【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬【リヴァーマン】 フランス競馬界に大きな足跡を残したアレック・ヘッド氏は、2022年に97歳で亡くなりました。フレディ・ヘッド元調教師やク…

【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【リヴァーマン】

 フランス競馬界に大きな足跡を残したアレック・ヘッド氏は、2022年に97歳で亡くなりました。フレディ・ヘッド元調教師やクリスティアーヌ・ヘッド=マーレック元調教師の父で、長年にわたって調教師として偉大な成績を残し、所有するケスネー牧場はベーリングやトレヴというフランス競馬史に残る名馬を生産しました。

 フランス競馬では1950年代後半以降、テキサナ、フラダンサー、シーバードといった北米血統を含んだ名馬が活躍し、そのスピードに魅せられた彼は、1960年代末以降、外国のセリへたびたび出かけ、アメリカ産馬を購買しました。同じ1969年生まれのリヴァーマンとリファールは、シャネルのオーナーだった故ピエール・ヴェルテメール氏の未亡人の代理人としてヘッド氏が購買した馬で、いずれも彼の厩舎からデビューしました。

 リヴァーマンは、ミルリーフと同じネヴァーベンド産駒ですが、前者の母の父プリンスジョンと、後者の母ミランミルがいずれも「プリンスキロ×カウントフリート」という組み合わせなので、血統構成がきわめてよく似ています。リヴァーマンはミルリーフよりもスピード型で、ゴール前で繰り出す瞬発力を武器に、仏2000ギニーやイスパーン賞などを制覇しました。

 種牡馬としてはトリプティク、ゴールドリヴァー、デトロワ、アイリッシュリヴァー、ルション、リヴリアなど多くの名馬を出し、1980、81年に仏チャンピオンサイアーとなりました。同国で7年間供用されたあと、米ケンタッキー州に移り、ここでも成功を収めました。

 リヴァーマンとリファールは、フランス生産界にモダンなスピードをもたらし、アレック氏の子供たちが管理したゴルディコヴァとトレヴ(いずれもカルティエ賞年度代表馬)には、両者の血が色濃く流れています。

 リヴァーマンが与えた日本への影響力は大きく、ウオッカの母の父ルションはリヴァーマンの代表産駒の一頭です。スワーヴリチャード、モーリス、クリソベリル、ニューイヤーズデイ、フリオーソ、ディープブリランテにも含まれています。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「総合リーディングサイアーとなったキズナは何が凄い?」

 2015年に競走生活を終え、翌年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたものの、最初の4年間はノーザンファームの生産頭数が少なめでした。繁殖牝馬の内訳をみると、日高の種牡馬とさほど変わらず、そのような状況下でもトップクラスの成績を残していたので、繁殖牝馬の質・量ともにグンと上昇した現4歳世代がブレイクしたのは当然の流れだと思います。

 稼ぎどころが幅広いというのが最大のセールスポイントです。2024年は総合種牡馬ランキングと2歳種牡馬ランキングの双方で首位の座につきましたが、もうひとつ、障害戦のランキングでもトップに立ちました。また、JRAのダートのみを対象としたランキングでは第5位。ホッコータルマエ、マジェスティックウォリアー、パイロ、ダノンレジェンドといったダート向きの種牡馬よりも上です。

 芝でもダートでも2歳戦でも障害でもコンスタントに稼げる能力は素晴らしく、馬主孝行の種牡馬といえます。サンデーサイレンス→ディープインパクト→キズナと、親子孫3代チャンピオンサイアーとなりましたが、今年の春から皐月賞馬ジャスティンミラノが種牡馬入りします。さらにサイアーラインを伸ばして行きそうです。