残り3.9秒、運命を左右する大役が回ってきた。 12月27日の『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第7…

 残り3.9秒、運命を左右する大役が回ってきた。

 12月27日の『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会』の男子準々決勝、東山高校(京都府)は藤枝明誠高校(静岡県)に追い詰められていた。

 残り27秒で80-82。同14秒にはここまで39得点を挙げていたエースの瀬川琉久(3年)が2本のフリースローを獲得したが、これを1本しか決められず、直後には相手に2本のフリースローを献上した。しかし、藤枝明誠のフリースローが2本とも外れた。東山は瀬川がボールを運び、相手のディフェンスに引っかかるもルーズボールを味方がキャッチ。チームファウルが「5」に達していた相手がファウルを宣告され、それを受けた小野寺星夢(3年)がフリースローレーンへ向かった。

「ここで焦ってしまったら絶対外してしまうと思ったので、平常心で打つことを心がけました。自分は今まで悔しい思いもしてきたので、その思いもしっかり心にとめて打ち切れたのでよかったです」

 東山の背番号8は計り知れないプレッシャーの中、きっちりと2本のビッグショットを決めた。最終スコア83-82。劣勢を強いられ、最大13点ビハインドを背負った東山が土壇場で試合をひっくり返した。

 小野寺はこのフリースローだけでなく、第3クォーターには点差を6点、第4クォーターには5点差に縮まる得点をマーク。「琉久が攻めると絶対に相手は止めにくるので、僕らにパスがくることが多いです。そういった時はビビらず強い気持ちを持ってアタックすることを意識しているので、今日はジャンパーとレイアップも決められてよかったかなと思います」と、苦しい時間帯でチームを繋いだ場面を振り返った。

「自分は1、2年生の時にベンチに入れなかったり試合に出れなかったりした期間が多く続いたので、ずっと悔しい思いをしてきました」

 最終学年を迎えた今年、小野寺は2年間溜め込んだ思いを胸にコートに立っている。初の日本一に輝いた今夏のインターハイでは、シックスマンながら得意の3ポイントシュートで何度もチームを救った。だが、今回の藤枝明誠戦の3ポイントシュート確率は5分の0。ここまでの3試合を通じても12本中成功は2本のみにとどまっている。

「やっぱり自分の武器は3ポイントですし、今回のウインターカップでは会場の雰囲気に呑まれてしまってそれが全然出せていないです。明日はしっかり自分の武器を出せるよう、準備を大切にして頑張りたいと思います」

 12月28日の準決勝は、昨年の準優勝校・福岡大学附属大濠高校(福岡県)との大一番。小野寺星夢の力は、まだまだこんなもんじゃない。

取材・文=小沼克年