2017年以来、2度目の栄冠を手にした、石井寛子 photo by Takahashi Manabu【レジェンドが7年ぶりの戴冠】 ガールズケイリンの歴史を切り拓いてきたレジェンドの鮮やかな復活優勝劇。12月29日に静岡競輪場で行なわれた「…
2017年以来、2度目の栄冠を手にした、石井寛子
photo by Takahashi Manabu
【レジェンドが7年ぶりの戴冠】
ガールズケイリンの歴史を切り拓いてきたレジェンドの鮮やかな復活優勝劇。12月29日に静岡競輪場で行なわれた「ガールズグランプリ2024」は石井寛子が制し、2017年以来、7年ぶり2度目の栄冠を手にした。
「2017年に優勝した時より、何倍も何倍もうれしくて。(デビュー以来)12年間、ずっと応援してくれている人が増えてきたので、そのパワーなんだなと思いました。勝ったというよりは応援してくれている方の気持ちに応えられたな、感謝だなと思っています」
レース後の記者会見で石井は静かに笑みを浮かべ、感謝の言葉を口にしながら喜びを表わした。
2012年から始まったガールズグランプリも今回で13回目の開催。「オールガールズクラシック」を制した児玉碧衣、「パールカップ」覇者の石井貴子、そして「競輪祭女子王座戦」を勝った佐藤水菜という3つのGⅠ開催の優勝者に加え、獲得賞金上位の坂口楓華、尾崎睦、尾方真生、石井寛子の計7名が出場した。なかでも昨年のグランプリ覇者で10月に行なわれた自転車競技トラック世界選手権女子ケイリンで日本選手史上初の金メダルを獲得していた佐藤が優勝候補の筆頭と目されていた。
16時30分に始まったレースは佐藤が先頭に立ち、尾崎、尾方、児玉、石井貴子、坂口、石井寛子の順で隊列が組まれた。残り2周に入り、第4コーナー付近からレースが動き出し、坂口が一気に先頭に出る。最後方にいた石井寛子もそれに反応した。最終周回バックストレッチは坂口、石井寛子、佐藤の順で入ると、そこから仕掛けたのが児玉。しかし佐藤が第3コーナー付近で児玉に合わせる形で踏み直すと、児玉は順位を上げられない。坂口が先頭のまま最後の直線に入ったが、石井寛子がここから伸びを見せ、トップでゴールラインを駆け抜けた。
最後のホームストレッチで先頭に立った石井(7番車・橙色)
photo by Takahashi Manabu
「これまでグランプリでは前で勝負して勝てないことが続いていたので、今年は後ろからの我慢のレースにしました。最終(周回の)バック(ストレッチ)で2番手になって、いい位置すぎて、この状態はなんだろうと。冷静にいつもどおり焦らず走れば、このまま突き抜けられるかなというイメージがありました」
狙い以上の位置取りに成功し、最後の直線で前に出る鮮やかな勝利だったが、優勝を実感したのはフィニッシュ後、かなりたってからだったようだ。
「ゴールしてからも夢のような感じだったので、『やった、優勝した』っていう感覚ではなかったです」
グランプリは11度目の出場。通算勝利数、通算優勝回数ともにガールズケイリントップの数字を誇る百戦錬磨の石井寛子でも、夢見心地になる優勝劇だった。
【2025年も感謝の気持ちを持って】
石井寛子は2013年5月にデビュー。その年からガールズグランプリには10年連続で出場と常にガールズケイリンのトップを争うところで戦い続けてきたが、昨年は次点で出場を逃している。
「昨年は8位の補欠でしたので、グランプリが行なわれた立川競輪場には行きました。私は10年間ずっと12月はグランプリに向けて練習をしていたんですが、それと同じように29日にピークを持っていけるようにトレーニングをして準備をしましたが、走ることなく帰ったんです」
再度のグランプリ出場へ向け、気持ちを切り替えて臨んだ今季。1月に前人未到のガールズケイリン600勝を成し遂げるなど好調だったものの、夏にかけて一時、調子を落とした。だが、9月からは再度、勝利を重ねることに成功。GⅠのタイトルは手にできなかったが、賞金ランキング6位の成績を収め、最高峰の舞台に戻ってきた。
石井は優勝会見で感謝の言葉を口にした
photo by Takahashi Manabu
「昨年はグランプリに出られませんでしたが、そこからの1年も応援していただきました。こういう形で(その応援に)応えられて、ファンの方たちも喜んでもらえていると思うので、うれしいです。7月までは賞金ランキングが低く、グランプリは走れないんじゃないかと思うこともありましたが、本当にいろんな方からパワーをもらえました」
2着は佐藤。ケイリン世界女王はガールズケイリンでも今年は15戦無敗だったが、最後の大舞台で土がついた。「前が空いていたので前に入りました。もちろん勝てたらよかったですが、後悔はありません」と振り返る。来年2025年に目指すのはグランドスラム。「獲れていないタイトルを獲りたいです」と前を向いた。
3着は尾崎。「やりたいこと、考えていたことはできたと思いますが、脚(力)が足りなかったです」と悔しげな表情。6年ぶりのグランプリ出場で初のビッグタイトルを狙ったが、来年に持ち越されることになった。
長くガールズケイリンをけん引してきたレジェンドの勝利で幕を閉じたガールズグランプリ2024。「80歳まで現役を続けたい」とことあるごとに口にしている石井にとって、これも通過点のひとつだ。2024年を最高の形で締めくくり、「1年間支えてもらったので、(来年は)それを返せるような1年にしたいです。感謝を込めてまた一戦一戦頑張ります」と、女王として迎える2025年を見据えた。
【Profile】
石井寛子(いしい・ひろこ)
1986年1月9日生まれ、埼玉県出身。中学時代は陸上に励み、高校から自転車競技を始める。大学1年からナショナルチームにも在籍。大学4年時にACCトラックアジアカップのケイリンで優勝する。数々の世界大会で活躍し、2013年にガールズケイリンデビュー。初年度からガールズ最優秀選手賞に輝き、2017年にはガールズグランプリで優勝を飾る。2024年1月にはガールズケイリン史上初の600勝を達成。2年ぶりに出場したガールズグランプリ2024で2度目の優勝を果たした。