【3連覇達成はうれしいが...】 日本勢が大会史上初の表彰台独占を果たしたフィギュアスケートのジュニアGPファイナル・女子シングル。そして、史上初の3連覇を達成した島田麻央(16歳/木下アカデミー)は、「自分の演技は3大会でよかったり悪かっ…
【3連覇達成はうれしいが...】
日本勢が大会史上初の表彰台独占を果たしたフィギュアスケートのジュニアGPファイナル・女子シングル。そして、史上初の3連覇を達成した島田麻央(16歳/木下アカデミー)は、「自分の演技は3大会でよかったり悪かったりしましたが、それでも3連覇を達成できたのはすごくうれしい」と話した。
フランスで開催されたジュニアGPファイナルを制した島田麻央 photo by Kyodo News
しかし、今大会は心の中では悔しさが残る優勝だった。以前のルールならすでにシニアに戦いの場を移していたはずだが、2022年北京五輪後、主要国際大会に出場できる年齢制限を15歳から17歳に引き上げるルール改正があった。島田は、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の翌シーズンまでジュニアで戦うことになった。
ノービス時代に初めて成功させた4回転トーループとトリプルアクセルを武器に、ジュニア移行の2022−2023シーズンからジュニアの大会で負けなしの強さを見せている。今季もジュニアGPシリーズ初戦を204.86点で制し、第2戦は自己最高得点の224.68点で優勝。出足はよかった。
ジュニアのフリーは、シニアとは違ってステップシークエンスがない要素1減の構成。それにもかかわらず、島田の224.68点は、11月のNHK杯で坂本花織が231.88点を出すまでシニアを含めた女子シングルの今季最高得点だった。
NHK杯翌週の全日本ジュニア選手権では大会4連覇を果たしながらも、フリーでは4回転トーループの転倒だけでなく、これまでミスがなかった3回転+3回転の連続ジャンプなどでも複数の回転不足が出てしまい、合計は201.32点と伸びなかった。
【演技後に見せた硬い表情】
それでも、ジュニアGPファイナルでは再び、明るい笑顔を見せる演技をした。12月5日のショートプログラム(SP)では、最初の選手からノーミスの滑りが続く中、強さを見せつけた。
「ミスのことを考えないようにし、自分に自信を持つことにした」と言うように、最初から落ち着いて滑り出すと、後半の得点源である3回転ルッツ+3回転トーループも余裕を持って決めた。
そして、「いい緊張に変えられて楽しむことができた」と、ステップシークエンスはこれまでにないような明るい表情が自然ににじむような滑りで、最後の2本のスピンもスピードが衰えない。SPの自己最高得点に0.06点差まで迫る73.72点を出し、2位に6点近く差をつける圧巻の演技を見せた。
「笑顔で終われる大会にしたい」と臨んだ翌日のフリー。少し硬さもある滑り出しの中、最初のトリプルアクセルは体の軸がやや斜めになってステップアウトになると、次の4回転トーループもダウングレードを判定されるジャンプになって転倒した。
それでも、全日本ジュニアではミスをしていた3回転ルッツ+3回転トーループと、次の3回転サルコウ+3回転トーループは着実に決め、いつもの島田を取り戻したように見えた。
しかし、その後のコンビネーションスピンとコレオシークエンスには少し勢いがなかった。全日本ジュニアでわずかにミスをしていた後半の3回転フリップ+ダブルアクセル+ダブルアクセルはしっかり決めて大きな得点源にしたが、3回転ループは転倒というまさかのミス。スピードが若干落ちた中でも、最後の2本のスピンはレベル4にしてGOE(出来ばえ点)加点を稼いだが、演技を終えた後は硬い表情だった。
【全日本選手権は強気で挑む】
結局、フリーの得点は125.74点。合計は199.46点。国際スケート連盟公認のジュニア大会では初めて200点に届かない得点での優勝に笑顔はなかった。
「もう少しいい結果を出せると思っていましたが、どれだけ一生懸命に練習をしてきたかというのを見せられなかった気がします。昨年のGPファイナルは、一つ前の試合でミスしたところを引きずってしまいましたが、今回はミスしてしまっていたジャンプを引きずらずに決められたことが、成長できたところではないかなと思います。
でも、感情をコントロールするのが難しかった。もちろん、ジャンプや表現力、技術力も課題だけど、今大きな課題にしているところは、本番でしっかりと練習どおりの演技ができるメンタル面。そこをもっと強くしていけたらいいなと思います」
島田が次に向かうのは、シニアとの戦いになる全日本選手権(12月19〜22日)だ。その大会へ向けて島田は力強くこう話した。
「全日本という舞台は挑戦者として挑むので、まずはショートでトリプルアクセルに絶対に挑戦したいと思っている。フリーもジュニアのプログラムと同様にトリプルアクセルと4回転トーループを入れる構成には挑戦し続けたいです。挑戦してしっかり決めきることが目標です」
SP、フリーともにノーミスの演技ができれば、世界選手権3連覇中の坂本花織とも優勝争いを繰り広げることができる。ジュニアGPファイナルで優勝したとはいえ悔しさを味わった島田にとって、全日本選手権で納得できる戦いをすることこそが、年明けの世界ジュニア選手権3連覇へ大きな原動力になるはずだ。