定岡正二×篠塚和典 スペシャル対談2024年と来季の巨人について 前編 2024年、大混戦を制して4年ぶりのセ・リーグ優勝を果たすも、クライマックスシリーズでDeNAに敗退した巨人。その戦いぶりや来季へ向けた課題を、球団OBはどう見ていたの…
定岡正二×篠塚和典 スペシャル対談
2024年と来季の巨人について 前編
2024年、大混戦を制して4年ぶりのセ・リーグ優勝を果たすも、クライマックスシリーズでDeNAに敗退した巨人。その戦いぶりや来季へ向けた課題を、球団OBはどう見ていたのか。
"芸術的"と称されたバットコントロールと守備で巨人の主力として活躍し、引退後は巨人のコーチを歴任した篠塚和典氏と、"甲子園のアイドル"として絶大な人気を誇り、巨人入団後は江川卓氏、西本聖氏とともに先発3本柱として活躍した定岡正二氏に語り合ってもらった。
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【菅野が抜ける投手陣はどうなる?】
――阿部慎之助監督は就任1年目でリーグ優勝を達成しましたが、この結果をおふたりは予想されていましたか?
篠塚和典(以下:篠塚) 予想はしていなかったです。前年まで2年連続でBクラス(ともに4位)だったということもありましたからね。なんとか2024年からチーム作りを進めて、まずはAクラスを目指し、3年目くらいに優勝を狙えるようなチームになれば、と思っていました。
正ショートとして期待された門脇だが、レギュラーをつかむには至らず
photo by Sankei Visual
定岡正二(以下:定岡) 僕もそう。阿部監督は就任1年目ということで、まずはAクラスに入ってくれればいいなと。なので、うれしい誤算じゃないですが、リーグ優勝できたことはOBとして本当にうれしかったですね。阿部監督の手腕が光りましたし、選手側も指揮官が代わると気持ちが変わりますから。
そうした気持ちの変化が、よくない方向に出てしまうと下位に低迷する可能性もあったわけですし、阿部監督が「苦しい1年だった」と振り返っていたように、選手も苦しかったと思います。そのなかで、ピッチャー中心に粘り強く戦った結果だと思います。
――思うように点が取れない時期もありましたが、ピッチャー陣の頑張りでしのいだ印象もあります。
篠塚 打線は"水物"ですから、こればかりはなかなか......。シーズンは長いので、どうしても選手個々の浮き沈みがありますしね。でも、誰かが打てない時に、ほかの状態がいい選手がカバーできればいい。クライマックスシリーズ(CS)のような短期決戦になると、チームとしていい状態を合わせていくのが難しかったりしますけどね。
――ピッチャー陣は来季に向けて、MLBのボルチモア・オリオールズに移籍が決まった菅野智之投手の穴を、いかに埋めていくかが大きな課題になりそうですね。
定岡 菅野は15勝を挙げ、リーグ優勝に一番貢献度しました。いなくなるのは痛いですが、山﨑伊織にしても井上温大にしても、若い投手たちが「チャンスだ」と思って奮起すると思いますし、奮起しないといけないと思います。
先ほども言ったように、今年はピッチャー陣がうまく回りました。先発だけじゃなく中継ぎも頑張ったし、大勢もケガで戦線を離脱することもありながら、しっかり抑えましたね。2023年は、中継ぎのピッチャーが「いつ出るだろう」「誰が出るんだろう」と迷いが生じていてはっきりしなかった印象がありました。それが2024年は、この展開だったら誰が出る、誰を出すというのがある程度明確になっていた。つまり、来季もピッチャー陣の運用がうまくいけば心配ないですし、菅野の穴が大きいと思ってはいけません。
――今オフには、元楽天の田中将大投手や、元中日のライデル・マルティネス投手らを獲得するなど、ストーブリーグをにぎわせましたね。
定岡 もちろん、実績があるピッチャーは来てくれればプラスになりますし、大きいですよ。だけど、巨人はリーグ優勝しているわけですし、もともと所属している選手たちのレベルアップやチームの底上げがよりいっそう大事だと思います。
【ルーキーも注目の正ショート争い】
――阿部監督は「優勝したからこそ補強が必要」と発言していましたね。
篠塚 現場にいる者からすれば、「戦力はあればあるほどいい」という考えも出てくるものです。補強は菅野の穴を多少なりとも埋めてくれたら、という狙いがあったでしょう。あとは野手。内外野ともに現状では不安な部分があるので、補強の余地はあると思います。
――2024年のドラフトでは、1位で石塚裕惺選手(花咲徳栄高)、2位で浦田俊輔選手(九州産業大)、3位で荒巻悠選手(上武大)ら、楽しみな内野手を指名しました。
篠塚 そうですね。課題はショート。門脇誠をどうするのか、という点です。ドラフトで内野手を多く獲ったのは、門脇に危機感を持たせる狙いもあったと思います。彼は守備はいいけど、もう少し打ってもらわないと困ります。たまに打っても、翌日はダメということが散見されるし、「また打ち始めてから使い続けよう」となっても、すぐにスランプになったり。そういう流れになってしまいますからね。なので、ルーキーたちがバッティングでいいところを見せれば、門脇の出番がなくなってしまう可能性もあるでしょう。
セカンドは長く固定できませんでしたが、2024年は吉川尚輝がよくやってくれました。来年も同じくらいか、もう少し成績を上乗せできれば、真のレギュラーになれると思います。
定岡 吉川は、まだ「レギュラーを確保した」とあぐらをかけるほどではないもんね。2024年のような活躍を続けていかないといけない。中山礼都もシーズン後半は打撃がよかったですし、ドラフトで獲った選手も含めて春季キャンプ、オープン戦と阿部監督は競争させると思いますし、過去の実績ではなく競争を勝ち抜いた選手を使っていくはず。僕らだって、現役の時は常に競争のなかでやっていましたから。競争が激しくなればチームが活性化しますし、まとまっていきます。
篠塚 問題は内野だけではないんですけどね。
定岡 そうだね。外野も、確固たるレギュラーと呼べるような選手が出てこないといけないね。
(後編:阿部慎之助監督の1年目の評価は? 明暗分かれた外野の若手たちも語った>>)
【プロフィール】
■定岡正二(さだおか・しょうじ)
1956年11月29日生まれ、鹿児島県出身。1974年のドラフト1位で巨人に入団。長嶋茂雄監督の指揮のものもと、1980年にプロ入り初勝利を挙げた。藤田元司監督が就任して最初のシーズンとなった1981年にはプロ入り初の2桁勝利(11勝)。翌年にはオールスターに初出場、自己最多の15勝を挙げ、同年代の江川卓や西本聖とともに"3本柱"として活躍した。通算成績51勝42敗3セーブ。現役引退後は、タレントとしても活躍の場を広げた。
■篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。