角田裕毅(RB)インタビュー@前編 人は1年で、こうも変わるものか──。2024年最終戦の地・アブダビにやってきた角田裕毅(RB)を見て、そう感じた。 顔の輪郭は鋭く、胸板と二の腕は厚く、1年前のアブダビどころか、今年3月の開幕戦バーレーン…
角田裕毅(RB)インタビュー@前編
人は1年で、こうも変わるものか──。2024年最終戦の地・アブダビにやってきた角田裕毅(RB)を見て、そう感じた。
顔の輪郭は鋭く、胸板と二の腕は厚く、1年前のアブダビどころか、今年3月の開幕戦バーレーンと比べても角田は見違えるように変わった。
もしかすると、最も大きく変わったのは見た目ではなく、眼光の鋭さや語り口、立ち居振る舞いかもしれない。それは見せかけで変えられるものではなく、内面からにじみ出る変化だ。
自分に足りないところを見つめ直し、それを改善してきたからこその自信。まだ自分に足りないところがあることも正確に把握し、今の自分にできることとできないこと、できようになるまでに必要な努力と機会がクリアに見えているからこその自信。
それが、今年の角田を見違えるように変えた理由だ。
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角田裕毅にとって2024年はどんなシーズンだったのか
photo by BOOZY
── 史上最多24戦の2024年シーズンが終わりましたが、長かったですか、それとも短かったですか?
「あっという間だった、という感じはありましたね。特に後半戦が早かったと思いますし、それだけ面白いシーズンだったと思います」
── これまでのF1レギュラー参戦の4年間で、今シーズンは何番目の出来だったと思いますか?
「今までで一番じゃないですかね。いろんな部分で成長できたと思います。特にドライビング以外の部分を変えるのが一番難しいものですけど、今年はそこを重視して取り組んできて、ある程度ステップアップできたのがよかったかなと思います」
── その意識した部分というのは?
「無線のやりとりですね。自分の落ち着き方と、レース中にしてもセッションごとにしても、フィードバックをどのくらいの頻度でコミュニケーションを取れているのかは、去年と比べて格段に上達できたと思います」
【感情はコントロールできていたか?】
── 今シーズンは途中でレースエンジニアの交代もありました。
「マティア(・スピニ)とは3年間やってきたので、彼と比べるのはフェアじゃないと思います。マティアは僕が事細かに言わなくても、僕の言いたいことや度合いをつかみ取ってくれました。
だけど、アーニー(エルネスト・デジデリオ)とはまだ組み始めて期間が短いこともあって、そのあたりのニュアンスが伝わらないわけではないんですけど、僕が詳しく言わなきゃいけないなという意識を持ってやっています。彼は彼ですごくハードワーカーだし、上達しようとお互いに必死でやっているので、そういうモチベーションからは僕もすごくエネルギーをもらっています」
── それ以外の部分で成長できたと思うのは、どういったところでしょうか?
「今年はコンスタント性をさらに改善することができたと思います。特に(自分たちのマシンに合っていて)このレースでポイントを獲らなきゃいけないという場面で、しっかりとポイントを獲るということができたと思います。コミュニケーションや状況把握、自分でそれをコントロールする力という部分も成長できたと思いますし、落ち着きも増したのかなと思っています」
── 逆にまだ足りていないと感じる部分は?
「フィードバックですかね。まだ完璧じゃない部分はあると思いますし、これからさらに修正していきたいなと思っています」
── 感情面のコントロールが課題だという見方もあります。
「そういう面も今年はステップアップできたと思います。去年そう言われたのはわかりますけど、今年はかなり改善していました。自分の感情のコントロールを完全に失った場面はなかったと思います。
そういうドライバーは、もっとほかにもたくさんいたんじゃないかと思いますけどね。あまり(テレビで)ピックアップされていないだけで。僕はそういう状況になったことはないと思いますし、特に問題もないと思いますよ」
【リカルドのラストレースで交わした会話】
── ダニエル・リカルドから学んだことは?
「ミスがあったり、結果が悪かったとしても、エンジニアとのミーティングではいつも冷静で、安定したいつもどおりのフィードバックをしていました。フラストレーションをそこに持ち込まないというプロフェッショナルさは、すごく印象に残っています。
お互いに切磋琢磨し合ってやってきましたし、レッドブルの(シートを争う)こういうシチュエーションなので、『チームメイトを倒さなきゃいけない』というのは、ほかのチーム以上に意識をしていたと思います。なので、関係を築くのはなかなか難しいですけど、そんななかでも僕らはいい関係を築くことができたと思います。
シンガポールGPで最後のレースを迎えた時、ブレーキングは基本的に僕の踏力のほうが高かったので、『若いから強いね。あれを見ると俺も年を取った気がするよ!』って冗談っぽく言っていました。そういうのは、ちょっとグッとくるところもありました」
(つづく)
「レッドブルがどんなドライバーを送り込んできても、倒し続けるだけ」
【profile】
角田裕毅(つのだ・ゆうき)
2000年5月11日生まれ、神奈川県相模原市出身。父の影響で4歳よりカートを乗りはじめ、16歳でフォーミュラデビュー。2018年にFIA F4選手権で年間王者に輝き、同年レッドブル・ジュニアチームに加入する。2019年からFIA F3への参戦でヨーロッパ進出を果たし、2020年にF1直下カテゴリーのFIA F2でシリーズ3位を獲得。2021年からF1アルファタウリ(現・RB)のレギュラードライバーとなり、2024年は9度の入賞で30ポイントを獲得してシリーズ12位。身長159cm、体重54kg。