WRC最終戦ラリージャパンの審査委員会は、イベント後に行われた車検でヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドの9号車(ドライバー:アンドレアス・ミケルセン)と11号車(ドライバー:ティエリー・ヌービル)のリヤディファレンシャルケースが、ホモロゲ…
WRC最終戦ラリージャパンの審査委員会は、イベント後に行われた車検でヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドの9号車(ドライバー:アンドレアス・ミケルセン)と11号車(ドライバー:ティエリー・ヌービル)のリヤディファレンシャルケースが、ホモロゲーション書類Ra1-22/02と合致しないとして、ヒョンデ・シェル・モビス・ワールドラリーチームに2万5000ユーロ(約400万円)の罰金を科す裁定を下した。さらにチームには、2025年WRC最初のイベントのイベント前車検までに当該ホモロゲーション書類を修正すること、2025年WRCのいずれのイベントでも同様の公認勝利のミスを起こさないことを条件としてさらに2万5000ユーロの罰金に執行猶予が与えられている。
イベントの後車検は、11月24日にラリーがフィニッシュした後に11号車に対して行われ、その時点でリヤデファレンシャルのケースが公認書類Ra1-22/02/40/09ERJ (ジョーカー1C 2024).の写真F5-2と異なっていたという。このため、技術代表は審査委員会に対し、9号車の同じパーツを検査することを求め、審査委員会はこれに合意した。9号車のリヤデファレンシャルケースも、公認書類との差異が認められた。
このため、技術代表は審査委員に対し、イベント後にスイスのバレリーにあるFIAの敷地内で、9号車、11号車用に登録されているすべてのリヤディファレンシャルをさらに検査。さらに、2024年FIA国際競技規則付則Jの第262.605条の規定に従い、これらの部品をFIAに預託されたトランスミッション一式と比較を行うことを要望。これらのパーツは、チームによって現地に輸送された。11月28日に、チーム代表としてマス・コンデットとジョセリン・リトラが立会いのもと、FIA技術派委員により、FIA預託された箱が開封された。RCラリージャパンにノミネートされた部品のシールは、無傷であることが確認された。
その後、12月5日、FIAの技術代表、チーム代表者のダミアン・ゴンチャロフスキ、ボリス・トドルフの立会いのもと、さらなるチェックが行われた。11号車と9号車のリヤデファレンシャルケースの検査後、FIA技術代表は次のように述べた。
1.FIAに提出されたCADデータ(オリジナルの公認とジョーカーの公認)は適性だった。
2.ヒョンデ・ラリー1ハイブリッドのオリジナルの公認取得のために2022年に寄託された本体は適性だった。
3.40/09ERJ(ジョーカー1C 2024)の公認のために2024年に提出された本体は(外観上)正しくなかった。
4.公認書類Ra1-22/02および40/09ERJ(Joker 1C 2024)の写真F5-2が正しくなかった。
5.WRCラリージャパンの後にチェックした部品は、2022年に提出されたリヤデフのCADデータおよび外装部品と一致していた。
審査委員会は、11号車と9号車のチーム代表者を召喚。12月10日に聴聞会が行われ、全審査委員がビデオ会議で参加。FIA WRCスチュワード・セクレタリーのイボンヌ・ジリほかFIA関係者も出席した。チーム側からは、ヒョンデ・モータースポーツ社長兼チーム代表のシリル・アビテブール、チームマネージャーのトルガ・オザキンチ、テクニカルディレクターのフランソワ-クサビエ・ドゥメゾン、WRCプログラムマネージャーのクリスチャン・ロリオーが出席した。
聴聞会でロリオーは、公認書類の写真は、2021年に作られたプロトタイプ・ケースのもので、彼らのミスにより公認書類に添付された写真の訂正を求めるのを失念していたと説明。アビテブール氏は自らの過失を謝罪し、ヒョンデではこのようなミスを避けるために社内プロセスを改善する必要があると述べた。また、CADファイルは自社の車両に装着されている部品と一致しており、これを考慮することで、彼らが誠実に行動したことを強調すべきだと付け加えた。
しかし審査委員長は、それでもこの種のミスは2024年FIA国際競技規則第10.3.3条に規定されている「車両はそれぞれの公認書類にホモロゲーション・ドキュメントに従わなければならない」に対して重大な違反であると強調。
審議の結果、審査委員会は、車両に装着された部品が公認書類に適合していることを確認するのは競技者の責任であり、その逆もまた然りであると結論づけた。しかし、競技者がリヤデファレンシャルケースの外部パーツを変更したい場合は、2024年ラリー1カテゴリーの公認規則第5条により、変更が許可されていることを考慮しなければならない。
従って、この一件は公認書類を適切に更新しなかった管理・事務上のミスの結果であり、公聴会でアビテブールが述べたように、ヒョンデの社内プロセスにおける管理不足が原因であったと思われる。
過去の判例によれば、この種の違反に対する罰則は失格であった。しかし国際控訴裁判所はすでに「例外的な状況 」であれば、車両が違反した場合の競技者の客観的な責任は、失格よりも軽い制裁につながる可能性があると判断している。
法理論によれば、公認書類の事務的なミスや間違いは「例外的な状況」に該当する可能性がある。それでも、チームは上記の規則に違反していることから、課された罰金はこの場合において適切な罰則であると結論づけた。
さらに、ヒョンデの社内プロセスの継続的な改善を奨励し、2025年FIA世界ラリー選手権の最初の大会までに公認書類を修正させるため、ペナルティの執行停止とともに追加の罰金を科した。
すべての関係者は、2024年FIA国際競技規則第15条およびFIA司法・懲戒規則第4章に従い、審査委員会の決定に対して不服を申し立てる権利を有しており、この公示が発行されてから24時間以内に抗議の意思を表明することが求められる。