清水エスパルスが途中、苦しみながらも安定した戦いぶりで自動昇格を果たしたが、2位の横浜FCは一時、清水と優勝争いを演じ…
清水エスパルスが途中、苦しみながらも安定した戦いぶりで自動昇格を果たしたが、2位の横浜FCは一時、清水と優勝争いを演じながら、終盤に大きく失速して、3位のV・ファーレン長崎にギリギリまで迫られた。最後はアウェーで、難敵のレノファ山口との戦いをスコアレスドローで乗り切る形で昇格を決めたが、そのギリギリを戦い抜けたことも立派なチーム力だ。
就任3年目の四方田修平監督はコレクティブな組織をベースに、3ー4ー2ー1というシステムの中で、バランスとスペシャリティをうまく配分しながら、強固な守備と迫力ある攻撃を組み合わせた。
特に攻撃面では札幌から加入した福森晃斗が、良質な左足のキックを生かした展開力とセットプレーを武器に、シーズン14アシストを記録。前線では浦和から期限付き移籍で加入の髙橋利樹が精力的な守備とポストワークで攻撃の厚みを引き出した。ストライカーとしては4得点という数字は寂しいが、四方田監督がスタメンで起用し続けたことが、戦術的に外せない存在だった証拠だ。
無論、横浜FCの強みは豊富で多彩な攻撃陣にある。190cm94kgという圧巻の体躯を誇る櫻川ソロモンをはじめ、10番を背負うテクニシャンのカプリーニ、経験豊富な伊藤翔、夏加入のジョアン・パウロなど、前線の選択肢が多く、5枚交代という現行ルールを最大限に生かした終盤の得点力は横浜FCが勝点3を取っていく原動力だった。
いかにも横浜FCらしい戦いを象徴するのが、2−0で勝利したホームの清水戦だ。前半の早い時間帯に、ショートコーナーから福森が上げたクロスをファーサイドでガブリエウが合わせるという形でリードを奪うと、清水の攻撃を5バックで受け止めながら、鋭いカウンターを繰り出す。最後は櫻川のヘディングがブロックされたこぼれ球を伊藤が押し込んだ。
■横浜FCとは対照的だった長崎
非常に手堅いスタイルではあるが、新守護神として君臨した市川暉記、キャプテンのガブリエウを中心に守備を固めて相手のストロングを出させず、攻撃ではカウンターとポゼッションからのクロスボールをうまく組み合わせて、効率よく仕留める。そうした戦いが安定してできていたからこそ、シーズン中に20戦無敗を記録するなど、清水と熾烈な首位争いを演じるまで行けたのだ。
しかし、終盤戦は深刻な得点力不足もあり、ラスト7試合で、鹿児島ユナイテッドに1−0と勝利したのみで、ベガルタ仙台とファジアーノ岡山に連敗を喫するなど、長崎の猛追を許す結果に。それでも守備が大きく崩れることはなく、1年でJ1復帰を果たす支えとなった。
その横浜FCを最後まで追い詰めた長崎は対照的に、ラスト10試合で7勝2分1敗と、まさしく快進撃だった。それだけに、シーズンを通して見ると、7月から9月にかけて、7試合で未勝利という失速を経験したことが響いた。74得点は清水や横浜を大きく上回る数字であり、18得点と第ブレイクしたマテウス・ジェズスを筆頭に、15得点のエジガル・ジュニオ、12得点のマルコス・ギジェルメ、10得点のフアンマ・デルガドと、4人の選手が二桁得点を記録したのは異例だ。
■山形、岡山、仙台に差を付けた3チーム
その一方で、失点数は清水より1つ多い「39」と特別多いわけではない。後半戦では夏からスタメンに定着したGK若原智哉を後支えとして、21歳の田中隼人や長期の怪我から復帰したヴァウドの奮闘も目立った。そもそも清水、横浜FC、長崎による”三つ巴”の戦いがハイペース、かつハイレベルだったのは4位のモンテディオ山形と勝点9、プレーオフで昇格を果たしたファジアーノ岡山とは勝点10、J1昇格プレーオフに滑り込んだベガルタ仙台とは勝点11差を付けていることからも明らかだ。それだけに、森山佳郎監督が率いる仙台の徹底したカウンターを前になすすべなくやられたプレーオフの戦いは悔やまれるが、内容的にも敗戦は否めなかった。
来シーズンは長崎にとって改めて、新スタジアムで開幕を迎えることとなるが、仙台はもちろん惜しくもプレーオフ決勝で敗れた山形、そしてJ1の最終節で降格が決まったジュビロ磐田、元鹿島の岩政大樹監督が就任した北海道コンサドーレ札幌、J2からのリスタートとなるサガン鳥栖なども、強力なライバルになってくる。
自動昇格、そしてプレーオフの出場権が与えられる6位以内を巡って、さらに激しい戦いが予想される2025年のJ2で昇格を勝ち取るのはどのチームか。その後は秋春制への移行期ともなるだけに、群雄割拠の戦いから目が離せない。
(取材・文/河治良幸)