「ジャパンウイメンズオープン」(WTAインターナショナル/東京・有明テニスの森公園テニスコート/本戦9月11~17日/賞金総額25万ドル/ハードコート)は9月17日、シングルス決勝が行われ、加藤未唯(佐川印刷)はザリナ・ディアス(カザフスタ…

「ジャパンウイメンズオープン」(WTAインターナショナル/東京・有明テニスの森公園テニスコート/本戦9月11~17日/賞金総額25万ドル/ハードコート)は9月17日、シングルス決勝が行われ、加藤未唯(佐川印刷)はザリナ・ディアス(カザフスタン)に2-6 5-7で敗れ、自身初のシングルスでのWTAツアー優勝はならなかった。◇   ◇   ◇

 ツアー大会初のベスト8入りでとどまることなく、一気に決勝まで駆け上がったが、予選からの連戦の疲労、さらには前日の準決勝で深夜におよんだ激闘の痛手が残っていないわけはない。

「朝起きたときには『最悪』と思ったくらい。これを言ったら負け惜しみに聞こえてしまうけれど、実際に試合では脚に(疲労が)きていて、それもあって前に行けなかったり、ストロークのタメをうまく作れないところがあった」

 体力的に厳しい試合だったことを認めながら、それでも「それも全部含めての決勝。初めての決勝で緊張することなく、普段通りに試合に入れたし、悔いなく戦えたと思う。今の力は全部出せた」と、加藤はすがすがしい表情で敗戦を振り返った。

 決勝を争った23歳のディアスは、昨年9月に左手首の手術を受け、復帰したのは約半年後の今年2月。現在の世界ランクは100位だが、2年前の2015年には自己最高31位をマークするなど実績のある選手だ。手術した左手は「もう違和感もなく、完治している」と話し、すでにウィンブルドンでも3回戦進出を果たしていることからも分かるように、加藤との決勝でもトップフォームに近いプレーを見せた。

 試合を通して、ディアスはコート内側から高い打点でボールをとらえ、ベースライン深くに強打をねじ込み、加藤を劣勢に回らせた。

 ディアスにとってもツアー初優勝がかかった決勝で、並々ならぬ意欲を持って臨んでいたのは、そのプレーからも十分に感じられた。

 観客が加藤を応援する完全なアウェーな状況でも、声を上げて自らを鼓舞し、集中を切らすことなく、勝利をもぎとりにいったその姿勢は、タイトルへかける意気込み、そして復帰から再浮上を目指す強い意志の証でもあっただろう。

 そのディアスに対し、加藤も第2セットでは先にブレークされながらも、すぐさまブレークバック。緊迫した展開の中で、ドロップショットと見せかけて、ディアスの体勢を崩しながらコート奥にコントロールショットを柔らかく決め、自在なラケットワークで観客を大いに沸かせた。

 決勝に向けて「観客の皆さんにはドロップショットやスライスなど"引き出し"の多いところを見ていただけたら」と語っていたが、その魅力を十分に発揮し、自身のプレーが十分にツアーレベルで通用することを示したといっていいだろう。

 また、この大会での快進撃の間、加藤が言い続けてきたのは、「気持ちがぶれずにプレーすること」。全米オープンでは予選決勝で敗れ、感情を抑えきれずに放ったボールが電光掲示板を壊してしまった行為が話題となったが、これに家族や関係者から非難も受けたと明かす。

「全米では気持ちがまったくダメだった。十分に反省して、切り替えて臨んだ大会で、気持ちがぶれなければ、プレーもぶれないと感じることができた。今週できたからといって次もできるというわけではないから、次の大会が勝負。気合を入れ直して、また頑張りたい」

「新しい自分を見せなきゃいけない」と心に決めた大会で、自身の決意を結果につなげ、確かな手応えを得た。

「今週みたいなプレーができれば結果はついてくる」

"新しい"加藤が行く先には、どんな景色が待っているのか。はにかみながら見せた明るい笑顔が、近い未来のさらなる躍進を感じさせた。(テニスマガジン/ ライター◎田辺由紀子)

※写真は「ジャパンウイメンズオープン」(東京・有明テニスの森)のシングルス決勝で対戦したザリナ・ディアス(左)と加藤未唯(右)

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