大竹のスローボールの原点は小学校時代にあるという(C)産経新聞社 移籍2年目を終えた阪神・大竹耕太郎は、どんなシーズンを過ごしたのか。全3回に分けてインタビューの模様をお伝えしていく。 第2回は超スローボールについて。大竹の代名詞の一つで、…
大竹のスローボールの原点は小学校時代にあるという(C)産経新聞社
移籍2年目を終えた阪神・大竹耕太郎は、どんなシーズンを過ごしたのか。全3回に分けてインタビューの模様をお伝えしていく。
第2回は超スローボールについて。大竹の代名詞の一つで、各所で話題を呼ぶ“魔球”を掘り下げる。
【関連記事】大竹耕太郎が2年目で築いた“基準”と強くなった「2、3番目」の悔しさ 変化の3年目は「シンプルに優勝したい、それだけ」
■
これまで「投げない時期もあった」というが、基本的に大竹の持ち球の中に超スローボールは入り続けている。
原型を編み出したのは、小学4年生の時。
「(少年野球が)変化球禁止だったんですよ。どうやって三振を取るかってなったら、速い真っすぐと遅いストレートを投げるしかなかった。それで、めっちゃ三振取ってました」
本人の言う「遅いストレート」が今に続いていくのだ。次のターニングポイントになったのは済々黌高時代、2年夏のことだった。
「高校2年の甲子園に出た時、県大会の準決勝が九州学院戦でした。その時の九州学院は、春の選抜でベスト8まで進んでいるぐらい強かったんですよね。秋の大会でも負けていたし、『夏は絶対に九学倒すぞ!』と意気込んで考えたのが“スローボール作戦”でした」
準々決勝までは1球も投げなかったスローボール。ライバルとの決戦で多投した結果、大竹は見事に完封勝利をマーク。チームはそのまま勢いに乗って、甲子園出場を果たした。
■
大竹はどんな感覚で超スローボールを投げているのだろうか。
「スローボールに関しては、同じフォームで投げようという意識は一切ないです」
興味深い考えだ。
「1試合100球投げるとしたら、100球全部同じフォームで投げようみたいな。そう、みんな思ってるじゃないですか。なんか僕、これが常識みたいな、別に野球に限らず世の中のこと全てですけど『それ本当にいるんかな?』とかめっちゃ考えるタイプなんです。フォームとかボールに関しても、みんな同じフォームで同じような変化球を投げるよりも、1球1球曲がり方が違う方が打ちにくくなるのかなって。フォームも極端に言えば100種類、100球投げた方が打ちにくくないかな、みたいな発想もあります」
確かにそうかもしれない。打者は投手の投球フォームやボールの球速、曲がり幅等に合わせてスイングを仕掛けていく。機械のように毎球同じフォーム、同じスピードならば、プロの打者は簡単にタイミングを合わせられる。大竹の指摘は「投手vs.打者」の真理を説いていると思う。
■
次に、超スローボールはどういうシチュエーションで投げるのだろうか。自分のなかで余裕がある時に投げるものなのか?
「余裕があるから投げられる、という順序立てが従来だったんですけど、『それを投げるから余裕が生まれる』順序立てでもいいかなって思い始めました。だから、余裕がない時こそああいうのを投げる。遊び、あくまで球遊びっていう感覚。よく聞かれるんですけど、大して考えて投げてないですよね。そんな深いこと考えてないし、リリースするまで投げるか決めていない時もある」
これでは、相手もなかなか反応できないものだ。自分だってギリギリまで投げるか決めていないのだから。
「なんとなく投げる、“なんとなく”を大事にします。なので、具体的な理由とかじゃなくて、なんか『今だ』っていうのを。そういうセンサーみたいなのは大事にしたいですよね。やっぱり動物なので、対戦相手も自分も」
■
バッテリーを組む坂本誠志郎からは冗談混じりに「(捕球するまでに)瞬き3回したわ」と言われるそう。投手陣では村上頌樹や岩崎優が時折スローボールを投げている。
「結構投げる人増えましたよね。村上とはいつもそういう話をしています。他チームだと山崎伊織(巨人)が投げてますよね」
それでも、投手にとって遅い球を投げるのは勇気がいるものだ。現代は特に投球のパフォーマンスを上げ、球速を上げていくことに注力する者が多い。
「そこが多分人とズレてるんでしょうね、僕は。沖縄キャンプとかでバッティング練習するんですけど、速いマシンを打つ方が飛ぶじゃないですか。打撃投手の人にフワッと投げてもらった球って、マジで外野を超えないんですよ。(遅い球は)自分が打っても飛ばないって分かるから、むしろ速く投げる方が怖いです」
ここでも大竹のユニークさが際立つ。そして、納得する答えを持っている。
「平均的にみんなよりちょっといいぐらいだったら試合で投げられないし、長くできない。これは負けないみたいなのがそれぞれあるから、多分1軍で投げてると思う。スローボールも感覚でやってるので、投げない理由は特に見つからないかな」
2025年も超スローボールで魅了する姿を楽しみにしたい。
[取材・構成:尾張はじめ]
【関連記事】【阪神】若き主砲、佐藤輝明 メジャー移籍希望初表明も 求められる「指標」「改善ポイント」とは
【関連記事】米球界で図抜けた奪三振力を誇った右腕デュプランティアは何者か おぼろげに見えてきた藤川阪神の“助っ人構想”
【関連記事】「難しい選手になりつつある」甲斐移籍に伴う巨人の人的補償、プロテクトリスト28人を球界OBが徹底予想 「55番」が外れる可能性も?