レーシングドライバーにとって、人生を変えるレースというものが時折ある。 今週末のアブダビGPは、何人かのドライバーにとって、そんなレースになるかもしれない。 岩佐歩夢が第4戦日本GPに続いて2度目のFP1に出走するだけでなく、平川亮がマク…
レーシングドライバーにとって、人生を変えるレースというものが時折ある。
今週末のアブダビGPは、何人かのドライバーにとって、そんなレースになるかもしれない。
岩佐歩夢が第4戦日本GPに続いて2度目のFP1に出走するだけでなく、平川亮がマクラーレンでFP1デビューを飾る。さらには、レース2日後のルーキーテストでは岩佐が引き続きRBのマシンを、そして平川はトヨタ・ガズーレーシングが技術提携を結んだハースで1日フルにテスト走行を行なう。
これまでマクラーレンのリザーブドライバーとして2021年型および2022年型の旧型車でプライベートテストを重ねてきた平川だが、ニック・デ・フリースやパトリシオ・オワードらと比べても遜色ないどころか彼らを上回る速さを見せ、F1で最も難しいとされるタイヤマネジメントのノウハウも着実に積み重ねて、関係者から高い評価を得ている。
角田裕毅への注目度は最終戦でピークに達している
photo by BOOZY
平川はテストを重ねるごとに「走りたい」「レースがしたい」とF1への意欲を強くしてきていた。
「フリー走行、予選、決勝というレース週末を想定した走り方であったりだとか、ショートラン、ロングラン、いかに短期間でタイムを上げていくかといったこともやっています。コーナーの種類やタイヤの状況によって、要求されるドライビングのバラエティがものすごく幅広いんです。そこがかなり習得できてきているかなと感じています。
去年初めてバルセロナで(2021年型マシンに)乗った時はけっこう衝撃的だったんですけど、今年に入ってからのテストではいい走りができていて、チームからもいい評価をもらえていると感じています」
その平川が自身初のF1公式セッションで、どのような走りを見せるのか。そして初体験の2024年型マシン、それも5勝も挙げている最速マシンのひとつをどのようにドライブするのか。
岩佐もシーズン中はスーパーフォーミュラ参戦と並行して、レッドブルのファクトリーでシミュレーター作業に明け暮れ、レース週末も裏側からチームを支えて高い評価を得てきた。FP1出走も2度目なら、最新型マシンでのテストも昨年に続き2回目だが、実走とシミュレーターの誤差確認のみならず、フィードバック能力などさまざまな点でチームからの評価をさらに高めるチャンスを得ることになる。
【伝統的にRBと相性のいいサーキット】
そして、最も大きなチャンスに直面しているのが、角田裕毅(RB)だ。
すでに週明けのテストでは、レッドブルのRB20を1日ドライブすることが決まっている。2025年タイヤテストだと言いながらも、角田自身が初めてレッドブルのマシンをドライブするのだから、そこでの走りいかんによってはいかなる結果も有り得る。いや、いかなる結論も覆すような走りを見せるべきだ。
もちろん、RBで走る最終戦アブダビGPの内容と結果も重要な要素になってくる。
レッドブル昇格を巡るさまざまな噂や憶測と、それにかこつけた質問の数々に辟易(へきえき)としながらも、角田は同じ答えを繰り返した。
「すべてのレースが重要だと思いますし、レースについてもテストについても自分のパフォーマンスに集中しています。テストはテストでしかないですけど、もちろん彼らが求めるレベルのパフォーマンスを見せられるように努力したいと思います。
最終的に決めるのは彼らですし、それ以外のいろんな要素も関係してくるとは思いますけど、僕はやれるだけやって、どうなるか見てみるしかないですね」
そう言いきれるのは、今シーズンを通してチームメイトを打ち負かしてきたという自負があるからだ。自分自身の成長も感じている。
先週のカタールGPでは、あまりにマシン特性と合わないサーキットに大きな苦戦を強いられてしまった。だが、最終戦アブダビGPの舞台ヤスマリーナ・サーキットはRBにとって、相性のいいサーキットだ。
「伝統的にうちのマシンはこのサーキットに合っていますし、去年もかなりいいレースができました。逆にカタールは伝統的に最も苦しんできたサーキットだったので、アブダビでは伝統どおりになってもおかしくないと思います」
角田自身もチームメイトに負けたことはなく、得意としているサーキットだ。ハードブレーキングが何度も出てくるだけに、自分の強みが存分に活かされているのではないかと角田は語る。
「ブレーキングですかね。ストレートエンドだったり、最終セクターだったり、ブレーキングを必要とするコーナーが多いので。それは僕だけじゃないとは思いますけど、それ以外にもなんかあるんですかね(笑)」
【角田、岩佐、平川...それぞれの戦い】
カタールでの苦戦によって、コンストラクターズランキング6位争いはかなり厳しい状況に追い込まれた。
6位アルピーヌが59点、7位ハースが54点、8位RBは46点。6位どころか、7位にひとつ上がるだけでも8点が必要な状況だ。
かなり苦しい状況ではあるが、最後まであきらめずに戦い抜きたいと角田は語る。
「ランキング争いはちょっとややこしくなってしまいましたけど、まだ終わっていませんし、何が起こるかわからないので最後まであきらめません。ここはいい思い出も多いですし、やれるだけのことはやりたい。
最大限にがんばってポイントを獲って、いいレースでシーズンを終えられるようにしたいなと思います。最終戦なんで、思いっきり走って、楽しく走って、ポイントを獲って、気持ちよくシーズンを締めくくりたいなと思っています」
角田、岩佐、平川が、それぞれのレース週末を戦う。
誰の人生がどう変わるのか。人生を変えるレースに出会えることを願いたい。