大ケガから復帰したコベントリー(チャンピオンシップ/イングランド2部)の坂元達裕は、フランク・ランパードが指揮をする新体制のチームで存在感を見せ始めている。第19節ミルウォール戦では1-0の勝利に貢献した。【一番輝けるポジション】 坂元は…
大ケガから復帰したコベントリー(チャンピオンシップ/イングランド2部)の坂元達裕は、フランク・ランパードが指揮をする新体制のチームで存在感を見せ始めている。第19節ミルウォール戦では1-0の勝利に貢献した。
【一番輝けるポジション】
坂元はその1週間前、新体制3日目の前節カーディフ戦(2-2)でも同じ位置で先発していたのだが、当人は「試合後に監督と話をした」と言う。
「前節は、なかなか僕の長所を伝えられてなくて。トップ下気味の位置に入って、後半に少しボールを触れなかった部分もあったので、(右SBの)ミラン(・ファン・エバイク)とちょっと監督と話しに行って、僕はサイドがやりたい、そこからのクロスだったり、ドリブルだったりが自分の長所だと伝えたんです。そのなかで今日みたいに、ミランとのコンビネーションで崩していける形を作れるようになったので、 そこはやっていてすごく楽しい。どこのポジションでも、やるべきことはやらなきゃいけないわけですけど、僕自身が一番輝けるのはこのポジションかなと思っているので」
実際、「輝ける」兆しは見られた。コベントリーが、後半の得点が妥当だと思わせる流れを生み始めたのは、右サイドで坂元が絡む機会が増え始めてからだった。前半34分、ファン・エバイクとの連係からボックス内で折り返した場面は、トップ下に入ったジャック・ルドニの強すぎたファーストタッチが惜しまれる。その10分後には、鋭い切り返しでふたりをかわして突破口を切り開き、ルドニのヘディングは相手GKに指先セーブを強いた。
現役当時、センターハーフにしてプレミア得点数歴代6位(177)のランパードが、監督として攻撃を重んじても不思議はない。
「僕は、子どもの頃からサッカーをほとんど観てこなかったんですけど、監督のことは知っていました。世界のレジェント的な存在で、真ん中(のポジション)でもゴールを決められる選手だって。そういう人のもとでプレーできるのはすごく楽しいですし、しっかり結果を残して、ともにチームとして上がっていきたい」
順位を上げ、昇格を目指すうえでは、監督交代前のチームと比べてカウンターを浴びる印象が気掛かりではある。だが、坂元は言う。
「4バックになって、より攻撃的な部分も増えてきた反面、カウンターを食らう回数は多くなったかもしれないですけど、監督は、そこはもう気にせずに、まずはしっかり攻撃でビビらずに前につけて、チャレンジしていくことが大事だと言っています」
【「ハードワークは僕のよさ」】
「前の監督はコベントリーのレジェンド的な存在で、僕らもすごく信頼していて、人柄もすばらしい監督だったので、そこは(解任を知って)がっかりしましたけど、新しい監督も、より戦術的な面、動き方であったり、攻撃の部分の回し方であったり、すごく具体的にミーティングで話をしてもらうことが多いので、頭のなかを整理しやすくなりました。僕にとっても、チームにとってもすごくプラスな部分かなと思います」
前向きな心境と決意のほどは、自軍ボックス内でダイビングヘッド気味にクロスをクリアした後半アディショナルタイムまで、いつにも増して集中力の高さを感じさせる守備からも窺えた。
「意識はしていました。ここ数試合、相手のシュート数が少ないにもかかわらずイージーな失点をしてしまっていたので、攻撃の選手も守備をしっかりしなきゃいけないと監督にも言われていて。いつも意識していますけど、より強く意識しました」
こうした攻守両面での持ち味は、容姿こそまったく異なるが、チェルシー正監督時代のランパードが、主に右ウイングで頼りにしたウィリアン(現オリンピアコス)の魅力と重なる。切れ味鋭いドリブル、危険度の高いクロス、そして足を止めないハードワークで信頼の厚かったブラジル人ウインガーの話をすると、コベントリーの日本人ウインガーは、こう反応した。
「僕自身、監督が誰でも自分のやるべきことをやるだけだと思っています。攻撃で仕掛ける部分だったり、クロスの部分だったり、チャンスメイクは自分の得意でもありますし、そのうえでディフェンスもサボらずにしっかりとハードワークできるというのが僕のよさ。日本人選手としてのよさでもあると思うので、そこは続けて、自分のよさをもっともっと知ってもらえるようにプレーしていきたい」
ウェスト・ブロムイッチ・アルビオン戦に先発、後半32分までプレーした坂元達裕(コベントリー)photo by REX/AFLO
続く12月11日の第20節ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン戦では、コベントリーは新体制下での初黒星(0-2)を喫することになった。不運にも方向が変わったシュートで先制され、試合の流れに反して追加点を奪われてしまった。だが坂元の「よさ」、さらに言えばチームにとっての彼の必要性は、77分間のプレーでより新監督にも伝わったのではないか。
前半11分に先制された直後、すぐさま立て続けにボールを奪って反撃姿勢を示したコーナーキック2本は、坂元の左足シュートと低弾道クロスによって得たものだった。また同37分、左サイドからのクロスが手前で相手選手ふたりと空中で競ったルドニに当たっていなければ、走り込んだ坂元がミートできていただろう。ハーフタイムを挟んでの2度のチャンスには、3人に囲まれながらの巧みなキープと、得意の切り返しからのマイナスの折り返しで絡んでいる。
後半23分には、クロスにタイミングよくジャンプ。相手の左SBカラム・スタイルズに競り勝ち、教科書どおりに下に叩きつけるヘディングでゴールを狙ったが、惜しくも相手GKの俊敏なセーブに阻まれた。スタイルズが前半にイエローをもらっていたこともあり、コベントリーは、右ウインガーの坂元をもっと活用すべきだったとさえ言える。
本人は、現役時代のランパードは辛うじて記憶している程度だろうが、あえてそんな坂元に言いたい、「目指せ、最新ランパード軍のウィリアン!」と。