達成確率5%。これは、ベガルタ仙台・森山佳郎監督がはじきだしていた、J1昇格プレーオフ準決勝でのV・ファーレン長崎戦で…

 達成確率5%。これは、ベガルタ仙台・森山佳郎監督がはじきだしていた、J1昇格プレーオフ準決勝でのV・ファーレン長崎戦での2点差以上をつけての勝利の確率である。

 実際のスコアは4-1。それ以上の結果をチームはつかみ取った要因について指揮官自身に尋ねれば、選手の気持ちの強さを一つ挙げていた。これについては、この試合でゲームキャプテンを務め、そして、試合を決定づけた3点目を決めた郷家友太も「引力があるっていうのは森山監督も言ってますし、本当に思いが強い方にああやってこぼれ球やセカンドボール、スペースに流れたボールは転んでいくんだなって今日強く思いました」と実感を込めながら口にしていた。
 そして指揮官がもう一つ挙げたキーワードが、「中断明け」だった。仙台は今季、通常のリーグ戦においてもその中断期間をうまく生かして勝利につなげてきた。
 森山監督は「中断明けは、エスパルスさんに勝たせてもらったり、いわきさんに勝たせてもらったり、横浜FCさんにも3-0で勝ったりして、やっぱりここぞっていうときに集中力がかなり良いレベルに持ってきて、かなりいい試合をできた」と振り返る。
 試合がない期間を利用してチームとして高い集中力を見せて、それをうまくぶつけることができる前例を自信にしていた。

■「おそらくサッカー関係者の9割ぐらいは…」

 郷家も、中断明けの強さを実感していた一人。「中断明けの僕らが強いことは今までのデータもそうですし、分かってたので、必然と言えば必然だし、こうやってパワーをうまく貯めて長崎を仕留められた」と誇る。
 だからこそ、「おそらくサッカー関係者の9割ぐらいは長崎がふつうに勝つでしょって思っている中で、反骨精神を持って食らいついて、噛みついていくぞっていうところにうまく乗っかってくれていいゲームをできた」(森山監督)という言葉も出てくるのである。
 とはいえ、そうなると不安になるのは次の決勝・ファジアーノ岡山戦。というのも、仙台は2日に帰仙して、再び大移動をしての7日の岡山での試合に挑まなければいけないからだ。
 しかし、それを郷家が否定する。「次は1週間で試合で、リーグ戦だとちょっと気持ち的にも落ちたりとかもあったかもしんないんですけど、一発勝負っていうところもみんなもすごく気合入っている。リーグ戦のようないい試合をしたあとの悪い試合っていうのはないと思う」と力強く言い切るのだ。

サポーターへの意思表示

 また、サポーターの存在も背中を押す。森山監督が「(サポーターの)思いを俺らは受けとめようぜっていう話は試合前からしてた」と話せば、郷家は「選手だけが戦ってるわけじゃないし、僕たちが出発する前にユアスタの前でいろいろやってくれたことは知ってたので、その人たちの期待にも応えたいっていう思い」があったと話すのだ。
 その“証拠”が、郷家の得点後に気持ちを表した「先」である。郷家はゴールを決めると、黄金に輝くビジター観客席にガッツポーズを見せた。それは、「一緒に戦ってるっていう意思表示をしようと思ってて、それが自然に出た」からだという。
 次戦は12月7日で、舞台は岡山県岡山市である。今季のリーグ戦では2戦2敗と難敵を相手に勝利しなければならないが、指揮官は会見の最後にこう言い切っている。
「2回とも負けてるんで、これは借りを返さないと。本当に悔しいんで、もうここは絶対何とかして借りを返したい」と。
(取材・文/中地拓也)

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