定岡正二×篠塚和典 スペシャル対談2024年と来季の巨人について 後編(前編:「予想していなかった」巨人のリーグ優勝と、2025年に残った課題を語り合った>>) 定岡正二と篠塚和典が語り合う、2024年と来季の巨人。後編では、2024年に巨…

定岡正二×篠塚和典 スペシャル対談

2024年と来季の巨人について 後編

(前編:「予想していなかった」巨人のリーグ優勝と、2025年に残った課題を語り合った>>)

 定岡正二と篠塚和典が語り合う、2024年と来季の巨人。後編では、2024年に巨人と阪神の優勝を分けたポイントや、阿部慎之助監督の采配、奮起に期待する若手野手などについて語った。

【動画で見る】定岡、篠塚が語る、2024年と来季の巨人↓↓↓

【阿部新監督の采配をどう見た?】

――2025年に向けて、巨人が最も警戒すべきチームは?

定岡 やっぱり阪神ですよ。

篠塚 日本一になったDeNAもそうですが、やっぱりそうですよね。


2024年にリーグ優勝した、阿部監督ら巨人の選手たち

 photo bu Sankei Visual

定岡 2024年シーズン終盤の巨人と阪神の甲子園での試合(9月23日)で、坂本勇人が代打で先制タイムリーを打ったじゃないですか。坂本は前日の試合で、3度の得点圏で凡退して先発を外れていたわけですが、阿部慎之助監督が代打で起用して、その期待に応えた。あの試合以降、阪神はちょっとズルズルと後退した印象で、巨人はリーグ優勝を大きく手繰り寄せましたよね。

 ただ、その差は本当に紙一重だったと思いますし、やっぱり阪神は警戒すべきチームですよ。DeNAにも頑張ってほしいけど、僕らは"伝統の一戦"に長く関わってきましたから、巨人と阪神が競り合うとやっぱり気分が盛り上がるし、楽しいんです。僕が現役時代、甲子園で投げる時はヤジもすごかったですが、それも含めて楽しかったですよ(笑)。

篠塚 OB目線なところもありますが、巨人と阪神はセ・リーグを盛り上げないといけない球団だと思っています。それと、先ほど話に出た勇人の代打起用は、阿部監督の現役時代の経験も生きていると思いますよ。ダメだった試合の翌日に、いい場面で使ったのは、自身の経験から勇人の気持ちがわかったからでしょう。

――阿部監督の選手起用や采配はどう見ていましたか?

定岡 坂本の代打起用もそうですが、ベテランと若手の使い方がうまいです。若手の浅野翔吾を積極的に先発で使い続けたり、いい場面でオコエ瑠偉を代打で起用したり。そういった選手がシーズン後半に頑張って、チームがジワジワ盛り上がっていったじゃないですか。

篠塚 そういう選手に対しては、「レギュラーというわけではないけど、ここでやってくれればいい」という感覚があるんでしょうね。

定岡 あと、阿部監督のなかには「悔しさ」もあったと思うんです。チームが前年Bクラスだったり、阪神に大きく負け越してしまったり......。勝てない悔しさを持っているからこそ、リーグ優勝までたどり着いた。昨季までは1点差で負けていたような試合を、2024年は引き分けに持ち込むことも多かったですよね。それは、悔しさが原動力になっていたと思います。

【2025年に活躍が期待の若手は?】

――2025年に向けて注目している選手は?

篠塚 浅野です。高卒3年目になりますしね。彼が打つと、ベンチが盛り上がるんですよ。「オレがオレが」というタイプではなく、謙虚さを持ちながらプレーしているので、そういうのを先輩たちが見ていて、すごくかわいがられている感じがします。ああいう選手は伸びていってほしいですね。

定岡 浅野って、スタンドから見ていても目立つよね。上背があるわけではないのに、彼の動きを見ていると「浅野だ!」っていう感じで目に入る。打てば球場が一段と盛り上がりますし、プロとしてエンターテインメントの観点から見ても、そういう"華"のようなものは大事ですから。彼が持って生まれたものかもしれません。

篠塚 コメントなどを聞いていてもしっかりしていますよね。一方で、心配なのは秋広優人です。

定岡 彼は(松井秀喜も背負った)背番号55をもらったじゃないですか。その影響もあるのか、ホームランバッターなのか中距離バッターなのか、そのあたりで迷っているんじゃないかと思うんです。シノはどう思う?

篠塚 本人の考えなのか、監督やコーチの考えもあると思うんですが、いずれにせよ迷っているんでしょうね。打ち方としては、インサイドは当たるんです。ただ、まったく外が当たらないじゃないですか。あれだけリーチがあれば、バットを出せばと自然と届くはずなんです。そういう課題を解消するためにバッティングを少し変えていかなければいけないし、ハングリー精神も必要かなと。

――来季は連覇、そして、2024年に果たせなかった日本一が目標になりますね。

篠塚 いろいろな選手を試すことも必要ですが、ある程度はポジションを固定して戦えることが理想ですね。そうしないと、本当の意味での"チームの強さ"は出てこないと思うんです。

定岡 ピッチャー陣は中継ぎと抑えが確立されています。先発は、(ボルチモア・オリオールズに移籍する)菅野智之の穴をどう埋めるか。そこは山﨑伊織や井上温大らのさらなる飛躍、それと戸郷翔征がもう少し白星を上積みできれば、プラスアルファが出てくると思います。なので、そこは心配していません。

 ただ、阪神やDeNAをはじめ、当然他チームも補強をしたりして、虎視眈々と優勝を狙っています。2025年も厳しい戦いになるでしょうけど、リーグ優勝できたことを自信にしてプレーしてほしいです。何よりも、球団創設90周年のシーズンでの優勝でしたが、そういうことができるチーム底力があると思っています。2025年は日本一になれることを願っていますし、応援していきますよ。

【プロフィール】

■定岡正二(さだおか・しょうじ)

1956年11月29日生まれ、鹿児島県出身。1974年のドラフト1位で巨人に入団。長嶋茂雄監督の指揮のものもと、1980年にプロ入り初勝利を挙げた。藤田元司監督が就任して最初のシーズンとなった1981年にはプロ入り初の2桁勝利(11勝)。翌年にはオールスターに初出場、自己最多の15勝を挙げ、同年代の江川卓や西本聖とともに"3本柱"として活躍した。通算成績51勝42敗3セーブ。現役引退後は、タレントとしても活躍の場を広げた。

■篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。