【GPファイナル3位の悔しさを晴らす】 坂本花織(シスメックス)は、前戦のGPファイナルでは3位と悔しい思いをしたが、その悔しさを晴らすように全日本選手権は「さすが」と言いたくなる底力を見せた。全日本選手権で4連覇を達成した坂本花織 GPフ…
【GPファイナル3位の悔しさを晴らす】
坂本花織(シスメックス)は、前戦のGPファイナルでは3位と悔しい思いをしたが、その悔しさを晴らすように全日本選手権は「さすが」と言いたくなる底力を見せた。
全日本選手権で4連覇を達成した坂本花織
GPファイナル後の1週間は「山あり谷ありだった」と苦笑する。帰国直前には胃腸炎になり、帰国後は丸1日、完全にダウン。それでも、そこからなんとか回復していった。
「筋力も完全に落ちた状態からリスタートという感じで、最初に氷に乗った時はまったく踏ん張れず、1週間で大丈夫かなと思うくらいで。でもそれから体を作り直すことができたので、コンディションはファイナル前よりよくなりました」
坂本がそう話すように、大会前日の公式練習は動きにキレと軽やかさがあった。そして、12月20日のショートプログラム(SP)は、はつらつとした演技を見せた。
最初のダブルアクセルで高いGOE(出来ばえ点)を獲得し、GPファイナルでミスをした後半の3回転フリップ+3回転トーループも安定のジャンプ。他の要素も着実に加点を稼ぎ、78.92点と納得の結果にした。
「自己ベスト(2022年世界選手権の80.32点)にだんだん近づいてきているのはすごくうれしいし、それでも取りこぼしている部分もあって、まだのびしろがあるというのもすごくやりがいがあります」
【危なげない4連覇も「少し守りに」】
22日のフリーは、直前の島田麻央が合計を219.00点にしたあとの最終滑走。
「自分のなかで腹をくくって勝ちにいこうと思った時ほど成績がいいというのは、本当にいろんな大会を経験して気づけた部分。今回、ファイナルから全日本に向けた期間に、強気でいかなければと思い返すことができたのですごくよかったです」
その気持ちに揺るぎはなく、序盤のジャンプ3本は高い加点。だが、後半は「少し守りに入ってしまった」と反省する部分も。GPファイナルから後半に入れている3回転フリップ+3回転トーループで、フリップがオーバーターンになったあとトーループは2回転にした。
「(コンビネーションのトーループを)3回転にするか2回転にするかすごく迷いましたが、無理をしてそのあとの3回転ルッツと3回転ループに影響して、もし失敗してしまったら元も子もないなと考えてしまいました。そこがちょっと悔やまれるところかな」
それでも149.76点を獲得し、合計は228.68点と危なげない優勝。演技後に両手を握りしめたポーズは、「悔しいという気持ちだったので、ガッツポーズではないです」と坂本は苦笑しながら説明した。
【五輪にロシア勢参戦にワクワク】
史上9人目になった4連覇達成については「昨季は3連覇を目指してシーズンを戦っていたのでうれしかったけれど、今季は4連覇を主目的にしていたわけではない。昨季ほどの達成感は感じない」と冷静に話す。
その理由は、すでに来季のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ視線を向けているからだ。
「今シーズンと来シーズンを2年連続でつなげて考えていきたい。2年でひとつということで考えると、やっぱり最終目標はあくまでも五輪。それ以前の試合は通過点として捉えたいので、そこには前ほど重きを置きたくない。ただ、絶対優勝はしたいという気持ちは忘れずにやっています」
自身の心のうちをそう説明する坂本。だが、全日本の大会期間中には、ロシア勢が来季は五輪に限って復帰し、最終予選を通過した場合、シングルは男女1名と、ペア、アイスダンス1組ずつが出場できることを国際スケート連盟が発表した。
坂本は「以前、ロシア勢は3人だったので、その誰かの間には入りたいという気持ちで戦ってきたので、その気持ちがまた復活するんだなと思うとめっちゃワクワクします。ただ、今はロシアだけではなく、アメリカなど他の国も強いので、強い選手がたくさんいるなかで戦えることに自分はすごく燃えます」と話した。
23日まで行なわれていたロシア選手権では、トリプルアクセルと4回転トーループを跳ぶアデリア・ペトロシアンが262.92点で優勝。フリーで4回転トーループを2本跳ぶダリヤ・サトコワが234.69点で2位という結果。
国内大会で判定基準が少し甘くなっているとはいえ、ロシア勢の力はまだまだ健在だ。だが、坂本は今自分にできる最大限の進化を意識している。
「今シーズンからフリーではフリップとルッツを2本ずつ入れる構成に変えていますが、NHK杯からはだいぶ安定してきたので、3回転+3回転を後半に入れてより基礎点を上げようと取り組んでいます。その構成に変えたのは自分自身の可能性を広げるため。やっていることは間違いではないというのは実感できている」
最大限の努力を重ねて世界での戦いへ挑む。