蹴球放浪家・後藤健生は、世界中のサッカーを巡るために、駅や空港、スタジアムなど、各国の施設を利用する。その際に避けては…

 蹴球放浪家・後藤健生は、世界中のサッカーを巡るために、駅や空港、スタジアムなど、各国の施設を利用する。その際に避けては通れないのが、手荷物検査だ。国や場所、実施する人によっても違う検査から、サッカーのリスク管理にもつながる、各国の「お国柄」を読み解く!

■イタズラ心で「反北本」を持ち込み

 どう考えても、厳しい手荷物検査があると思っていたら、ノーチェックだったのでビックリしたのが北朝鮮でした。

 1985年の4月にワールドカップ・アジア1次予選の北朝鮮対日本の試合を観戦に、代表チームに同行したときのことです。

 僕は、イタズラ心を起こして、持ち込みの手荷物の中に『凍土の共和国』(金元祚、亜紀書房)という、当時有名だった「反北朝鮮」の本を入れておきました。北朝鮮に帰国した在日朝鮮人の悲惨な状況を告発した本です。

 これを見つけたら、彼らがどんな反応するだろう……。と思っていたのですが、結局、荷物検査などまったくありませんでした。

 このときの北朝鮮は、どういうわけか我々に対して非常に融和的でした。写真撮影も自由でしたし、平壌(ピョンヤン)の街中を単独で自由に歩くことさえできました。

 韓国では、ソウルの南山(ナムサン)に立っているソウル・タワーに上るときにも、カメラを取り上げられるそんな時代だったので、平壌で自由行動ができたのは驚きでした(「蹴球放浪記」第5回「本場ピョンヤンで犬を喰らう」の巻など参照)。

■Kリーグ強豪の取材で「車体」まで捜索

 逆に、「えっ、こんなところで!?」と思うほど厳重な手荷物検査を受けたのは、韓国の水原山星(スウォン・サムソン)ブルーウィングスのトレーニングの取材に行ったときのことでした。

 水原三星は1995年に創設されたクラブで、企業丸抱えが多かった韓国Kリーグの中でいち早く経営を近代化。クラブハウスなども韓国で最も早くから整備され、多くのサポーターを抱える韓国を代表するクラブでした(2023年にはKリーグで最下位となって、今年はなんとK2リーグで戦っています)。

 その水原三星の取材に行ったのですが、正門で乗っていたタクシーが止められました。「手荷物検査」という生易しい検査ではありませんでした。タクシーの荷台から車体の下部までくまなく捜索されてしまったのです。映画の一シーンのようでした。

 もちろん、これはトレーニングの秘密を守るためではありません。実はトレーニング施設は親会社である三星電子の敷地内にありました。世界の半導体市場に打って出ようとしていた当時の韓国。その最先端企業だった三星電子の企業秘密を、産業スパイから守るためだったの検査だったのです。

 韓国のクラブは、取材に対して非常に鷹揚で、金浩(キム・ホ)監督も温かくも変えてくれたのですが……。グラウンド上でトレーニングを指揮していたのは、現在、山東泰山足球倶楽部の監督をしている崔康熙(チェ・ガンヒ)でした。

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