米ツアー最終予選会に出場した日本人選手7名の内、5名が上位25名に入り、来季の米ツアー出場資格を獲得した。その内の1人が馬場咲希。昨年の最終予選会は失敗に終わり、今季は米下部ツアーを主戦場としたが、今回は一年間の成長を感じさせるプレーを見せ…

米ツアー最終予選会に出場した日本人選手7名の内、5名が上位25名に入り、来季の米ツアー出場資格を獲得した。

その内の1人が馬場咲希。昨年の最終予選会は失敗に終わり、今季は米下部ツアーを主戦場としたが、今回は一年間の成長を感じさせるプレーを見せた。

一方、原英莉花は、米ツアー出場資格を得られず、来季は米下部ツアーを主戦場にすることになった。

原は身長が173センチ。馬場は176センチ。両者とも高身長を生かした飛距離を武器にスコアを作っているが、スイングを見ると、飛距離の出し方は異なる。

ポイントは重心の使い方だ。

原英莉花と馬場咲希のドライビングディスタンス

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■原英莉花のスイングは飛球線後方側に重心を残す

原のスイングは始動でクッと右膝の角度を深めて右足に体重を乗せる。そのアクションをきっかけにして、テークバックをスタートさせている。右への重心移動が先で、その後に腕やクラブが動き出す、といった流れだ。

切り返しでは、腰部が先にターン(ねじれているのは腰椎ではなく胸椎)。左足に体重を乗せるものの、上半身は右に残っている。

‟体重は左で重心は右”といった感じのダウンスイング。ボールよりも飛球線後方側に重心を残すインパクトをすることで、遠心力が大きなスイングになり、飛距離を出しやすくなる。

また、バックスイングからトップオブスイングでの両肩のラインの回転度合いが大きい。

原のようにテークバックからバックスイングで右膝の角度を深くキープしようとすると、両肩のラインの回転は難しくなる。それを実現させられているということは、股関節や胸椎の柔軟性が高いのだろう。

これも、スイング軸を安定させながら、切り返し以降の力を大きくすることにつながる。

■馬場咲希のスイングは逆回転の動きが入る

馬場のスイングを見ると、あらゆる点で原とは逆。

テークバックでのアクションはおとなしい。右への重心移動は小さく、その場で体を回転させている。バックスイングでの右ひざは少し伸展しており、原のような‟右ひざ角度キープ”感はない。

切り返しからは、左足への体重移動を積極的に取り入れている。ダウンスイング初期は、右足のつま先が地面に触れているだけ、といった感じで100パーセントに近い割合で左足に体重を乗せながら腰部を回している。

ただ、そこから特徴的な動きが入る。

左足への体重移動と腰部の回転に導かれるように、右足かかとは跳ね上がるのだが、インパクトからインパクト直後にかけて、右足かかとが下がる動きが入るのだ。その動きと連動して腰部も逆回転(右回転)の動きが入る。

このインパクトでの‟戻る”動きは、重心の左への移動し過ぎを防ぐ動き。戻らず、左回転が進み続け、左方向へのエネルギーを出し続けてしまうと、手元が先行し過ぎてヘッドがついてこない。そうなると、フェースが開いてしまうだけでなく、ヘッドが十分に加速しない。

原はダウンスイングで重心を右に残し続けているのに対して、馬場は左に行って右に戻る、という流れで、ビハインドザボールを実現させている。

ここだけを見ると、馬場は複雑な流れでインパクトしているように感じるかもしれないが、トップオブスイングをコンパクトにすることで、再現性を確保している。

フォロースルーからフィニッシュにかけてはシンプル。腰部が左回転しながら、右足かかとが上がり、一般的な左足でバランスをとる形になっている。

■来季アメリカで躍動なるか

スイングアークで飛ばす原と、インパクト一点に力を集めるような感じで飛ばす馬場。2人のスイングを見ると、同じ高身長でもいろいろな飛距離の出し方があることがわかる。

来季、原は米下部ツアーで、馬場は米ツアーで、持ち前の飛距離を存分に発揮してもらいたい。

原が成長を見せ、飛躍すれば「下部ツアーにも意味がある」と、米ツアー挑戦に尻込みしている日本女子選手の背中を押すことにつながる。

好成績をおさめ、2026年シーズンの米ツアー出場資格を得ることが、最低限の目標となる。そのためには、まずは1勝を目指したい。

馬場はシード権確保が目標となりそうだ。馬場が制した全米女子アマの歴代覇者には、グレース朴やモーガン・プレッセル、リディア・コなど、メジャー優勝者がいるが、より高いところを目指しながらも、焦らずにシード権を確実に取ってもらいたい。

日本女子ゴルフ選手の中で最も人気がある選手の1人である原が、環境が良いとは言えない米下部ツアーに主戦場を移す。スター候補生だった馬場が米下部ツアーで経験を重ねて成長し、米ツアーに主戦場を移す。

これまでの歩みを踏まえて見てみると、日本の大型プレーヤー2人に注目しないわけにはいかない。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。