2024年にあと一歩と迫ったJ1王者をつかむべき、25年シーズンをスタートさせるサンフレッチェ広島。24年限りで長年チ…

 2024年にあと一歩と迫ったJ1王者をつかむべき、25年シーズンをスタートさせるサンフレッチェ広島。24年限りで長年チームをけん引してきた青山敏弘が現役引退し、11年間在籍した柏好文も退団。今季8ゴールのピエロス・ソティリウ、2得点のドゥグラス・ヴィエイラ、これまでジョーカーとしていい働きを見せたエゼキエウの外国人選手3人も契約満了となり、新たな戦力を加えて最強軍団構築を目指すことになる。

 現時点でハッキリしているのは、早稲田大学のGKヒル袈依廉、明治大学のFW中村草太の両大卒新人の加入などだ。これまでも満田誠、中野就斗のように大卒ルーキーがブレイクしてきたが、同じ系譜を彼らが歩んでくれれば理想的だ。
 ただ、それだけで過酷なシーズンを戦い抜けないのも事実。まず昨夏に加わったトルガイ・アルスラン、ゴンサロ・パシエンシア、川辺駿の3人がシーズン頭からフル稼働できるのは朗報だ。
 特に川辺は青山から背番号6を託されることが決まっていて、広島の大黒柱としてチームをけん引すべき存在だ。スイス1部・グラスホッパー、ベルギー1部・スタンダール・リエージュでの国際経験を得て、単にボールをさばくだけでなく、3列目からトップに攻め上がる推進力と決定力に磨きをかけた。
 24年はそれを発揮しきれていなかったところがあるため、今季は持てる力を全て出し切らなければいけない。左利きでパンチ力のある田中聡(湘南)の加入が発表されたことで、彼と川辺がボランチを結成すれば、攻撃迫力は確実に増す。そこは期待大だ。

■FW“3本柱”で全員が2ケタを

 得点力という部分では、加藤陸次樹、パシエンシアに加えて、ジュビロ磐田からの加入が発表されたジャーメイン良の3本柱で全員が2ケタを取るくらいの迫力がほしい。加藤は今季9点で2ケタにあと一歩届かなかったが、まだ伸びしろのある選手。スキッベ監督も「今年伸びた選手」と評価していたが、もう一段階のステップアップが必要。いつまでも「大橋(裕紀=ブラックバーン)の抜けた穴が大きい」と指揮官に言われないように、FW陣には奮起を求めたいものである。
 それ以外の人材に目を向けると、昨年に伸び悩みが見られた満田誠、若手の中島洋太朗、井上愛簾らにもチームを押し上げてほしいところ。とりわけ3ゴールに終わった満田は不完全燃焼感が強かったに違いない。一時は日本代表入りしたこともある実力者だけに、このレベルで足踏みしているわけにはいかない。2024年のパフォーマンスをしっかりと振り返ったうえで、2025年に勝負をかけるべきだ。

■広島の攻守のカギと言えるサイドは

 広島の攻守のカギと言えるサイドに関しては、東俊希新井直人、中野、志知孝明に加えて、実力者の菅大輝の加入が発表されており、さまざまな組み合わせが可能になりそうだ。左利きでキッカーも務めている東の能力の高さは評価されるべきだが、彼が疲れてくると左サイドが停滞するというケースも散見された。そこに菅が入ることで、違った色合いをもたらせるし、チームの攻守両面が活性化されるだろう。
 攻守両面でバランスのいい陣容になりそうな広島。あとは波のない戦い方を確立させ、ここ一番で勝ち切れる勝負強さをどう身に着けるかだ。そこがスキッベ体制の広島に一番足りないところかもしれない。それさえ克服できれば、ここから黄金期を築けそうな予感もある。24年ラストに号泣した佐々木翔が今度こそシャーレを掲げる姿を楽しみに待ちたいものである。
(取材・文/元川悦子)

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