複数球団による争奪戦が展開されたキム・ヘソン(左)。彼を突き動かしたのは大谷(右)の存在だった。(C)Getty Imagesエンゼルス、パドレス、カブスらが獲得有力も 関係者たちにとっても寝耳に水の電撃移籍だったようだ。 去る1月3日(現…

 

複数球団による争奪戦が展開されたキム・ヘソン(左)。彼を突き動かしたのは大谷(右)の存在だった。(C)Getty Images

 

エンゼルス、パドレス、カブスらが獲得有力も

 関係者たちにとっても寝耳に水の電撃移籍だったようだ。

 去る1月3日(現地時間)、ドジャースは今オフにポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた韓国プロ野球(KBO)のキウムに所属していたキム・ヘソンの獲得を発表。契約年数は、28、29年に球団オプションが付帯する3年、契約総額は1250万ドル(約19億6250万円)となった。

【動画】爽やかさも光る 米高校で練習に励む大谷翔平の「近影」をチェック

 昨年12月5日に正式公示をしていたキム・ヘソンは、現地時間1月4日にポスティングの交渉期限が閉じる。ゆえに今季中のメジャー移籍の夢が閉ざされるか否かの決断の時が迫っていた。ただ、“交渉先”は見つかっていた。韓国紙『朝鮮日報』によれば、マリナーズ、パドレス、エンゼルス、カブスが具体的なオファーを提示。「ドジャースは『移籍先の有力候補』として業界内で言及されてすらいなかった」という。

 たしかに内野のユーティリティーとしての評価が高いキム・ヘソンは、ドジャースの補強ポイントではない。今季はムーキー・ベッツを遊撃手として本格転向。さらに内外野を守れるトミー・エドマンとも契約延長に成功し、他にもギャビン・ラックスやミゲル・ロハス、マックス・マンシーなど駒が揃っている。

 打撃面においてのパワー不足の懸念もあるキム・ヘソンは、二塁と三塁を主戦場としているが、決して定位置は確約されていない。ではなぜ25歳は、5年2800万ドル(約43億9600万円)という好条件を提示していたエンゼルスをはじめとする好条件を提示した球団を選ばずにドジャースとの契約を選択したのか。

 交渉の舞台裏をリポートした『朝鮮日報』は、「なぜ好条件を無視してまでも、ドジャースなのかという疑問が生じないわけがない」と言及。その上で「ただ、キム・ヘソンは現実を冷静に分析し、数年はマルチ要員として少しずつメジャーリーグに定着するという長期的な視野を持っていた。主力クラスの内野手たちの守備力が不安を抱えるドジャースならば良いという判断を下した」と、交渉をまとめた米大手代理人事務所『CAA』の動きを伝えた。

「見知らぬ土地での適応が一段と楽になる」

 無論、期限ギリギリまで熟考を重ねた。その中で25歳の心を突き動かしたのは、『CAA』の看板選手であり、「ドジャースの顔」とも言えるメガスターの鶴の一声だったという。

「やはり大谷の存在は無視できなかった。キム・ヘソンは、昨年に米最大手のスポーツエージェンシーでもあるCAAと手を結んだ。世界最高のスターであるオオタニを保有している会社だ。そしてオオタニがドジャースを選択する過程があったため、CAAの意向がドジャース内に影響を及ぼしたと言えよう。CAAもチームの雰囲気と文化をよく知っているドジャース行きを勧めた可能性は高い」

 さらに同紙は、こうも続けている。

「そして大谷はキム・ヘソンと同じ東洋人であり、同じエージェント、いわば『ファミリー』としている。ゆえにキム・ヘソンは好意を示すに違いない。ドジャースというスター軍団の中でも随一のスーパースターが世話をしてくれれば、見知らぬ土地での適応が一段と楽になる。昨年には米国でのトレーニングで顔を合わせ、大谷が様々なアドバイスを渡したことも分かっている」

 し烈を極めた韓国の逸材を巡る争奪戦。そこに小さくない影響を及ぼした大谷の存在は、やはり凄まじいものがある。今後数年間においてこうした現象が続くと思えば、ドジャースが彼に10年総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)を支払った意味も理解できる。

 いずれにしても、キム・ヘソンが、ワールドシリーズ連覇の期待が高まるドジャースの中でどのような役割を担うか。デーブ・ロバーツ監督をはじめとする首脳陣の起用法に注目だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

【関連記事】キケ・ヘルナンデスは退団か キム・ヘソン獲得で「彼のための場所を見つけるのは難しい」再契約に“暗雲”漂う

【関連記事】大谷翔平、投手復帰1年目の投打の“ノルマは”?大復活の1年を予想する

【関連記事】ドジャースに“韓国の逸材”加入の舞台裏 大谷翔平が「多くのアドバイスを送った」3年19億円で契約