WWEスーパースター中邑真輔が、丸2年ぶりにプロレスリング・ノアに参戦。1.1日本武道館『ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR”2025』で、元UFCファイターで前GHCナショナル王者の佐々木憂流迦と対戦した…

 WWEスーパースター中邑真輔が、丸2年ぶりにプロレスリング・ノアに参戦。1.1日本武道館『ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR”2025』で、元UFCファイターで前GHCナショナル王者の佐々木憂流迦と対戦した。

 中邑と憂流迦は、在籍した時代は違えどかつて同じ総合格闘技の道場、和術慧舟會に所属した先輩後輩の間柄。中邑は、憂流迦が格闘家として駆け出しの時代から目をかけ、プロレス入りも勧めていた。 
 
 そして憂流迦は2年前の23年1.1日本武道館で行われたグレート・ムタvs中邑真輔を生で観たことで衝撃を受けて、プロレスラーへの本格転身を決意。昨年の1.2有明アリーナで正式デビューをはたすと、類稀な才能を発揮して7.13日本武道館ではNOAHナンバー2のベルトであるGHCナショナル王座を奪取。そして今回、中邑真輔戦というビッグチャンスをつかんだ。

 憂流迦にとってはプロレス正式デビューからわずか1年足らずで実現した、憧れの兄貴分である中邑真輔との夢の一戦。対戦決定後は想いの大きさから“迷い”や“苦悩”も口にしていたが、中邑はこの日の武道館で、そんな憂流迦の甘美な想いを粉々に打ち砕き、厳しく突き放してみせた。

 試合は入場シーンから完全に中邑真輔ワールドだった。ほら貝と和太鼓の生演奏から、和楽器ニューアレンジ「ザ・ライジングサン」のテーマ曲に乗って、おどろおどろしい武者の兜を被り入場。ガウンを脱ぐと白装束、腰にはWWE US王座のチャンピオンベルトが巻かれている。リングに上がると、WWEと同じようにベルトをマットに置き座礼。早くも空気を支配する。

 そしてゴング。序盤は緊張感あるグラウンドレスリングの展開。寝技には絶対の自信を持つ元UFCファイターの憂流迦がアキレス腱固めで意地のファーストエスケープを奪うが、その後は中邑の独壇場となる。

 場外戦でペースを握ると、リングに戻ろうとする憂流迦のボディに強烈な蹴り。さらにエルボー、ミドルキック、顔面への前蹴りと、容赦なく痛めつけていく。

 憂流迦もレッグラリアットやジャーマンスープレックスで反撃を試みるが単発。得意のスリーパーにいくも、中邑はフライングメイヤーでやすやすと外し、キッチンシンクから顔面へのストンピング連打。憂流迦の生の感情を引き出そうとするかのように、いたぶっていく。
 
 そしてリバース・パワースラムから仕上げのキンシャサにいこうとするが、憂流迦は必死にかわしておんぶ式の胴絞めスリーパー。これが抜け出されると、中邑の奥の手ランドスライド狙いを見事に三角絞めで切り返すが、中邑は憂流迦の顔面に黒の毒霧を吹きかけて脱出。

 そのままスタイルズ・クラッシュのような形でマットに叩きつけて、最後は後頭部へのキンシャサから、正面からの正調キンシャサを完璧に決めて3カウント。終わってみれば、中邑真輔の完勝だった。

 試合後、バックステージでのコメントでも「(憂流迦は)十分恥かいたでしょうが。木っ端微塵に砕け散った自分自身をどうやってかき集めて自分を作るか。まあ、憂流迦本人なんで知ったこっちゃないです」と突き放した中邑真輔。

 この試合が終わるとすぐにアメリカに戻り、日本時間の1月4日のSMACK DOWNではUS王者として長年のライバル、アンドラデとの一騎打ちが控えている。

 今回の試合は、「いまアメリカで孤軍奮闘、どうにかこうにかもがき苦しみ、生きながらえてる」と語る中邑から憂流迦への「もっともがいて自分の力で上がってきてみろ」という厳しいエールだったのか。

 2025年、夢の実現からどん底に突き落とされながらこの一戦を糧とできるかどうかは、佐々木憂流迦自身にかかっている。

文/堀江ガンツ