12月12日(現地時間)、サン・セバスティアン。ヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ第6節、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は最下位のディナモ・キーウをホームに迎えて、3-0と下している。「これだけ優位な展開だったら、もっとゴールを決…

 12月12日(現地時間)、サン・セバスティアン。ヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ第6節、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は最下位のディナモ・キーウをホームに迎えて、3-0と下している。

「これだけ優位な展開だったら、もっとゴールを決めるべきだった」

 イマノル・アルグアシル監督が語ったとおり、力の差は明白だった。グループフェーズは残り2試合、ラ・レアルは12位に浮上。8位まで与えられるラウンド16のストレートインも見えてきた(9位~24位がノックアウトフェーズを戦う)。

 先発した久保建英は右サイドを中心に躍動し、チームに翼を与えていた―――。

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、序盤から久保がキーウを凌駕したプレーをこう称賛している。

「久保は開始5分でゴールに迫っている。(角度がなかっただけにクロスにも見えた)シュートはサイドネットの外だったが、日本人アタッカーはとてもアクティブだった。(ホン・)アランブルとの駆け引きからスペースにボールを呼び込み、完全にマーカーの逆を取ったシーンは見事だった」



ディナモ・キーウ戦に先発、2点目をアシストした久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 久保は右サイドで、常にボールを引き出し、ゲームを動かしていた。あえて幅を取って、インサイドをブライス・メンデスに走らせ、ビッグチャンスにつなげるパスもあった。創意工夫、変幻自在、キーウがやや力の劣る相手だったこともあるが、もてあそぶようだった。

 もっとも、キーウ戦でベストプレーヤーを選ぶとしたら、意外性や殊勲も含めると、23歳のMFウルコ・ゴンサレスになるか。

 ウルコはケガで欠場したマルティン・スビメンディの代役だった。現地で最も期待される下部組織スビエタ出身のMFで、まさに「スビメンディの後継者」と目される(ラ・レアルでは伝統的に、中盤を司るMFはシャビ・アロンソ、ミケル・アランブル、アシエル・イジャラメンディ、スビメンディなどスビエタ出身者が多い)。これまでは特徴の長身が仇になって、体のコーディネーションに問題があった。しかし、キーウ戦のウルコはバランスが取れていて、落ち着きも出てきた。

【際立つ周りの選手と連係する力】

 そのウルコに最もパスコースを与えていたのが、久保である。

 久保は右サイドで常に顔を出し、ウルコからのパスを受けていた。2点目のシーンも、中盤でウルコがターンした瞬間、久保はサイドから中盤インサイドに入ってボールを受けている。首を何度か振りながら、中央に入ったミケル・オヤルサバルにパス。ボールがこぼれたところを回収し、シェラルド・ベッカーの得点をアシストした。

 これは象徴的な場面だったが、久保とウルコは頻繁にパス交換していた。後半もウルコがセカンドボールを拾った後、すぐに久保につけている。お互いが生かし合う関係性を作っていた。

「タケは周りの選手と連係する力が際立って高い」

 それが現地での久保評の総括だが、まさに真骨頂だったと言える。ウルコはポテンシャルの高いプレーヤーだが、そのよさを引き出した点は特筆に値するだろう。

「タケがどんなFWとコンビが合うか? うーん、お世辞ではなく、誰とでも組めると思うよ」

 昨年10月、イマノル・アギレチェは、そう分析していた。「過去20年のスビエタで最高のセンターフォワード」と言われ、2012-13シーズンには14得点をあげてラ・レアルをチャンピオンズリーグ出場に導いたレジェンドの言葉は説得力があった。

「何でもできる選手で、連係力が人一倍高い。もし自分がタケとプレーすることがあったら、なるべく近い距離を取ろうとするだろうね。たとえば必ず壁パスは意識する。自分がスペースを作って、そこを使わせるようにして、その逆もあるだろう。それに、タケはサイドにいるとしても心強い。たとえどんなにマークされても、しっかり準備していれば、『ラストパスやクロスが入ってくる』と信じられる。その信頼をチームメイトに与えられているのは大きい」

〈チームメイトに信頼を与えられる〉

 それは、久保に対する最高の称賛と言える。

 キーウ戦でのウルコとの関係性はその裏付けになっていた。トッププレーヤーは周りを生かし、生かされると言われる。その点、久保は右サイドバックのホン・アランブルのポテンシャルも引き出しているし、ブライス・メンデスとのコンビはすでに"お馴染み"だ。

 ベッカーの得点のシーンも、彼が簡単なシュートよりも難しいシュートを決めるところがあるのを見抜いたラストパスにも見えた。

 EL第7節は、1月23日と年をまたぐ。ラ・レアルは首位に立つイタリアのラツィオと敵地で対戦する(最終節はホームでギリシャのPAOKと対戦)。今シーズンを占う一戦になりそうだ。