『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(24)岡山シーガルズ 城戸うらん(連載23:岡山シーガルズ金田修佳が、古賀紗理那を見て感じた自分の「平凡」さ「だから下を向いている暇はない」>>)「(トップリーグ)5年目になるんですけど、自分の目指…
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(24)
岡山シーガルズ 城戸うらん
(連載23:岡山シーガルズ金田修佳が、古賀紗理那を見て感じた自分の「平凡」さ「だから下を向いている暇はない」>>)
「(トップリーグ)5年目になるんですけど、自分の目指すべき選手が見えてきました」
岡山シーガルズの城戸うらん(23歳)は、少し恥じらいながらそう言った。「うらん」。その名前は、語感のよさから名づけられたという。
「自分が試合でコートに入るために何が必要か、チームにどんな貢献ができるのか。(アウトサイドヒッターとしては168cmで)身長が足りないし、今年からSVリーグは外国人選手が多い。でも、自分は最後の1点を取りたいし、取れる選手を目指しています」
奈良県香芝市に生まれた城戸は、8歳の時に友人からバレーボールのスポーツ少年団に誘われた。クラスの名前順で、たまたま後ろになった子に「お姉ちゃんもやっているから」と体験に行くことになったという。ピアノやスイミングなど、ほかの習いごとは長続きしなかったが......。
「最初はバレーというスポーツを知りませんでした」
しかし、運命的な一瞬があった。
「体験に行った時、『レシーブはこう腕を組んで、ここにボールを当てるんやで』と教えられて。そこで、ボールがたまたま腕に当たっただけなんですが、監督がすごく褒めてくれたんです。『絶対にうまくなる』と言われて、それが嬉しくて(笑)。ちょっと楽しいかもと思って始めました」
小学生のうちから活躍し、中学は大阪国際大和田中学校(現・大阪国際中学校)に進むことを決めた。地元に残っていたら、テニス部に入っていたそうだが、彼女はバレーを選択した。
しかし中学2年時に、前十字靭帯断裂という憂き目に遭っている。半年以上、戦列から離れることになった。苦しい経験を経てメンタル面の成長を感じた一方で、「ケガがなかったらもっと成長できたのに」という悔しさもあった。
城戸は紆余曲折もありながら、バレーの道を進んできた。だからこそ、大阪国際滝井高校(現・大阪国際高校)を経て岡山でプレーする道が開けたのだろう。
「私の場合、"当たって砕けろ"の精神というか......。今の河本(昭義)監督には大阪国際滝井高時代も見てくださっていたので、高3の時に進路を相談したんです。冷静に考えて、『自分の技術ではVリーグで通用しない』とも思いましたが、『どこまでできるかやってみたい。無理ならバレーをやめる』と覚悟しました」
大学に進学してバレーを続けることは考えていなかった。彼女は4人兄弟の一番上で、自分以外の兄弟が進学することを望んでいたからだ。
そして岡山で5年目、彼女は自分の道を見出しつつある。
「私は、だんだんバレーが好きになったタイプです。派手さはなくても、スパイクがセールスポイント。フェイントやタッチ などを混ぜて、ブロックアウトも得意です。たとえ目立たなくても、"あの子入ると、空気が変わる"という選手を目指します!」
【城戸が語る『ハイキュー‼︎』の魅力】
――『ハイキュー‼︎』、作品の魅力は?
「完結するまで、何回も読み直しました。新刊が出るたびに"明日が発売日だ!"と楽しみで。高校の寮に入ってからは読めなかったので、卒寮後にまとめて何十巻か読みました。落ち込んでいる時は、胸が熱くなるシーンを読み返しています」
――共感、学んだことは?
「ストーリーの面白さだけじゃく、技術的に学ぶことも多いです。日向(翔陽)がテンポ(トスが上がった瞬間からアタッカーがスパイクをヒットするまでの時間)の練習をしますよね。そこを読んだ後、練習で実際にやりました(笑)。主人公の日向は挫折ばかりなのに心が折れないし、『自分も諦めんとこう』と思うことも多かったですね」
――印象に残った名言は?
「田中(龍之介)さんの『ところで平凡な俺よ、下を向いている暇はあるのか』というセリフです。ずっと流れる心の葛藤がわかる気がして好きですね。最後に"超インナー"を打つ選択に持っていく強さにも惹かれます。自分にも言われている気がしたし、最後までやり切る選択ができるようになりたいですね」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は稲荷崎の北信介さん。『ちゃんとやんねん』という心掛けがいいですね。キャプテンなのにコートに入っていないと、『形だけのキャプテン』と思われるかもしれないけど、メンバーチェンジで入ったら周りをピリッとさせる。派手さがないのにその空気感を出すには、普段から本当にちゃんとやっていないといけない。後輩もついてきてくれないでしょうから。好き、というか尊敬します。
2位は日向。あんな選手がチームにひとりいれば、絶対に強い。私もそうなりたいんですけど、あそこまでポジティブになるのは難しいですね(笑)。本当にバレーが好きで、『バレーのためならなんでもやる』という心がけは、バレーの道を志す者として持っておくべきですよね。
3位は稲荷崎の宮侑。日向と似ているところがあって、とにかくバレーが一番。周りに嫌われても、『俺はこれをやる』という芯がある。北さんとの対比でチャラそうに見えて、バレーには嘘をつかないところがいいですね」
――ベストゲームは?
「最後のVリーグのオールスターです! まず日向と影山が敵同士というところに、感じるものがありました。あと、それまでのことを思い出して、泣きそうになりました。『みんな成長したなぁ』って。バレーの展開が早いのもよかったです。実際の試合に近く、息を止めて一気に読みきったような感じでした」
(連載25:岡山シーガルズ中本柚朱の胸に刺さった星海光来の言葉 高さで「不利」でも粘りのバレーで勝つ>>)
【プロフィール】
城戸うらん(きど・うらん)
所属:岡山シーガルズ
2001年12月27日生まれ、奈良県出身。168cm・アウトサイドヒッター。友人に誘われて8歳でバレーを始める。中学2年時の前十字靭帯断裂も乗り越えて成長し、大阪国際滝井高校(現・大阪国際高校)では春高バレーに出場。2020年に岡山シーガルズに入団した。