2025年6月に、FIFAクラブワールドカップが開催される。新方式となる大会には、日本から出場する浦和レッズを含め、世界中から数多くの強豪クラブが参戦する。世界のトップスターが火花を散らす手に汗握る大会となることは間違いないが、その一方で…

 2025年6月に、FIFAクラブワールドカップが開催される。新方式となる大会には、日本から出場する浦和レッズを含め、世界中から数多くの強豪クラブが参戦する。世界のトップスターが火花を散らす手に汗握る大会となることは間違いないが、その一方で、選手たちの選手生命を脅かす危険性もあるという。サッカージャーナリスト大住良之が警鐘を鳴らす!

■巨大かつ「危険」な大会

 2025年の6月から7月にかけてアメリカで開催されるFIFAクラブワールドカップ(FCWC)の抽選会が行われ、試合日程が決まった。

 出場32クラブ。アジアに割り当てられた4つの出場枠のうちのひとつが、2022年のAFCチャンピオンズリーグ(=ACL、決勝戦は2023年5月)優勝の浦和レッズに与えられている。浦和は8グループのうちのE組に入り、6月17日にシアトルでリバープレート(アルゼンチン)と、21日にやはりシアトルでインテル・ミラノ(イタリア)と、そして25日にロサンゼルスでモンテレイ(メキシコ)と対戦する。

 大会は6月14日にマイアミでのA組のアルアハリ(エジプト)×インテル・マイアミ(アメリカ=開催国枠で出場)で開幕し、決勝戦は7月13日にニュージャージーのメットライフ・スタジアム(2026年ワールドカップの決勝会場)で開催される。1か月間、11都市の12スタジアムを使い、総試合数63(3位決定戦は行われない)という巨大な大会である。だが同時に、サッカーの未来を殺しかねない危険な大会でもある。

■FIFA会長の「宿願」

 この大会は、2016年に国際サッカー連盟(FIFA)の会長に就任した、ジャンニ・インファンティーニの宿願だった。本来なら、この形での最初の大会は、2021年に中国で開催されるはずだった。「4年に1度、ワールドカップのプレ大会として、ワールドカップの1年前にワールドカップ開催国で開催する」ものとされていたが、2022年ワールドカップがカタールでの11~12月開催となったため、中国で6~7月開催となった。このときの予定では、出場は24クラブだった。

 ところが新型コロナウイルスで中国は延期を決定、FIFAは新形式の大会の開催を取りやめ、2005年から続いてきた「毎年12月開催、6地域連盟のチャンピオンが集まり、ノックアウト式で戦う」という形の大会に戻した。しかし、インファンティーノ会長はあきらめたわけではなく、2022年のワールドカップ時に「32チームの大会として2025年からスタートする」と宣言したのである。

 出場32クラブの内訳は、オセアニアが1、アジア、アフリカ、北中米カリブ海が各4、南米が6、欧州が12、そして開催国が1。重要なのは、欧州から12ものクラブが出場することだ。

■21世紀は「欧州」ひとり勝ち

 21世紀のサッカーは、完全に欧州が「ひとり勝ち」の状況にある。イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスの「5大リーグ」を中心に、各国のリーグがテレビ放映権料から多額の収益を挙げ、その中から選りすぐりのビッグチームが覇を競う欧州チャンピオンズリーグは「ワールドカップを凌ぐレベル」とまで言われるとともに、他の欧州クラブ大会と合わせ、毎年5000億円以上の放映権収入を欧州サッカー連盟(UEFA)にもたらしている。

 こうした「シーズンごとのクラブ大会」に加え、4年に1度行われる代表チームの大会、欧州選手権も、世界的な関心を集め、世界に放映権を売ることで巨大な収益を挙げている。手元にデータがあるわけではないが、「サッカーという産業」が世界で生む収益の6割から7割が欧州に集中しているのではないかという印象がある。

 結果として、UEFAの力が強大になり、4年に1度のワールドカップに収益の大半を依存するFIFAは、後塵(こうじん)を拝する形となった。「クラブワールドカップ」のアイデアは、前会長のジョゼフ・ブラッターの時代からあったものだが、その意図は、最も集客力があり、関心を集める(=高額の放映権料を見込める)欧州の人気クラブをFIFAが主催する試合に出場させて収益を挙げることだった。インファンティーノも、まったく同じ目的でこの大会を推進してきたのだ。

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