井上戦を前にして負傷を負ったグッドマン。(C)Getty Images決戦直前に4針を縫う治療を 予期せぬアクシデントによって、師走の大一番は延期を余儀なくされた。 12月14日、大橋ジムは今月24日に東京・有明アリーナで開催予定だったボク…

 

井上戦を前にして負傷を負ったグッドマン。(C)Getty Images

 

決戦直前に4針を縫う治療を

 予期せぬアクシデントによって、師走の大一番は延期を余儀なくされた。

 12月14日、大橋ジムは今月24日に東京・有明アリーナで開催予定だったボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)のIBF&WBO同級1位サム・グッドマン(豪州)との防衛戦を来年1月24日に延期すると発表した。挑戦者陣営からグッドマンが負傷したと連絡を受け、回復の状況を含めた協議を行った結果、今回の決断に至った。

【動画】痛々しい左目の裂傷…井上戦を控えたグッドマンの負傷シーン

 決戦まで10日と迫った中でのアクシデントだった。日本行きを翌日に控えた現地時間12月13日に母国内での最終調整として本格的なスパーリングを敢行したグッドマン。その最中に左まぶたを裂傷。ヘッドギアこそしていたが、ダメージは深く、トレーナーたちが練習を中断。ほどなくして試合開催の延期を求める形となった。

 プロキャリア19戦無敗(8KO)と着実にステップアップを図ってきたグッドマンにとっては、一世一大の大勝負と言っても過言ではなかった。そんな井上戦を目前に控えた状況での負傷に母国内でもショックは広まっている。

 豪公共放送局『ABC』は、今回の怪我でグッドマンが4針を縫う治療を受けたことを伝えた上で「本人が『不慮の事故』と表現した怪我によって、世界的な名ボクサーであるナオヤ・イノウエとの試合は延期になった」とリポート。さらに同国のニュース局『news.com.au』も今回のアクシデントを「完全なる惨事」と悲観。SNS上で動画が拡散されているグッドマンの練習風景を次のように伝えている。

「26歳のオーストラリア人は、イノウエとの試合に向けて、一生懸命に練習に励んできた。しかし、日本に向かう前の最後のスパーリングで左目の上にひどい切り傷を負うというダメージを負った。このスパーリングセッションは関係者が撮影をしており、そこにはトレーナーたちから『かなり出血している。止めよう』と告げられた瞬間のグッドマンの悲痛な様子が収められている。『クソッ』と叫び、リングの周りを歩き回る彼の行動や表情が、事態の深刻さのすべてを物語っていた」

徹底して追い込んできたグッドマン。ショックを隠し切れず…

 何よりもショックを隠し切れないのは、グッドマン自身だろう。

 自ら「今の階級で一番強いボクサー」と位置付けた井上と対峙する決戦に向けて、彼は国内合宿を含めた猛トレーニングを実施。時には朝5時から夜の6時半までジムにこもって己を徹底的に追い込んできた。

 豪ポッドキャスト番組『The Run Home with Joel and Fletch』に出演した際には、井上戦に向けた並々ならぬ想いを打ち明けていた。

「今までの合宿とは全く違う。ただ、今はこれまでやってきたことの量を増やして、もっと徹底的に追い込んでやっている感じかな。昔から俺は一生懸命にやるタイプで、ジムでも全力を尽くしてきたけど、今は負荷を本当に尋常じゃないレベルに上げてやってる。昨日は朝5時から夜の6時半までジムで限界まで自分を追い込んだ。それが日常って感じで、今はそれだけが重要なんだ」

 無論、スパーリング中の怪我は付き物で、不可抗力ではある。ただ、日本に飛び立つ直前の追い込みで生じたアクシデントには、グッドマンも肩を落とす。今回の練習風景を「血みどろのスパーリング」と表現した豪スポーツ専門局『FOX Sports』は、左目が青黒く腫れた姿で自身のインスタグラムに動画を掲載した本人の謝罪コメントを紹介している。

「起こった事をお話します。スパーリングの偶発的な事故で4針縫うカットをしました。本当なら今日、日本に行く予定でした。諦める決断をするのは辛かったです。もし、自分の思う通りにできるなら、俺は戦いを続けたいと言いましたが、イノウエのような相手と戦うとなると、試合に出るのは危険だと俺のチームは言っていた。味方にはなれないと。何よりこんなことになって本当にショックを受けています。でも、これは現実なんだと受け止めています」

 さらに「試合を楽しみにしていた日本の皆さんにも申し訳なく思っています」とも話すグッドマンは、同じく調整を続けていた王者に対する謝罪も口にしている。

「イノウエ選手にもお詫びしたいと思います。彼と彼の陣営はこの試合のために一生懸命準備してきたと知っているので、本当に申し訳なく思っています。自分はできることなら彼と戦いたい。ただ、彼とベルトをかけて戦うチャンスが欲しいだけです」

 ここから1か月間の再調整期間を経て、ゴングの時を迎える両雄。痛手を負った挑戦者の回復具合を含め、王座戦の行方に熱視線が注がれる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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