山下美夢有は2024年4月のメジャー「シェブロン選手権」に初出場し、米ツアー挑戦を決めた。「自分を進化させるには、やっぱりここ」と、コースの難しさにやりがいを感じ、25年のフル参戦、メジャー初優勝へ。24年国内ツアーで歴代最高の平均ストロ…

米ツアーに「技術」をぶつける

山下美夢有は2024年4月のメジャー「シェブロン選手権」に初出場し、米ツアー挑戦を決めた。「自分を進化させるには、やっぱりここ」と、コースの難しさにやりがいを感じ、25年のフル参戦、メジャー初優勝へ。24年国内ツアーで歴代最高の平均ストローク69.1478を記録した“技術”に磨きをかけるため、パワーヒッターぞろいの新たな主戦場に飛び込む。(取材・構成/加藤裕一)

「自分を進化させるんは、やっぱここやな」 米ツアー挑戦の理由/インタビュー<前編>

ミドルアイアン以上への自信

山下のドライビングディスタンスは24年国内ツアーで53位の236.36yd。気候やコースの違いがあるとはいえ、同年米ツアーの公式HP掲載データで最下位にあたる162位アディティ・アショク(インド)の238.70ydにも及ばない。

―山下さんは日本でも400ydちょいのパー4ならセカンドの番手が6番アイアンとかユーティリティになるでしょ? 向こうではもっと長いクラブを持たんとあかんようになる。

「まあ飛ぶ人はめっちゃ飛ぶんで。向こうはランもコースによっては出ますけど、むちゃくちゃ長いホールもありますね」

持つクラブが長くても

―とはいえ日本で平均バーディ数は2年連続1位(23年4.3828/24年4.3394)。よく「100yd以内」の精度の高さがすごいって言われるけど、それはミドルアイアン、ユーティリティでチャンスを作れるから。そこに自信はある?

「そりゃもちろん精度は(ショートアイアン、ウェッジより)落ちますけど、あります」

求めるのは「技術」

―山下さんは「技術」という言葉をよく使う。23年の「全米女子オープン」(ペブルビーチGL)で予選落ちした時も「技術があれば、絶対やれるんです」と言ってた。「もっと飛距離を伸ばして…」とかは言わへん

「他の人は他の人の長所があるじゃないですか、飛ぶとか。私は『これ』と言ったものがないんですよ。となると(強みは)『細かいところ』かなと。いろんなバリエーションだったりとかが私には大事かなって思ってます。全体を通しての『技術』かなと」

―山下さんが初優勝(21年KKT杯バンテリンレディス)前からお世話になってるトレーナーに聞くと「“もうちょっとここをこうしたい”と言わなくなった」と。つまり“自分のスタイル”が固まってきた?

「それはほんまに思います。3年前ぐらいまでは『飛距離、飛距離』って思ってたけど、どんだけ頑張ってもやっぱ、ネリー(・コルダ)さんとかみたいに飛ばないんで。トレーニングしたからって飛ぶってわけじゃない。ゴルフってほんまにタイミングとかもあるし。あんだけ大きかったら、そりゃ飛ぶじゃないですか? 手も長いし、脚も長いし、もう全然違うじゃないですか?」

ひたすら「技術」を求めて

―自分は自分やと

「体を飛距離に特化していくのは、私にはあんまりいい感じではないと思ったんです。自分のスタイル的に。だから、動きのあるトレーニングとかをやりつつバネを、というのが大事やなと。軽いウエートとかはええけど、そんなガツガツは。野球みたいに『飛ばすために!』とかないから。だって、(両手で円を作って)こんなカップに入れないといけないんですよ。だから、私は別にこのスタイルでいいかなって。飛んでもスコアにつながらんかったら一緒。『内容がないな』と」

―24年は竹田麗央さんと回ることが多くて、ぶっちゃけドライバーで30yd、時には40ydとか置いていかれたでしょ? あれも気にならんかった?

「あの飛距離は魅力やなあとは、もちろん思いました。でも、あんまり(意識は)なかったかもしれないですね」

“食”への不安と楽しみな「アメフト」

自分のスタイル、技術への自信は深まってきた。あとは、それを出し切れるか。山下は24年「全米女子オープン」で12位になったが、大会前に現地で発熱し、日本にいた両親に欠場を勧められる一幕もあった。生まれて初めて親元を離れ、不慣れで広大なエリアを転戦するシーズン。いかに体調を整えるかが大きな課題かもしれない。

「食」を大事にオンオフも切り替えて

―さて、アメリカの“食”は大丈夫? 以前「ウチの家族は全員ダメ」って言うてたけど

「(笑って)はい、全員ダメです。ほんまに(海外で)どこに行っても(満足に)食べられないんで。Qシリーズ(最終予選会)では(マネジャーが)毎日ごはん作ってくださったんです。めっちゃ、ありがたかった。トンカツとか作ってくれるし、他にピーマンの肉詰め、パスタ、カレーにお鍋も」

―山下さんもそれを手伝って?

「いや、私は(飲み物、食器を)準備して…ごはんは一切…」

―毎度そうはいかん。海外で食事に対応せんと

「そうですね。どんな感じになるか。基本は日本食を中心にと考えてます」

―英語は?

「ペラペラしゃべるのは多分無理なんで、とりあえず、このオフに大事な単語を何個か覚えます。ゴルフ場なら、ゴルフの単語とか覚えとけばなんとかなるじゃないですか?」

―転戦続きやとオン・オフの切り替えも大事になる。ゴルフ以外で楽しみにしてることはある?

「アメフトとか、ラグビーとかを見に行ってみたいです。NFL? そうそう。あのボールゲーム系、ボール持って走ってっていう。ボールを打つの(MLB)もありやけど、それはいいです」

―総合格闘技とかボクシングが好きやから、やっぱり“激突系”がええみたいやね。でも、アメフトって超人気スポーツやしねえ…

「はい。(両手を叩きながら)やっぱり“バーン!”てやつを見たいです。なんとかチケットとって」

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すべてに手探りのシーズンは「出られる試合から出ます」と、開幕2戦目「ファウンダーズカップ」(2月6―9日/フロリダ州ブラデントンCC)から参戦を予定。「日本の試合は、今はまだ考えられないです」と言い、米ツアーに専念する。