■中島のPKで仙台が先行 今シーズンのベストマッチと言っていいだろう。 J1昇格の最後のイスを争う「J1昇格プレーオフ準決勝」が、12月1日に行なわれた。6位のベガルタ仙台は、3位のV・ファーレン長崎のホームへ乗り込んだ。 序盤から冷静に、…

■中島のPKで仙台が先行

 今シーズンのベストマッチと言っていいだろう。

 J1昇格の最後のイスを争う「J1昇格プレーオフ準決勝」が、12月1日に行なわれた。6位のベガルタ仙台は、3位のV・ファーレン長崎のホームへ乗り込んだ。

 序盤から冷静に、かつ厳しく試合を運んだ。2人のCBにMF秋野央樹を加えた3人で、あるいは2人のCBとGKの3人でビルドアップをしてくる長崎に対して、仙台は2トップのエロン中島元彦にサイドMFの郷家友太相良竜之介が連動し、前線から規制をかけていく。相手の両ウイングにボールが入ると、SBの真瀬拓海奥山政幸がすばやくアプローチする。

 コンパクトでソリッドなディフェンスで長崎に好機を許さず、28分に相良のシュートが相手CBのハンドを誘う。PKだ。

 重要な一撃を託されたのは、チーム最多の13得点を決めている中島だ。31分、背番号7はゴール中央へ迷わず蹴り込み、仙台が先制に成功する。

 長崎に決定機を許さなかった仙台だが、アディショナルタイムにゴールへ迫られる。秋野の縦パスからFW笠柳翼、MFマテウス・ジェズスとつながれ、FWエジガル・ジュニオにペナルティエリア内で左足を振られる。左ポストをかすめるような一撃が、ゴールを際どく逸れていく。

 ここで同点に追いつかれていたら、試合の展開は変わっていただろう。エジガル・ジュニオのほんのわずかな感触のズレに、仙台は助けられたと言える。

■リーグ戦で一度もなかった大量4ゴールを奪取!!

 仙台が決勝へ進出する条件は、勝利のみだ。同点に追いつかれた場合、シーズンの順位が上の長崎が決勝へ進出する。次の1点が、大きな意味を持つ。

 53分、試合が動く。長崎陣内の右サイド深くで、郷家がゴールラインぎりぎりでボールを残す。サポートしていた真瀬がグラウンダーのクロスを入れると、エロンがニアサイドの狭いコースを右足で射抜く。仙台が貴重な2点目をゲットした。

 長崎はリーグ最多の74ゴールを記録しており、右ウイングのマルコス・ギリェルメ、トップ下のマテウス・ジェズス、CFのエジガル・ジュニオが連携しながら、彼らがそれぞれに「個」の力を炸裂させてきた。仙台は3人のブラジル人にボールを供給させないことを徹底し、長崎の攻撃力を削いでいく。そして64分、中島の縦パスを起点に相手守備陣を崩し、郷家が至近距離から豪快に決めてリードを3点に広げる。

 76分に失点した仙台だが、アディショナルタイムに中島がこの日2点目を蹴り込む。誰も予想できなかった4対1というスコアで、リーグ戦で一度も記録できなかった4ゴールを奪って、仙台は敵地で長崎を退けたのだった。

 先制、中押し、ダメ押しと効果的に追加点を奪い、守備では相手のストロングポイントをほぼ完ぺきに封じた。仙台にとっては今シーズンのベストゲームと言っていいだろう。

 この試合のMVPを選ぶなら、中島で決まりだ。2トップの一角を基本ポジションとし、ボールの落ち着きどころになりながら相手守備陣に脅威を与え続けた。エロンが決めた2点目も、敵陣左サイドで彼がボールをキープしたところから始まっている。全得点に関わった中島の存在なしに、仙台の勝利はなかっただろう。

 22年のJ2降格後は7位、16位と不本意な成績に終わっていた仙台が、就任1年目の森山佳郎監督とともにJ1復帰へあと1勝まで到達した。リーグ戦6位の仙台は、7日の決勝もアウェイゲームとなる。対戦相手はファジアーノ岡山だ。こちらも4位のモンテディオ山形を3対0で退けてきた。

 下剋上を完結させるのは、仙台か、岡山か。リーグ戦で岡山に連敗した仙台にとっては、リベンジを果たす最高の舞台が整ったことになる。

 あとは、やるだけだ。

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