通して、ほとんど先発メンバーの顔ぶれが変わることがなかったことを意味している。
その11人全員がアジアカップの優勝メンバーであり、吉田、香川、前田を除く8人が、前回ワールドカップの登録メンバーでもあったわけだ。
南アフリカ大会を経験した若手がヨーロッパへ渡り、選手個々が成長。そんな選手たちで固められたチームが練度は高めることで、強くなっていったのは間違いないが、次第にそのツケが表出してくることになる。
潮目が変わったのは、2013年コンフェデレーションズカップである。
アジアカップ王者として、意気揚々とワールドカップの前哨戦に挑んだ日本は、しかし、3戦全敗で終戦。ブラジル、イタリア、メキシコという強豪国ばかりとの対戦だったとはいえ、衝撃的な結果だった。
日本代表はここから試行錯誤、いや、実質的には迷走を始めるようになる。
チームは、ザッケローニ監督によって確かに規律と効率性を高めた。だが、それによって自信を得た選手たちは、だからこそ現状に限界や物足りなさを感じてしまう。
そんな選手たちがよりポゼッション重視のスタイルを求めるようになった結果、チームは進むべき道を見失ってしまったのである。
バランスを失ったチームは、ボールを保持していても効果的な攻撃が少なく、得点ができないばかりか、ミスから失点が増加。停滞感が漂う試合が目立つようになっていく。
結局、劇的な変化が見られないままに迎えた2014年ワールドカップでは、2敗1分けでグループステージ敗退。最後の試合は、コロンビアに大量4失点を喫しての惨敗だった。
結果的に、前記した主力メンバー11人のうち、前田を除く10人はワールドカップに選ばれているのだから、ザッケローニ監督在任期間を俯瞰すれば、主力の顔ぶれはほぼ変わらなかったことになる。
それ自体にも問題はあった(吉田、内田、長谷部が相次いでケガで長期離脱となり、ギリギリでワールドカップに間に合わせた)が、裏を返せば、前田だけが外れたという事実にも、混迷の様子が表われている。
ワールドカップの登録メンバーに、最終予選にはまったく出場していないFWが4人(大久保嘉人、柿谷曜一朗、齋藤学、大迫勇也)も加わることになったことは、新戦力の発掘が進んだというより、確たる戦い方が定まらなかった結果と見るべきだろう。
最終予選で悠々と首位を独走する一方で、ピッチに立つ選手の顔ぶれは代わり映えがしない――そんな現在の日本代表を見ていると、老婆心ながら、10年以上も前の出来事が重なって見えてしまうのである。