2024年のウインターカップをふと思い出すとき、どんなチームが頭に浮かぶだろうか。 真っ先に浮かぶのは、大会3連覇を成し遂げ…

 2024年のウインターカップをふと思い出すとき、どんなチームが頭に浮かぶだろうか。

 真っ先に浮かぶのは、大会3連覇を成し遂げた京都精華学園高校(京都府)や3年ぶりの日本一に輝いた福岡大学附属大濠高校(福岡県)かもしれない。たった5人で挑んだ和歌山南陵(和歌山県)の勇姿も見る者の心を大いに動かした。

 今年の冬も多くのチームがたくさんのドラマを創り出したが、鳥取城北高校(鳥取県)もその中の1つに挙げられるだろう。

 決勝戦は20点差をつけられて敗れた。けれど、1回戦の県立黒沢尻工業高校(岩手県)を87−47で勝利すると、準々決勝でも40点差の圧勝。初進出を果たした準決勝では昨年の優勝校である福岡第一高校(福岡県)を81-58で退けた。

 合計6試合。破竹の勢いで決勝戦まで駆け上がり、鳥取県勢初となる準優勝で『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会』を終えた。

「去年、うちに練習ゲームに来てくれたときから、下級生中心でありながらも全く物怖じせずに向かってきてくれました。うちのホームコートにも関わらず結構いい試合になりましたので『これはいいチームになるな』とは思っていました」

 そう明かすのは、福大大濠の片峯聡太コーチだ。福大大濠は今回の決勝戦だけでなく、今夏のインターハイ準々決勝では10点差で敗れた相手だが、鳥取城北に自信を芽生えさせてくれたチームでもある。

「負けてはしまいましたが、インターハイで大濠さんとああいうゲームができたことで『自分たちもできる』という自信になりました。チームにとって大きなターニングポイントだったのかなと思います」

 鳥取城北の河上貴博コーチは明かす。キャプテンの蓑原歩(3年)も異口同音に話した。

「僕たちは中国ブロックで優勝はしていたんですけど、全国でどれだけできるのかは正直わからなかったです。名門と言える大濠さんと(インターハイで)あそこまでの試合ができて、やっぱり勝ちたかったですけど、自分たちの誇りにもなりました」

 夏の雪辱を果たすことはできなかった。それでも、全国2位という成績は堂々と胸を張っていい。

「もちろん勝ちたかったですが、彼らは大きな快挙を成し遂げてくれました。 『鳥取県は弱い』とずっと周りから言われきた中で『鳥取を強くしたい』という思いがありましたし、この大会で少しでもそのイメージを変えれたのは私としてもうれしく思います」(河上コーチ)

 鳥取県で生まれ育った蓑原は、躍進の1年を「本当に楽しくて、あっという間に過ぎてしまった」と振り返り、「悔しいですけど、やり切りました。胸を張って鳥取に帰りたいと思います」と頬を緩ませた。

「個性豊かなチーム」(蓑原)は、豊村豪仁、新美鯉星、ハロルド アズカの2年生3人がスタメンを担った。チーム史上最高成績を収めて卒業するキャプテンは、こうエールを送る。

「キャプテンとしても3年生としても最後勝たせてあげられなかったのは後悔が残りますけど、本当に頼もしい後輩たちなので彼らなら必ず日本一を取ってくれると思います」

 年明けには福⼤⼤濠、福岡第一などが集うカップ戦が控えている。鳥取城北が高校バスケの勢力図を塗り替え、強豪校と呼ばれる日はそう遠くないだろう。

 2024年の大会を彩った鳥取城北のことは、少なくても冬が来てウインターカップは始まれば、きっと何度も思い出すはずだ。

文=小沼克年