大竹の岡田前監督への感謝の想いは強い(C)産経新聞社 移籍2年目を終えた阪神・大竹耕太郎は、どんなシーズンを過ごしたのか。全3回に分けてインタビューの模様をお伝えしていく。 最終第3回は母校・早稲田大の先輩について。2024年シーズンをもっ…

 

大竹の岡田前監督への感謝の想いは強い(C)産経新聞社

 

 移籍2年目を終えた阪神・大竹耕太郎は、どんなシーズンを過ごしたのか。全3回に分けてインタビューの模様をお伝えしていく。

 最終第3回は母校・早稲田大の先輩について。2024年シーズンをもってユニフォームを脱いだ岡田彰布前監督、和田毅氏への想いを聞いた。

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 まずは岡田前監督の退任を聞いた時、大竹はどう感じたのか。

「入団したタイミングで就任されたので、『僕はこの人のために、貢献するために行くんだな』みたいな感覚はありました。あまり会話はしないですけど、信頼して起用してもらっている感覚がありましたね。それに応えようと2年間やってきたので、来年(一緒に)やれないことには寂しさはすごくありましたが、大事に使ってもらったことに対する感謝の気持ちの方が大きかったですね」

 実際に感謝を伝えるタイミングはあったのか?

「実はまだないんです。CS(クライマックスシリーズ)が2試合目で終わったんですけど、僕は3試合目の先発だったので(すれ違い)。その後のチームの集合でも顔を合わせなかったですし、納会も偉い人ばかりの卓に行くわけにもいかず……。また春のキャンプに来られると思うので、ちょっとタイミングは考え中です」


 昨シーズンの夏場、岡田前監督との忘れられないエピソードがある。

「バンテリンドームで3回3失点で代わってしまった試合があるんですけど、体調良くない中で登板したら全然ダメで。いざ代わるってなった時に『じゃあまた来週頼むな』と言ってもらったんです」

 2024年の大竹は、一度マウンドに上がればほとんどの試合で5回以上を投げた。5回に満たなかったのはわずか2試合のみ。そのうちの1試合が上記の試合、8月18日の中日戦だった。

 この試合の前に前段がある。

「京セラドームでの広島戦(8月10日)、いつも坂本(誠志郎)さんとバッテリーを組んでいるんですけど4失点してしまって。翌日、坂本さんだけが抹消されてしまった。内角のボール球のサインで真ん中に投げて長打を喰らって負けたので、本当なら1失点、2失点でいける日だったんですよね。僕じゃなくて坂本さんを抹消させることに何か意図があるのかな、1球で人の人生を狂わせてしまうなと感じて。その日以降は自分の中で気持ちを入れて、自分の問題だけではないと思ってやっていました」

 その気持ちが通じたのか、名古屋での早期降板後、指揮官は改めて大竹への信頼を示した。ちなみに、早期降板の次の試合以降、大竹は5戦4勝負けなしでシーズンを締めている。気持ちだけでなく数字の面でも信頼に応えたのだ。


 和田氏とはソフトバンク時代のチームメイトでもあり、ここ数年は和田氏主催の自主トレにも参加を続けている。引退はどのように伝えられたのか。

「自主トレメンバーのグループLINEがあるんですよ。そこに一斉送信で。辞める旨と自主トレは行くから、という内容の文面でした」

 1月の自主トレにはトレーニングというより、教えに来るということらしい。シーズン終わって、日本シリーズも終わってからの決断。当然誰にも言えない状況の中、すでに大竹を含めて多くの門下生が「来年もお願いします」と参加を志願していた。

「辞めるからできないよ、とは言えなかったみたいな。そういうところを責任持ってされるのがすごいですよね」

 40歳を超えても現役を続けた和田氏について、大竹は尊敬の眼差しを向ける。

「やっぱり練習量はすごいですよ。質も高いし、なんとなくやる練習がない。3回自主トレを一緒にして、それは感じます。あとは『トレーニングをしていって正しい動きができたら、ピッチングフォームが勝手に変わる』という考え方。僕も正直『投げ方をこうした方がいい』というのは、ほぼ言われていないです」

 トレーニングへの姿勢も、理論も学ぶべきことが多い。実際の投球を参加者みんなで見て、和田氏のフィードバックを受ける機会もあるそうだ。


 岡田前監督、和田氏、そして青木宣親氏と、図らずとも母校の大先輩が同じタイミングでグラウンドから離れることになった。そのことへの寂しさはないのだろうか。

「それよりも今現役の早稲田卒で引き継いでというか、頑張っていこうというか。その方が強いかもしれませんね」

 大竹の3学年上から3学年下まで、一緒に野球をやってきた早稲田大OBは全員プロの世界で生き残っている。本人含めて総勢9人の一大勢力だ。

 彼らと1年でも長く現役で――。それが大先輩たちへのはなむけとなる。

[取材・構成:尾張はじめ]

 

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