2026年の北中米W杯を狙う森保ジャパンのボランチは本職が4枚、そこにポリバレントな選手を加えて構成することが想定でき…
2026年の北中米W杯を狙う森保ジャパンのボランチは本職が4枚、そこにポリバレントな選手を加えて構成することが想定できる。キャプテンの遠藤航(リバプール)と戦術的な軸である守田英正(スポルティング)は順当というより、鉄板と言っていい。もちろんコンディションやクラブでの境遇も影響してくるが、よほどのアクシデントでもない限り、メンバー入りは確実だろう。
ただ、2022年のカタール大会の時は遠藤が頭部のアクシデント、守田が足に不安を抱えた状態でチームに合流し、当時の森保監督も難しい判断を迫られた。田中碧(リーズ)が新天地のイングランドで評価を高めていることは心強いが、ウイングバックや2シャドーのオプションをブラッシュアップしていく意味でも、残り1年半でボランチが盤石であることが生命線になる。
遠藤、守田、田中の三枚に誰が加わるかが、ボランチの注目点だろう。ここ2回のシリーズで招集されている藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)は4枚目の第一候補だが、同じベルギーで経験を積む伊藤敦樹(ヘント)も予選突破が決まる来年3月のシリーズや”消化試合”になる可能性の高い6月シリーズで招集される可能性はありそうだ。
ドイツで評価が急上昇中の佐野海舟(マインツ)はピッチ外の事情もあり、森保監督の評価だけでは代表復帰は難しいだろう。面白い存在としては左利きの高嶺朋樹(コルトレイク)の名前をあげたいが、年齢的なバランスを考えると、佐野航大(NECナイメヘン)や福井太智(アロウカ)、松木玖生(ギョズテペSK)など、さらに若い世代の台頭にも期待したいところだ。
■南野拓実と久保建英は“当確”で、旗手怜央は
先述した佐野航、福井、松木にも関係してくるが、ボランチとシャドーのポリバレントとしては鎌田大地(クリスタル・パレス)が有力だ。旗手怜央(セルティック)も現在の”森保ジャパン”では2シャドーで起用されているが、ボランチもこなせることは選考での強みになるだろう。
2シャドーに目を向けると、最終予選の全試合でスタメン起用されている南野拓実(モナコ)は戦術的にも外せない存在と言える。その南野ほど起用法が安定している訳ではないが、久保建英(レアル・ソシエダ)は年齢的にも充実期に入ってきており、スペインのビッグクラブ、もしくはプレミアリーグの強豪などに、ステップアップも秒読みと見られるだけに、本大会のメンバー入りは順当だろう。
3ー4ー2ー1の継続を想定すると、2列目は南野と久保だけがスペシャリストのような存在で、残りはボランチ、ウイングバック、1トップとのポリバレントな起用が想定される。その中で言うと鎌田は2列目がメイン、ボランチがオプションになっているが、もし2列目のタレントが充実してくれば、ボランチの割合が高くなっていくかもしれない。
旗手に関しては残り1年半で、もし移籍があった場合、そこでの起用法が森保監督のチョイスにも少なからず影響しそうだ。2シャドーのスペシャリストという基準では、ポルトガルで5得点3アシストと活躍中の藤本寛也(ジル・ヴィセンテFC)が左利きのキッカーという意味でも、面白い存在になりうる。パリ五輪世代の台頭という意味では、森保監督も「強度の高いリーグ」と認めるチャンピオンシップ(イングランド2部)で奮闘中の斉藤光毅(クイーンズパーク・レンジャーズ)にも期待したい。
■再評価されるであろうWB
左右のウイングバックは攻撃的なキャラクターを揃えるが、三笘薫(ブライトン)、伊東純也(スタッド・ランス)、堂安律(フライブルク)は順当で、中村敬斗(スタッド・ランス)は限りなく順当に近い有力と見る。前田大然(セルティック)もFW、シャドーとの3ポジションで計算できるため、有力だろう。
ただ、攻撃的とは言いながら守備のスタンダードがハイレベルに求められるため、他のどのポジションよりもコンディションの見極めが必要だ。また世界と戦うにあたって、より守備的な選択を迫られる可能性もあり、この記事のDFのところで書いた通り、菅原由勢や橋岡大樹、関根大輝、現在は外れている毎熊晟矢など、サイドバックの選手が再評価される可能性もあるポジションだ。同じ流れで、4バック回帰も当然ありうる。
最終予選の中で上記の三笘、伊藤、堂安、中村、前田は全ての選手が2シャドーでも起用されており、彼らに関しては柔軟にシフトできる。そうは言っても3ー4ー2ー1を継続したほうが、例えば右なら伊東と堂安、左であれば三笘と中村を同時に起用することもできるため、森保監督としてもタレント力を生かした、豊富なオプションを考えていきやすい。攻撃的なウイングバックは現時点でも世界で戦えるメンバーが揃っており、新しい選手が割って入るのはかなり難しい。
そのため26人のリストに入れることはできなかったが、斉藤と同じくチャンピオンシップで奮闘する平河悠(ブリストル・シティ)はタイプ的にも、このポジションにピッタリの人材で、左右のサイドをこなせるという意味でも、競争に食い込んできてほしい一人だ。現在のメンバーにいないタイプという基準では、右サイドからの鋭いカットインを武器とする坂元達裕(コヴェントリー・シティ)も面白い。
■最も読みにくいFWの選考
FWは結果がダイレクトの評価につながるポジションだけに、1年半後の選考が最も読みにくい。
その中で上田綺世(フェイエノールト)と小川航基(NECナイメヘン)の二人がリードしているが、ドイツ1部で現在6得点を記録している町野修斗(キール)は十分に逆転のチャンスがある。上田と小川はポジションと役割の関係から二者択一になりがちだが、町野は185cmのサイズながらスピードもあり、前回の招集メンバーである大橋祐紀(ブラックバーン)と同じく、シャドーで稼働することも見込める。
古橋亨梧(セルティック)をどう組み込むかは”森保ジャパン”が世界で戦っていく1つのテーマになりそうだが、アウェー中国戦で少し明るい兆しが見られた。ただ、最終メンバーに入っていくには代表戦でも結果で示していく必要がある。ここからセルティックに留まり続けるか、イングランドのプレミアリーグにステップアップがあるのかどうかも鍵になりそうだ。
古橋の同僚である前田に関しては左ウイングバックが代表での第一ポジション、シャドーがオプションになりつつあるが、世界が相手となってくれば、抜群のスピードを最前線で生かすことも考えられる。怪我で離脱していた浅野拓磨(マジョルカ)も、すでにクラブではスタメン復帰を果たしており、世界最高峰の1つとされるラ・リーガで得点を積み重ねることができれば、そのままアピールになるだろう。
ただ、クラブでは4ー4ー2のサイドハーフが主戦になっているため、2シャドーやウイングバックでの起用が、さらに増えていくかもしれない。
FWは本大会での選考が最も読みにくいポジションであり、それだけに若手の逆転も十分に可能だ。今回26人のリストに入れることはできないが、細谷真大(柏レイソル)などパリ五輪世代のFWはもちろん、ジュビロ磐田からベルギーの名門に完全移籍を果たした19歳の後藤啓介(アンデルレヒト)を筆頭に、慶應大学から卒業を待たずに海を渡った塩貝健人(NECナイメヘン)など、ロス五輪世代から一人でも多く、森保監督の目に留まるようなブレイクを期待して、来年の国内外での選手たちの躍動に期待していきたい。
(取材・文/河治良幸)