パントージャのスキルの違いを見せつけられた朝倉。(C)Getty Images決め手は寝技ではなく「関節蹴り」 血気盛んな日本人チャレンジャーを圧倒したUFC王者の言葉は重い。 現地時間12月7日に米ネバダ州ラスベガスで行われた世界最高峰の…
パントージャのスキルの違いを見せつけられた朝倉。(C)Getty Images
決め手は寝技ではなく「関節蹴り」
血気盛んな日本人チャレンジャーを圧倒したUFC王者の言葉は重い。
現地時間12月7日に米ネバダ州ラスベガスで行われた世界最高峰の総合格闘技団体『UFC』のイベント「UFC310」で、UFCフライ級王者のアレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)は、デビュー戦での世界戦に挑んだ朝倉海(JAPAN TOP TEAM)を2回で一本勝ち。一撃に秀でた日本人ファイターを退け、王座防衛を果たした。
【動画】朝倉海がまさかの一本負け UFC王者パントージャの絞め落としシーン
文字通り完勝だった。序盤から磨き上げてきた打撃を繰り出した朝倉は、膝蹴りやカウンターで突破口を模索。しかし、一連の攻撃にパントージャは危なげなく対応。1回には一瞬の隙を突いてテイクダウンを成功させるなど、元RIZIN王者を守勢に回していく。
そして、2回に勝負を決める。パンチの攻防からスタンディングで朝倉の背中に飛びついたパントージャはバックを取るやいなや、ギュッと足を固めて締め上げる。そして、あっという間に朝倉をマット上に倒すと、ボディーを足四の字でロック。
身動きが取れず、完全に防戦一方となった朝倉が懸命にディフェンスするが、パントージャは一枚も二枚も上手だった。背後から右手を首へと絡ませると、一気にリアネイキッドチョークで締め上げ、挑戦者を失神させた。
試合後に「これがUFCだ」と豪語したパントージャ。世界の壁を示したUFC王者は、何が勝敗を左右したと見ているのか。元スポーツ専門局『ESPN』記者のアリエル・ヘルワニ記者がホストを務めるポッドキャスト番組『The Ariel Helwani Show』に出演した際に、次のように朝倉戦を回想している。
「彼の膝に繰り出した関節蹴りが決め手だったと思う」
グラウンドでの攻防でもなく、寝技のスキルでもなく、打撃が勝負の分かれ目になったというのはやや意外だ。実際にパントージャが指摘した初回のシーンを振り返ると、朝倉が被弾した関節蹴りは左膝にポンッと当たるような形であり、素人目には重大なダメージがあったようには見えない。
パントージャへのリベンジを果たすためにも、朝倉には今以上の進化が求められる。(C)Getty Images
「堀口に勝った男」の朝倉評は?
そんな蹴りの重要性を「出した瞬間に気付いた」というパントージャは、こう続けている。
「あの蹴りがアサクラを壊す決め手になったと思うね。他の選手たちもあれを見て、気づいたと思うから彼に対しては全員が使ってくると思う」
試合に向け、「(UFCのやつらは)打撃が得意な日本人を使ってきて、俺を罠にはめようとしてるなと思った」と漏らした34歳。自身が苦手としてきたストライカータイプとのマッチアップに燃えたベテラン王者は、朝倉の今後についてもシビアな評価を展開している。
「アサクラがここからタイトル争いに絡めるか? うーん……、現時点では無理だと思う。俺が倒し方を見せてしまったからね。(UFCの)フライ級のランカーたちは俺と同じことをしてくると思うし、そうやったら勝てると思う」
朝倉が露呈した課題に関しては、UFCの軽量階級の戦いを熟知する元王者からも意見が飛んでいる。元UFCフライ級王者で、堀口恭司にも勝っているデメトリアス・ジョンソン(米国)は、自身のYouTubeチャンネル内で「柔術こそが王様なんだ。彼(朝倉)のようなストライカータイプはグラウンドに倒されてしまったら終了だ」と指摘している。
「技術的に未熟なストライカーはいつもこれをするんだよ。アサクラも毎回これをする。癖みたいなものがあるな。クリンチ、レスリング、他にも色々できるのに、毎回、プッシュ、プッシュ、プッシュだけ。俺だったら逃げずに、逆にクリンチする。内側を取ってボディーに膝を当てたら、絶対にタックルが来るからその時は切って、頭を落とす。そしたら立って殴ればいい」
元王者から「未熟」と断じられてしまった朝倉。31歳の元RIZIN王者はここから同スキルアップを図っていくのか。兄・未来とともにストリートからのし上がってきた名手の真価が問われている。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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