今年のスコッティ・シェフラーは本当に強かった。4月「マスターズ」で大会2勝目を挙げたほか、プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」を制して初の年間王者に輝くなど、2007年のタイガー・ウッズ以来となる7勝をマーク。8月「パリ五輪」では金メ…
今年のスコッティ・シェフラーは本当に強かった。4月「マスターズ」で大会2勝目を挙げたほか、プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」を制して初の年間王者に輝くなど、2007年のタイガー・ウッズ以来となる7勝をマーク。8月「パリ五輪」では金メダルを獲得し、3年連続でPGAツアーの最優秀選手賞(ジャック・ニクラス賞)を受賞した。まさに絶対王者の名にふさわしい活躍だったが、そのきっかけは、3月のある一本の電話だった。
試行錯誤の始まり
ティからグリーンにかけて無双状態にあったシェフラーだが、パッティング面には課題が残っていた。昨年のスタッツにおいて68.629で全体トップだった平均ストロークに対し、平均パット数は29.09で110位。年間を通して複数のパターを試行錯誤したものの糸口はつかめなかった。
テーラーメイドのツアーレップに助けを求め、昨年のプレーオフシリーズ初戦「フェデックスセントジュード選手権」ではテーラーメイド スパイダー ツアーX “SSプロト”を使った。ソリッドフェースにより重心位置が前になったことで、ブレード型に近い打感を実現しつつ、マレット型らしい寛容性の高さも兼ね備えたプロトタイプだ。
シェフラーは2大会後の「ツアー選手権」で、以前から使うスコッティキャメロン セレクト タイムレス ツアータイプGSSツアープロトタイプに戻している。しかし、このパターが彼を勝利に導くことはなかった。フェデックスカップのリーダーとして2打差のアドバンテージを持ってスタートしたにもかかわらず、首位と16打差の通算11アンダー6位で試合を終えたのである。
1ダースのパターをテスト
大会の数時間後、シェフラーは世界有数のパッティングコーチであるフィニ・ケニオン氏と接触した。数日後には2人はダラスに集まり、新しいアイデアを伴って製図版と向き直った。
「我々はダラスで数週間にわたり、1ダースほどのパターをテストしました。アライメントやストロークにどんな違いをもたらすかを確認し、何が良かったのかを振り返り、彼がギア変更を望む場合は、どの方向へ進めば良いのかを模索しました」とケニオン氏は話す。
シェフラーは「ライダーカップ」で競技に復帰。そこで「僕は手を下げようとしていたんだけど、これは間違いだった。手を下げることで、実際にはパターのトウを高く上げてしまっていたんだ」と気づきを話した。パターのヒール側で打ってしまっていたために、正しいラインに乗せるのを難しくしていたのである。
彼はグリップをより厚めのスーパーストローク ゼナジー ツアー2.0グリップに交換し、それを短く握った。その結果グリップが手のひらに収まるようになり、アドレスの前傾が深くなった。手に頼るのではなく、ボディターンでパターを動かせるようになった。
昨年12月の「ヒーローワールドチャレンジ」ではローガンオルソンのブレードパターを使用して優勝。だが、グリーン上の課題の追及は終わらない。「最初は6本のパターで始まり、最後は15本まで行きました」とテーラーメイドのツアーレップは振り返る。
今年初めの5戦で、シェフラーは4度のトップ10入りを果たした。しかし、3連覇を狙った「WMフェニックスオープン」では13番から15番にかけて2m以内のパットを3回外し、優勝争いから後退。その翌週の「ジェネシス招待」でもストロークゲインド:パッティングは最下位と思うような結果が出なかった。
転機となった電話
しかし、一本の電話が転機となる。「ジェネシスー」のあと、シェフラーはレップと話し合った。
「彼は出だしに戻った感じで、昨年のフェデックスセントジュード選手権で使ったパターをもっとテストできないかと尋ねてきたんです。それに加え、彼は『すべての付加機能を搭載した真っ当なスパイダーパターも送ってくれないか? 僕は、いわゆる“お助けパター”も欲しいんだ』と言ったのです」とレップ。
最終的にシェフラーのお眼鏡にかなったのは、全付加機能を搭載したスパイダー ツアーX Lネックだった。このLネックはパターのヘッドに対してオフセットされており、シェフラーの使用していたブレード型と似ていたことに加え、パターヘッドのリリースも感じやすくなった。
後方に重量が配分されたことで、高い慣性モーメントを実現。45度の溝が搭載されたピュアロールは、最適の順回転を生み出し、転がりを向上させる設計になっていた。トゥルーパスのアライメントシステムは白いボールとマッチしたため、シェフラーはボールに引いた線でラインを合わせる必要がなくなった。
次戦「アーノルド・パーマー招待」で今季初勝利。グリーン上の成績はフィールド5位に急浮上した。「このスパイダーパターは、僕にとって狙いを定めるのがとても簡単なんだ。ボールの線を使う必要がない。パターをとても良く構えることができるし、フェースの中央で構えることができる」とシェフラーは新しい相棒を絶賛した。
その後は破竹の勢いで勝利を積み重ね、初の年間王者を戴冠。弱点を克服し、死角なしといえる圧倒的な強さを見せた。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)