2025年6月に、FIFAクラブワールドカップが開催される。新方式となる大会には、日本から出場する浦和レッズを含め、世界中から数多くの強豪クラブが参戦する。世界のトップスターが火花を散らす手に汗握る大会となることは間違いないが、その一方で…

 2025年6月に、FIFAクラブワールドカップが開催される。新方式となる大会には、日本から出場する浦和レッズを含め、世界中から数多くの強豪クラブが参戦する。世界のトップスターが火花を散らす手に汗握る大会となることは間違いないが、その一方で、選手たちの選手生命を脅かす危険性もあるという。サッカージャーナリスト大住良之が警鐘を鳴らす!

■南米6チームさえも「刺身のツマ」

 24クラブから32クラブへと、「幻の2021年大会」から8つの増枠がなされた今大会だが、そのうち4つが欧州に振り向けられたことに、その意図があからさまに表れている。

 欧州からの出場クラブは、イングランドからチェルシーマンチェスター・シティ、スペインからレアル・マドリードアトレティコ・マドリード、ドイツからバイエルン・ミュンヘンボルシア・ドルトムント、イタリアからインテル・ミラノとユベントスポルトガルからFCポルトとベンフィカ、そしてパリ・サンジェルマン(フランス)、レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)。

 アジア(出場枠4)、アフリカ(4)、北中米カリブ海(4+1)、そしてオセアニア(1)はもちろん、ブラジルの4クラブ(パルメイラス、フラメンゴ、フルミネンセ、ボタフォゴ)とアルゼンチンの2クラブ(リバープレートとボカ・ジュニアーズ)の計6クラブが出場する南米も、「スター=関心の高さ=収益」という面では「刺身のツマ」に過ぎない。リオネル・メッシを擁する「開催国枠」のインテル・マイアミは別だが…。

■選手寿命「短命化」のリスクに直面

 だが、大きな問題がある。欧州のトップクラブの選手たちの多くが、クラブだけで年間50を超える試合をこなし、そのうえ、それぞれの代表チームの試合にも参加しているからだ。新しいFIFAクラブワールドカップ(以降=FCWC)が始まる前の現時点で、すでに「過重労働」であり、選手たちは蓄積した疲労によるパフォーマンスの低下、ケガとそれに伴う選手寿命の短命化というリスクに直面している。

 サッカー選手には本来のリズムがある。試合は週1試合、シーズンは最長10か月。選手として健康に過ごすには、毎年2か月間はオフをとらなければならない―。だが、現在のトップクラスのサッカーでそんな状態は「夢物語」だ。選手たちは頻繁に「週2試合」を強いられ、シーズンオフを取ることもままならない状態にある。

 すべてのサッカーのベースとして、国内リーグがある。「秋春制」をとる欧州の大半の国の日程をざっと見ると、8月に開幕し、翌年5月に閉幕する10か月が「サッカーシーズン」である。国内リーグの試合数は34~38試合程度。ここにカップ戦(多くの国で2つのカップ戦がある)が加わる。

 さらに各国リーグ上位のクラブには、基本的にウイークデーを使って欧州のカップ戦(チャンピオンズリーグなど)が入る。これもシーズンは8月から5月である。

 これらの「クラブ日程」を縫うように、代表チームの活動が入れられている。原則として3月、6月、9月、10月、11月の5か月に各9日間(2試合分)。欧州のトップリーグのトップクラブ(ほとんどが欧州のカップ戦に出場している)の多くが代表選手であり、これに参加することになる。

■祖国に捧げられるスターの「オフ」

 4年に1度のFIFAワールドカップは基本的に6~7月の大会で、これがある年には、世界のスター選手の多くが「オフ」を祖国のために捧げることになる。

 代表チームが出場する長期間の大会はワールドカップだけではない。欧州選手、南米選手権など、地域連盟の選手権が通常4年に1度行われ、原則としてワールドカップの中間年に行われている。これも原則として6~7月だから、欧州と南米の代表選手(その多くが欧州のトップリーグでプレーしている)がゆっくりと体を休めることができる期間は、ワールドカップによる「オフ返上」を含めると、2年に1度となってしまう(アフリカやアジアといった地域では、地域選手権の開催国によっては6~7月の開催が不可能で、1~2月開催となることが多く、北中米カリブ海では地域選手権が2年に1度となっているため、状況はこれほどシンプルではないが、ここでは、こうした要素は考慮外とする)。

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