2025年元日に行われるプロレスリング・ノアの日本武道館大会での佐々木憂流迦との一戦のために、WWEスーパースターで現US王者の中邑真輔が“凱旋帰国”をはたした。【映像】中邑真輔、佐々木憂流迦と臨んだ会見の模様 中…
2025年元日に行われるプロレスリング・ノアの日本武道館大会での佐々木憂流迦との一戦のために、WWEスーパースターで現US王者の中邑真輔が“凱旋帰国”をはたした。
中邑は今年4月にRAWからSMACK DOWNに移籍後、約7カ月間番組出演の機会がなかったが、アメリカ現地時間11月22日のSMACK DOWNでおどろおどろしい“ウェイワード・サムライ”にスタイルを一新して復帰。同月30日のPLE『サバイバーシリーズ』では、いきなりLAナイトを下しUS王座を奪取したことで、今回の1.1日本武道館大会はUS王者としてNOAHのリングに上がる。
WWEの現役王者が他団体のリングに上がるのは、近年では考えられなかったことで、WWE新体制を象徴する歴史的な出来事と言える。そんな変化の時代を、WWEでのキャリア9年目を迎える中邑真輔はどうとられているのか。WWEと中邑自身の“今”と“これから”を語ってもらった。
――今回のNOAH1.1日本武道館大会は、WWEの現役US王者が日本の他団体に出場するというプレミアムな形となりましたが、それについてどんな思いがありますか?
中邑 前回のグレート・ムタ戦も、近年のWWEでは歴史的なトピックスだったでしょうし、USチャンピオンが他団体に出場するということも、ある種の歴史的トピックスにはなるだろうとは思ってますね。
――今年はRAWからSMACK DOWNに移籍後、7カ月間番組への出場機会がありませんでしたが、復帰後すぐにLAナイトを破りUS王座を奪取しましたよね。
中邑 誰もが巻けるベルトではないので、そういう意味では対外的な証明としては十分すぎるかなとは思います。このベルトを巻くのも3回目で毎度違うシチュエーションではありましたけど、今回はWWE新体制となってまた雰囲気も変わってきたので、ここからどういう展開になるか楽しみではあります。まあ、そんな風に考えると、俺もおっさんになったな。日本での扱われ方も“レジェンド”ってヤツになってきてるんだって、最近やっと気づきました(笑)。
――気がつけばもう2025年でWWEに来て9年ですもんね。
中邑 控室の中でも僕が最年長っていうのもよくあることだし。選手の入れ替わりが激しいですけど、スタッフとはもう8年も付き合ってるんだっていう意味では、家族のように接してくれますけどね。
――7カ月間、SMACK DOWNへの出場機会がない間はどのようなことを考えていましたか?
中邑 旅に出られないストレスはありましたけれども、それならそれで、やれることやるということですね。 トレーニング、コンディショニング、それにプラスしてプライベートで家族に時間を割けることもあったし。このキャリアですからね、あたふたしてもしょうがないから。SMACK DOWNのプロデューサーとはずっと連絡取っていたので、自分のやるべきことをやっていましたね。
ただ、二転三転もありましたよ。「こういう計画でいく」と聞いていたのが、誰かのケガによって変わったりとか。ネットの噂なんかでは、どういうソースでそんなこと言ってるんだろう? みたいなこともありましたけど、そんなのも見なくなったし。自分なりに充実した時間は送れていましたね。
――SMACK DOWNに出演していなかった7カ月間も欧州のハウスショーなんかでは、ずっとメインクラスで出場していましたよね。
中邑 そこは(WWE在籍期間が)長いから(笑)。そういう部分での信頼は勝ち取っていますね、もちろん。
「NXTに武者修行中の稲村愛輝はオモロイ。ただ“遊び”が足んねえな。人生の岐路ではギャンブルしたほうが面白い」
――新体制になってからのSMACK DOWNはいかがですか?
中邑 まだそこまでわからないというか、また来年になったら状況が変わってくると思いますね。今、2時間番組なのが3時間に変わると聞いていますし。一方、RAWがNetflixで放送されるとなると、テレビ的な規制も緩和されて、もっと自由度が高くなると思うので。その影響はSMACK DOWNも受けるだろうと思いますから。状況を把握する力が必要でしょうね。
――どんな状況でも対応できるようにしなければいけない、と。
中邑 そこは長いですから(笑)。あたふたしない。
――でも、中邑選手って“ベテラン感”がないですよね。
中邑 それがよくないのかな?(笑)。それこそ僕の家にWWEの若い日本人選手が遊びに来たり、ごはんを食べさせたりはしてるんですけど。彼らとも普通に同じ感覚でしゃべってしまっている。で、後になってふとこう気づくんですよ。僕は気軽に「食べに来なよ」って言ってるけど、向こうからしたら「呼ばれたから行かなきゃいけない」ぐらいの感じがあるかもしれないって(笑)。
――飲み会に誘う上司みたいになってるかもしれない、と(笑)。いやいや、中邑さんに呼んでもらえるのは光栄だと思いますよ。
中邑 だったらいいですけどね(笑)。
――NOAHからNXTに武者修行に来ている稲村愛輝選手はいかがですか?
