【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】◆血統で振り返るホープフルS【Pick Up】クロワデュノール:1着 母ライジングクロスはパークヒルS(英G2・芝14ハロン143ヤード)を勝ったステイヤー。ヨーロッパ各国とアメ…
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返るホープフルS
【Pick Up】クロワデュノール:1着
母ライジングクロスはパークヒルS(英G2・芝14ハロン143ヤード)を勝ったステイヤー。ヨーロッパ各国とアメリカを転戦し、他に英オークス2着、愛オークス3着という成績があります。海外のサイトによれば体高がわずか14.3ハンド(約145cm)しかなく、現役時代のレース映像を見てもその小ささは見て取れます。
ライジングクロスの産駒成績を見ると、オークス(GI)で4着と好走したアースライズ(父マンハッタンカフェ)を産んでいますが、同馬を含めて産駒のサイズは総じて小さめです。キタサンブラックが交配相手に選ばれたのは、体高が172cmと社台スタリオンステーション繋養の種牡馬のなかで最も背が高いことも理由のひとつでしょう。アースライズの父マンハッタンカフェも170cmの大型馬でした。
クロワデュノール自身は、父キタサンブラックのスラリとした体形を受け継ぎ、今回の馬体重は496kg。十分なサイズを備えています。
父キタサンブラックはすでにイクイノックス、ソールオリエンス、ウィルソンテソーロを出すなど長打力に定評があります。クロワデュノールはその列に加わる大物でしょう。母の父ケープクロスは、シーザスターズ、ゴールデンホーン、ウイジャボード(いずれもカルティエ賞年度代表馬)などの父で、大レース向きのスタミナと底力に定評があります。
新馬戦のラスト1000mは57秒3。のちに皐月賞を勝つことになるジオグリフと並ぶ、芝1800mの新馬戦における歴代最速タイムでした。その後、素質を順調に開花させ、無傷の3連勝でGI制覇。血統的に距離延長は歓迎で、東京芝2400mはぴったりです。
◆血統で振り返る東京大賞典
【Pick Up】フォーエバーヤング:1着
父リアルスティールはラヴズオンリーユー(BCフィリー&メアターフ、オークスなどGIを4勝)の全兄。「ディープインパクト×ストームキャット」という組み合わせは、キズナ、ダノンキングリー、サトノアラジンなど、国内外で9頭のGI馬を誕生させているニックスです。
キズナに比べると脚長でスラリとした馬体ですが、2代母モネヴァッシアが名種牡馬キングマンボ(キングカメハメハの父)の全妹で、母が「ストームキャット×ミスタープロスペクター」というアメリカ血統同士の組み合わせ。レーベンスティール(オールカマーなど重賞3勝)のような芝向きの活躍馬だけでなく、配合次第でダート向きの仔も出します。たとえば、フォーエバーヤングと同じ3歳馬のチカッパは、北海道スプリントCと東京盃を連勝し、JBCスプリントでハナ差2着。ダート短距離路線の頂点を狙える逸材です。同馬の母は生粋のダート血統で、母の父イントゥミスチーフは6年連続北米チャンピオンサイアーです。
フォーエバーヤングの母フォエヴァーダーリングは、ダート6.5ハロンの米G2サンタイネスSの勝ち馬。チカッパの母と同じくパワー型の血統です。母の父コングラッツはエーピーインディ系で、日本ダービー馬ダノンデサイルの母の父。3代母ローミンレイチェルはダート7ハロンの米GIバレリーナHの勝ち馬で、その直系子孫から年度代表馬ゼンノロブロイ、今年のBCクラシックを勝ったシエラレオーネなどが出ており活力満点です。
フォーエバーヤングにしろチカッパにしろ、ダート向きに出たリアルスティール産駒の強豪は、他の種牡馬と比べても能力の上限が高いという傾向が見て取れます。
フォーエバーヤングの妹ブラウンラチェットはアルテミスSの勝ち馬。その父キズナはリアルスティールと同じ「ディープインパクト×ストームキャット」なので、兄妹の血統構成は8分の7まで一緒です。ただ、キズナ産駒の牝馬は芝向きに出やすく、勝ち星の約4分の3が芝でのもの。牝馬のブラウンラチェットは芝にうまく適応しています。とはいえ、兄が偉大なダートホースですから、ダートで走らせたらやっぱり強かった、という可能性もあるでしょう。