国内で開催される唯一のATPツアー公式戦、楽天ジャパンオープンが10月2日から東京・有明テニスの森公園で開幕する。2012、14年優勝の錦織圭は右手首の故障で出場できないが、出場予定選手リストには、今見たい、旬の選手が並ぶ。 まずは、先の…

 国内で開催される唯一のATPツアー公式戦、楽天ジャパンオープンが10月2日から東京・有明テニスの森公園で開幕する。2012、14年優勝の錦織圭は右手首の故障で出場できないが、出場予定選手リストには、今見たい、旬の選手が並ぶ。

 まずは、先の全米オープンで準優勝したケビン・アンダーソン(南アフリカ)だ。でん部、右肩など、ここ2年ほど故障が相次いだが、めげずに克服し、全米で31歳にして初のグランドスラム決勝進出と、遅咲きの花を咲かせた。203センチの長身を生かしたビッグサーブに、高い打点からの強打など、有明のハードコートは彼の武器が最も生きるサーフェスと言える。

 次に韓国のチョン・ヒョンの名前を挙げておきたい。まだ21歳だが、トップ50入りを果たし、男子ツアーが期待の次世代選手をプッシュするキャンペーン「Next Gen」の中心メンバーとなった。ファンには、全仏で錦織に挑んだ試合の印象が強いのではないか。降雨順延で試合の流れが変わり、敗れたが、錦織に「雨が降らなかったら負けていた」と言わしめるほど、強打とねばり強さで追い詰めた。「Next Gen」の勢い、脅威を彼のプレーから感じてほしい。

 グランドスラムのファイナリストがもう一人。ウィンブルドンでロジャー・フェデラーと決勝を戦ったマリン・チリッチだ。ご存知の通り、2014年全米では決勝で錦織を破ってグランドスラム初優勝を飾った。ウィンブルドンは約3年ぶり2度目のグランドスラム決勝だった。決勝では左足にできたまめの痛みで力を発揮できず、試合中に涙を流したが、思わぬ形で彼のマジメな人間性があらわになった場面ではあった。

 昨年の楽天オープン準優勝のダビド・ゴファンも忘れるわけにはいかない。ニック・キリオスとの決勝では両者、個性を発揮、接戦で見どころの多い試合になった。今季は全豪オープンでグランドスラム2度目の8強入りを果たし、2月にはベルギー男子選手で初の世界ランク・トップ10入りを実現させた。マスターズ1000のモンテカルロでは世界ランク2位のノバク・ジョコビッチを破った。今大会でも卓越したストローク力と俊敏さを披露してくれるだろう。

 将来のナンバーワン候補の一人、ドミニク・ティームも見逃せない選手だ。今季の成績には目を見張る。4月のバルセロナではアンディ・マレーを破り、世界ランク1位からの初勝利。ローマではナダルのクレーコートでの連勝を19で止めた。全仏ではジョコビッチを破った。まだビッグタイトルはないが、数年後にはアレクサンダー・ズベレフらとツアーの盟主の座を争うだろう。体をフルに使い、大きなフォームで打ち出すグラウンドストロークは躍動感に満ちている。特に、めいっぱい腕を振り切る片手打ちのバックハンドには一見の価値がある。

 さて、一番の注目選手と言えば、杉田祐一だろう。この6月、ウィンブルドンの前哨戦、アンタルヤでツアー初優勝を飾り、日本男子では松岡修造、錦織圭に次ぐ3人目の栄誉となった。大会後の世界ランキングでは松岡を抜き、錦織に次ぐ日本男子歴代2位の44位に浮上した。昨年は当時19歳のA・ズベレフ、今季は21歳のカレン・カチャノフなどを倒し、「Next Gen」キラーのような存在になっている。ストロークのテンポを徐々に上げて相手の守備を崩していく攻撃は、見るものをわくわくさせる。テニスに取り組むストイックな姿勢を、仲のいい錦織は「仙人」になぞらえた。その独特のテニス観を独特の言い回しで披露するインタビューも、お見逃しなく。

 

(秋山英宏)