日本一に輝き、ナインとともに記念撮影に応じる南場オーナー(前列中央右)。直後にはビールかけにも参加して話題となった。(C)産経新聞社何よりも人を惹きつける人柄「ファンの皆さま、街の皆様とベイスターズの日本一を、心から“一緒”に誇りに思い、そ…

日本一に輝き、ナインとともに記念撮影に応じる南場オーナー(前列中央右)。直後にはビールかけにも参加して話題となった。(C)産経新聞社

何よりも人を惹きつける人柄

「ファンの皆さま、街の皆様とベイスターズの日本一を、心から“一緒”に誇りに思い、そして喜びを分かち合いたいと思います」

 2015年からDeNAベイスターズのオーナーを務める南場智子氏は日本一を祝すパレードで、笑顔を浮かべながら、そう語った。

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 さらに「来年こそはリーグ優勝からの日本一、またここに戻ってこられるように“一緒”に頑張っていきましょう。皆さまベイスターズはずっと挑戦者です。どうか“一緒”に戦って、“一緒”に楽しんでいただけたらと思います」とも続ける。何度も「一緒」を口にするオーナーの言葉に、目線はファンと同じなのだと、改めて実感した。

 DeNA創業者で、現在も経営者として舵を取る役職にいる南場オーナー。その日常が多忙を極めていることは想像に難しくない。それでもレギュラーシーズン中には高頻度で現地観戦をし、Xでも「ポストシーズン全部現地!」と公言。“オーナー兼ファンの二刀流”としてファンや関係者から認知される彼女の『ベイスターズ愛』は本物である。

 実際、パレードでは三浦大輔監督とともに先頭を走るオープンカーに乗り込み、沿道からは、敬意をこめて「ママ」と何度も声が飛ぶなど、ファンからの絶大なる人気を垣間見られた。

 その慕われ方はファンだけではなく、チーム内でも沸き起こっている。とりわけ有名なのは、24年の4月中旬にDeNAに復帰した筒香嘉智の言葉だ。

「アメリカに2020年に行ったときから、毎年僕の心を動かされるような言葉を南場オーナーにかけていただき本当に感謝しています。その南場オーナーが目標に掲げている優勝のピースになれるように一生懸命頑張りたい」

 尊敬の言葉を口にするのは主砲だけではない。24年に中継ぎとしてブレイクした坂本裕哉は「やっぱりオーナーさんの存在感は、すごく選手たちにもいい影響を与えてくださる方です」と断言。さらに24年から加入した中川颯も「最初にお会いしたときはキャンプのとき空港からのバス。そこで隣になってめちゃくちゃ緊張しました」としながらも、ビールかけでは「誰かが先にかけていたので、便乗してかけました」とニヤリと笑う。

「(日本一の)ゲームセットになってマウンドで集まって胴上げ終わった後、みんなでハイタッチした時に南場さんがいらっしゃって、その時に『横浜に来て良かったね』と言っていただきました。本当に、すごい超エリートなのは存じ上げてます。ですけど、オーナーはすごい気さくな方。『みんなのお母さん』と言われてると思いますけど、本当にそんな感じですね」

 何よりも人柄が人を惹きつける。コロナ禍のオンラインイベント『突撃!ヤスアキマイク』で、オーナーと異例の共演を果たして様々なエピソードを引き出した山﨑康晃も「ファンの方もほんと慕ってくださってますよね。その姿を僕らも拝見しますし、みんなママ、ママって言ってますよね。そこは僕も嬉しく思いますよ」と頷く。

 また、山﨑は距離感の近さにありがたみを口にする。

「幸せ者だと思いますよ、僕らはほんとに。よそのチームがどういう状況なのか、どういう関係性なのかわからないですけど、あれだけ選手の応援歌を覚えたり、背中を押してくださってくれたり、挨拶しに来てくれたり……。本来は会話することもない立場だと思うのですが、アットホームっていうか、DeNAらしい関係性なのかなって思います。南場さん自身の人柄に触れることも結構多いですしね」

優勝パレードでは三浦監督とともに先陣を切った南場オーナー。(C)産経新聞社

経営者としてシビアな一面も

 現役時代から南場オーナーを知る三浦監督は、「お話しはよくさせてもらっていますしね。全然緊張することもなく、楽しかったですよ」とパレードを回想。その上で、親近感を抱かせるコミュニケーション術を称えた。

「すごく身近にいていただいているオーナーさんですね。球場にも応援しに来ていただいていますし、顔を合わす機会も多いですしね。経営者としても、すごくいろいろなアドバイスもしていただいていますけど、話しづらい存在ではなく、自分が言うのもなんですけど、本当に身近な存在のオーナーの方ですね。選手もそうですし、スタッフにも来られたときには声をかけていただけますしね。パワーをもらっていますよ」

 もっとも、経営者としてシビアな一面もある。南場オーナーは毎年恒例のルーキーによる本社訪問の際に「プロフェッショナルキャリアとは責任を果たすことが大前提。プロのステージに乗っかることは消えない記録の始まり」とアマとの違いを強調。そこには「プロ野球というステージが存在するのはファンがいるから。ファンへの感謝は最も重要」という揺るぎないポリシーがある。

 チームは「暗黒期」と揶揄されもしたTBS時代から見違えるほどの進化を見せている。そこにはベンチャーから一流企業に育てたDeNA創設者でもある南場智子オーナーのファンとともに分かち合う精神が、全体に浸透していった証左が見て取れる。

 強さとしなやかさを兼ね備え、“最強のファン”でもある。そんな南場オーナーの下、来季こそ待望の完全優勝に向け、DeNAベイスターズは“挑戦”し続ける。

[取材・文/萩原孝弘]

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