中邑 面白いですね。あいつオモロイわ。その魅力がどうやったら伝わるんだろうっていうのありますね。
――どんなところが面白いですか?
中邑 なんでも知ってる。詳しい。マニアックな趣味も持ってるし。もちろんトレーニングもしっかりとやってるし、貪欲ですよ。あとはなんか足んねえんだよな。たぶん“遊び”が足んねえな。運命なのか宿命なのかわかりませんが、そういう人生の岐路にいま稲村は来てるだろうし。どういう方向に行くかはわかりませんが、そういう時は「ギャンブルしたほうが面白いよ」とは思いますね。
――WWEとNOAHのパートナーシップについてはどう感じていますか?
中邑 すごいことだと思いますよ。いろんな偶然だったりラッキーが重なって、今こういう状況になってると思いますが。それはグレート・ムタと僕の一戦があったのも1つのきっかけでしょうし。ABEMAがWWEを放送することが決定したのもそうでしょうし。
自分がNOAHに出るのはこれで2回目になりますけど、AJ(スタイルズ)が行ったりとか、NXTの選手が派遣されたりとか、そこまでやれてる団体ってないと思うんですよ。TNAはアメリカ国内だから、そこまでのサプライズにはならないし。すごくおもしろい状況だと思いますね。
――稲村選手はそういったNOAHとWWEのパートナーシップから、NXTで修行をして、パフォーマンスセンターでトレーニングを受けているわけですけど、相当大きな経験になりますよね。
中邑 そうですね。今、稲村はすごく面白い経験積んでると思います。ただ、ギャラはNOAHから日本円で支払われていると思うので、今のドルの高さに生活面で苦戦しているかもしれないけど(笑)。だから僕も飯ぐらいは食わしてやろうかなと。
キャリア23年も「全然動ける」 ジョン・シナやかつてのライバル棚橋弘至の引退発表もどこ吹く風
――WWEでは中邑選手とプロレスキャリアが近いジョン・シナが2025年の引退を発表し、日本ではかつてのライバル棚橋弘至選手も1年後の引退を発表していますけど、中邑選手は自分に「残された時間」を考えたりすることもありますか?
中邑 いや、まだ全然動けるんですよ。
――そうですよね。
中邑 僕は今、キャリア23年ですけど、1度も手術をしたことないんです。骨折やヒビが入ったりしたことはありますけど。 まだ普通に動けるし、つとめて自分の年齢を気にしないようにしているんで。だからいまだにWWEの選手に実際の年齢を聞かれるとびっくりされますよ。昔からコンディショニングと食事には気をつけていまから。
――本当に常にベストコンディションですよね。今後さらなる活躍を期待していますよ。3度目のUS王座戴冠をはたして、これからどんなことをやっていきたいですか?
中邑 たえず新しいことに挑戦し、継続していきたいですね。それはプロレスの世界だけでなく。そうやっていろいろと回しながら、どうにか中邑真輔やってますよ。
――中邑選手は、長年いろんな武術の稽古に取り組んできましたけれど、最近それをリングで見せるようになってきたのも形になってきたからですか?
中邑 それもあるし、興味の感覚がだんだんそっちに寄ってきたっていうのもありますね。昔は頑なに日本人ギミックをしてこなかったんですけど、グレート・ムタと闘って、そこが腑に落ちるようになったんですよ。やりたくなかったことが、なんかやれる状況が整っちゃったから、「やるか!」っていうところもあったし。
――オリエンタルなニュースタイルは、ある意味で“いまの中邑真輔”のナチュラルな姿なわけですね。
中邑 そうですね、だから自分の好みの服を着ると気分がいいじゃないですか、その感覚に近いですよね。
――なるほど。
中邑 ただ、リングに上がるときは、 自分のもともと持ってるえげつない部分をより出せるようになっていますね。 リング上でどういう立ち振る舞いをするかは、もう自分自身との対話ですから。じゃあ、自分はこのリングに何を投影しようかと、そればっかりを常に考えていますね。
――元日の日本武道館でもぜひ、“今の中邑真輔”を存分に見せていただけたらと思います
文/堀江ガンツ