第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)が1月5日(日)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する。昨夏のインターハイでベスト4入りした鎮西高(熊本)のキャプテンは、マネジャーの香本夏輝。コートには立てなくても、憧れのキャプテンの言…
第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)が1月5日(日)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する。昨夏のインターハイでベスト4入りした鎮西高(熊本)のキャプテンは、マネジャーの香本夏輝。コートには立てなくても、憧れのキャプテンの言葉を胸に名門校を引っ張ってきた
香本夏輝(鎮西高)
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「責任者」として
畑野久雄監督からも厚い信頼
鎮西高にとって、背番号「3」は特別な意味を持つ。鍬田憲伸(サントリー ※ヴォレアスにレンタル移籍中)、水町泰杜(WD名古屋)、そして舛本颯真(中央大2年)ら、近年はエースがつけることが多かったキャプテンナンバーだ。だが、1、2年生が得点源を務める今季、その伝統の番号はゲームキャプテンでリベロの栗原陽が背負う。チームキャプテンの香本夏輝はというと、マネジャーとして畑野久雄監督の隣で戦況を見つめてきた。
ふだんは身長160㎝の小柄なセッター。「全盛期」と語る中学3年生時のJOC杯では、自身のトスでベスト4に導いた。「最後はエースバレー。それがかっこよくて」。歴代の先輩たちに憧れて鎮西高の門をたたいたが、入学後からベンチに入れない日々が続いた。「レベルの違いを痛感させられて。とにかく悔しかったです」と唇をかみながらも、めげずに食らいつく。「身長が理由で(メンバーに)入れないのがいちばん嫌」とコツコツと練習に取り組んだ。
その姿勢を見ていたのが、当時のキャプテンで、絶対的エースとして活躍していた舛本だった。「一緒に頑張るぞ」と声をかけられ、自主練習のペアに。よく取り組んだのが、舛本が強化していたレシーブ練習だ。仲間たちが帰り、日が暮れても練習は続く。弁当を買って腹ごしらえをし、汗を流したのはいい思い出だ。
「ほぼ毎日一緒でした。好きでしたね、(舛本)颯真さん(笑) あそこまで努力する人はおらんなと思って。初めてあんな人と出会って、自分もああなりたいと思いました」
高校3年生時の舛本(中央)の隣には、香本の姿が。「颯真さんの引退が高校生活でいちばん悲しかった」と笑うほど、香本にとって大きな存在だった
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舛本の卒業後もコートで輝くことはできなかったが、畑野監督にもその取り組みを評価された。最高学年を前に、ベンチ外の選手では異例のキャプテンに。指揮官からは「気が利きますよ。リーダーシップがあるし、テキパキやりますから」とチームの「責任者」として信頼を寄せられる。香本は「最初はうれしかったですが、今までキャプテンはエースの方が務めていたので。荷が重すぎて、やっていけるかなと思いました」と不安を募らせるなか、背中を押してくれたのは、またも尊敬するキャプテンだった。
「試合には出れんけど、お前ならできる」
そして、舛本らしい言葉がもう一つ。
「誰よりも努力しろ」
コートに立てなくても、できることはある。仲間たちに球出しをしたあとも、香本は「頑張っている姿はあまり見せたくない」と黙々とトレーニング。「颯真さんも1人で残ってトレーニングをしていたので。期待を裏切らないようにしたい」と妥協しない。後輩たちからの信頼は厚く、2年生でエースの一角を担う岩下将大は、「(香本)夏輝さんは練習や試合で声をかけてくれることが多くて。励ましの言葉や気が引き締まる言葉もくださるので、心の支えになっています」と感謝する。
チームの先頭に立って練習を引っ張ってきた
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3年連続でセンターコートに進出した昨年度の春高は、マネジャーとしてベンチに入った。間近で感じた熱気は、強く脳裏に刻まれている。
「優勝するチームは、懸けている思いが違うな、って。もう1回あそこで、センターコートでやりたい」
その思いで仲間への声かけも欠かさず、今年度はインターハイでベスト4入り。リベロの栗原、ミドルブロッカーの池松青汰以外のレギュラーは1、2年生で、伸びしろは大きい。
「自分からミスをせずに、練習してきたことをきちんとすれば負ける要素は一つもないと思うので。気を使って『3年生のために』とは思わずに、どんどん自分たちらしいプレーをしてほしいです」
「夏輝さんのために」。後輩たちがそう思いたくなる取り組みをしてきたのは、紛れもなく香本だ。
昨年度の春高で、マネジャーとしてベンチに入りした香本(右から2番目。左端が畑野監督、右端が宮迫竜司コーチ)
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香本夏輝
こうもと・なつき/3年/身長160㎝/最高到達点300㎝/山鹿中(熊本)/セッター
舛本(中央大2年)から香本へ
「後悔しないかたちで終われるように」
今季から中央大でレギュラーをつかみ、春季リーグ戦、東日本インカレ優勝に貢献した舛本にとっても、香本との思い出が色あせることはない。当時、舛本にとって香本は2学年下で、ましてやキャプテンとメンバー外。距離があってもおかしくはなかったが、舛本は「いちばんまじめに取り組む子で、性格もよくて。そういう子と一緒にプレーしたい」と練習に誘った。
エースとして徹底的にサーブで狙われても、崩れない。それは香本と汗を流した日々が大きかった。「あのおかげでプレーがだいぶよくなったので、感謝しています」。卒業後も連絡を欠かさない後輩へ、「コートに入りたくて、キャプテンとしていろいろ悩んだと思います。最後はみんなをサポートして、自分が後悔しない、いいかたちで終われるようにしてほしい」と優しい眼差しで語った。
舛本颯真(中央大)
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文/田中風太(編集部)
写真/中川和泉(NBP)、編集部
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