『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会』の頂点に立ったのは、…

『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会』の頂点に立ったのは、昨年準優勝の福岡大学附属大濠高校(福岡県)。鳥取城北高校(鳥取県)との決勝戦を77−57で制し、3年ぶり4度目の優勝を成し遂げた。

 2回戦から計5試合を戦い抜いた今大会を振り返ると、まさに王者に相応しい戦いぶりだった。初戦から昨年のインターハイ王者・日本航空高校(山梨県)との戦いを強いられたが、蓋を開けてみれば88−64の快勝。続く前橋育英高校(群馬県)戦では48点差の大差をつけた。八王子学園八王子高校(東京都)との準々決勝では第1クォーターで11点リードを作って最終スコア79−67。夏の王者と激突した準決勝でも、東山高校(京都府)を84−58で一蹴した。

 敗れ去ったコーチたちは、白旗を上げるように福大大濠の試合巧者ぶりや強さを語った。

「ノーマークの3ポイント、ドライブからのショットといった要所要所で一つひとつのシュートを確実に決められることが大濠さんの強さだと思いますし、それはU18トップリーグで対戦した際も感じました。前半から体の強さでも負けてしまいましたし、完敗というか、本当に強かったなと思います」(八王子学園八王子・伊東純希コーチ)

「強かったです。もうその一言に尽きます。我々のバスケットがどうこうと言うよりも、今日は大濠さんの完成度を褒めるべきじゃないかなと思います。インターハイのときは、まだ個々が連動してるようなイメージでしたけど、冬にはしっかりとチームになっていました。チームとしての完成度が非常に高かったです」(東山・大澤徹也コーチ)

 鳥取城北は今夏のインターハイにおいて10点差で敗れたが、今大会ではさらに差をつけられ惜しくも準優勝。敗れた河上貴博コーチは記者会見の冒頭で「大濠さんの完成度が夏よりも増していました」と話し、福大大濠の強さについてこう言及した。

「一つひとつの対策をしっかりされていると感じました。今日はオフェンスでなかなかズレが作れなかったですし、チームとしていいシュートを打たせてもらえませんでした。オフェンスもしっかりチームで作ってきたうえで、しつこくオフェンスリバウンドに絡んできましたし、ディフェンスの戻りも早い。どこを取っても抜け目がない感じで、私としては『どうやって崩せばいいのか』という印象でしたね」

 今年の福大大濠は、渡邉伶音、湧川裕斗、髙田将吾(3年)、榎木璃旺(2年)という昨年のスタメン4人が残った。しかし、地元・福岡県で開催されたインハーハイはベスト4で敗退。新チーム始動後は髙田のケガ、渡邊が代表活動などでチームを離れる日々が続いたものの、昨年のウインターカップ終了後に「今のままではベスト4止まり」と口にしていた片峯聡太コーチの予感が的中してしまった。

 それでも、「U18日清食品トップリーグ2024」で初優勝を果たし、僅差の戦いを勝ちきる勝負強さと自信が芽生えた。11月のウインターカップ県予選前には、キャプテンを湧川の1人体制から湧川、見竹怜(3年)の2人体制に変更。見竹が全体をまとめ、湧川はコート上で周りを引っ張るという役割分担が明確になり、「本当に色々な経験をさせてもらった」渡邉はそれを自チームに還元することで福大大濠は徐々に一つになっていった。

「今大会を振り返ってみると、やっぱり共通認識がすごくできていた印象です」。渡邉がそう言えば、エースの髙田は「自分たちが苦しいときに、試合に出てる5人がしっかりコートで目を合わせることをずっと意識しました」と振り返る。

 榎木と勝又絆の2年生コンビは先輩たちを「偉大な3年生」と口をそろえたが、この2人の存在も優勝には欠かせなかった。「縁の下の力持ちじゃないですけど、榎木と勝又は下級生ながらそういった役割をやってくれるのでチームのバランスが取れました」(片峯コーチ)。

「決勝戦は本当にこの3年間で一番楽しい、思い出に残ったゲームになりました」



 見竹がそう表現した2024年ラストゲームの残り1分18秒、この試合初めてコートに立った大谷航生(3年)は、すでに目を真っ赤にしていた。32得点を挙げた湧川は、自分の活躍よりもうれしそうに口を開いた。

「航生は腕のケガをしてしまって、ウインターカップに間に合うかどうかわからない状況でしたけど、リハビリを頑張って、本当にチームのために常に声出してくれました。『最後は航生にシュートを打たせよう』とチームで話していましたし、決めることはできなかったですけど、最後に一緒にコート立てたことは本当に良かったです」

 高校バスケ最高到達点――。1年前の悔しさがあったからこそ、福大大濠は辿り着くことができた。彼らは日本一強く、日本一カッコよかった。

文=小沼克年